人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2011年6月12日日曜日

IT時代の公立図書館の在り方

21世紀に突入して、学術上あるいは社会一般的な最新情報の大部分(大半あるいは多くの部分)が、雑誌、新聞、書籍などの印刷物という形ではなく、インターネット(IT)情報として収録されるようになって,公立図書館の在り方に大きな変化や抜本的な改革が必要になりつつある。私自身は欧米や豪州で医科学研究、特に新しい (従来の“単なる細胞毒”に代わるべき、副作用のない) 制がん剤の開発を目指す研究に40年近く従事したのち、研究所からリタイアして、(研究所や大学付属ではなく)自宅近辺にある公立図書館を利用しながら、いわゆる“生涯研究”を始めて2,3年が経過している。

学術研究に関して言えば、過去10年近く、研究所や大学の図書館に収められている科学や医学関係の雑誌や書籍は、ほとんど読む必要がなくなった。なぜなら、最新の情報は全て、インターネットで迅速かつ“しらみつぶし”に検索できるからである。言い換えれば、最先端の研究をしている者にとって、(印刷物しか保管されていない従来型の) 図書館はその存在価値をほとんど失いつつあった。科学技術の分野はすこぶる極端かもしれないが、文科系の分野でも、大なり小なりこのような傾向が誕生しつつあると、私は想像する。

IT時代の公立図書館には今後、一体何が最も必要だろうか? 私の個人的見解では、まずインターネットに収録されているあらゆる(できるだけ多くの)情報を自由自在に検索できるコンピューター(パソコン)の端末(ターミナル)と、それを検索できるインターネット接続を、(時間を区切って)無料、あるいは安価に(利用者全てに)開放することであると思う。

ここで、東京の実家近くにある大田区立の図書館と、(私が20年以上永住している)豪州メルボルンにある州立あるいは市立図書館の現状を、参考までに比較してみよう。豪州では、蔵書の書庫や閲覧室のほかに、コンピューター端末が10-20台並んでいる部屋がある。これらの端末で、(予約後、自分の順番がきたら)30-60分間無料で、インターネット検索が自由にできる。例えば、“PubMed” (米国NIH医学図書館発の医療文献データベース)を介して、過去20-30年にわたる医学や生物学関係の発表論文の内容がほとんど全部検索できる。

しかしながら、大田区立の図書館ではどこでも、豊かな新旧の一般蔵書や閲覧室はあるが、不幸にして、コンピューターを利用した、このような科学論文(あるいは文系の論文)の検索が全くできないのが現状である(ちなみに、最新の医学関係の海外雑誌の類などは一冊も、図書館内には見かけない!)。もちろん、都心にある日比谷図書館(最近、何と都立から千代田区立に移管!)で一体コンピューターによる海外論文の検索が可能なのかどうかは、私には知るよしもないが、赤坂にある国立国会図書館では、どうやらこの種のインターネット(少なくとも“PubMed”)検索が可能のようである。 最寄りの一般地域住民に対して、最新のインターネット情報を積極的に開放しようという姿勢(努力)が、少なくとも大田区立の図書館に欠けているのは、誠に残念至極である。

従って、自分でパソコンを購入し、少なくとも月額4000円近い使用料を払って、ドコモやソフトバンクなどとインターネット接続の契約をしなければ、このようなインターネット情報には浴せない。我々“貧乏人”(リタイアして、無収入の高齢者たち)にとっては、日本の現状ははなはだ厳しい! そういう意味で、(日本の都会と違って)欧米や豪州の都会はインテリの(学習欲のある)貧乏人たちにとっては、“極楽”であるといえよう。