人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2013年11月29日金曜日

我が家の「命の恩人」: ヨルゲン・レーマン博士

私が薬学者の道を選んだ理由は2、3あるが、その一つは幼い頃にある薬のお蔭で、
九死に一生を得たからである。

戦後まもなく、結核の特効薬「PAS」(パラ-アミノサリチル酸) がスウェーデンの
臨床医かつ有機化学者ヨルゲン・レーマン (1898-1989) によって開発された。
実は私自身ばかりではなく妹2人も、1951年の春に、(当時「死病」と呼ばれて
いた)小児肺結核にかかり、半年間ほど休学し自宅療養をしたが、アメリカ
駐留軍からの「PAS」のお蔭で、命拾いをした。苦い粉薬をオブラートに包んで
毎日飲まされた記憶がまだハッキリ残っている。PASは1944年末に開発
されてから、欧米では1948に市販され始めた(日本では1950年から市販
され、翌年から保険適用)。 もし、治験に(今日のごとく)10年以上もかかって
いたら、私も妹たちも、もう60年以上も前に、この世からおさらばしていたに
違いない! 従って、改めて、発見者レーマン博士の情熱に心から感謝したい。

 さて、「PAS」の (アミノ基の位置が違う) 異性体 、5ーアミノサリチル酸 (メサラミン)も
胃/大腸潰瘍の治療薬として、過去35年以上使用されてきたが、実は胃潰瘍の
大部分は「ピロリ菌」感染によって生じる炎症の一種であり、PAKが必須である。
しかも、メサラミンがPAK遮断剤であることも既に実証済み。 従って、メサラミンを
難病治療や健康長寿のために服用することも可能だが、センシンレンやプロポリスに
比べて、毎日の薬代が10倍以上する。。。

2013年11月23日土曜日

台湾開発の新しい「ETK」阻害剤:「CTA095」

Hsing-Jien Kung 博士 ( E-mail:hkung@nhri.org.tw) は、台湾の国立衛生研究所
の所長であると共に、米国カルフォルニア大学 (Davis)の医学部教授でもある。
専門は前立腺癌の研究であり、特に「ETK」と呼ばれるチロシンキナーゼの
世界的な権威である。 前述したが、「ETK」はPAKの活性化に必須である。 私が
まだ現役の時分 (もう10年ほど昔)、彼の研究室とETKに関して、共同研究した
ことがある。 さて、つい最近、彼の研究室で初めて「ETK」阻害剤を開発した。
「CTA095」と呼ばれる合成化合物である。この化合物は主に2種類のチロシン
キナーゼ、即ちETK(IC50=60 nM)と SRC(IC50=120 nM)を直接阻害
することが判明した。細胞培養系では、前立腺癌細胞 (例えば、PC3株) の増殖を
IC50= 3 micro M で阻害する。 従って、この物質は残念ながら (我々が開発した
ETK阻害剤「AG897」や「GLー2003」と違って)  細胞透過性がかなり悪い。 しかしながら、
細胞吸収および腸管吸収を増加するために、特殊なナノ顆粒によって包接すると、動物
(マウス) 実験で、週2回の静脈注射 ( 10 mg/kg) でも、 前立腺癌の増殖を50%以上
抑制することができる。 この物質は、最終的にはPAKを遮断するはずであるから、この
物質のナノ顆粒包接によって、遠い将来、種々のPAK依存性疾患(難病) を治療しうる
可能性がある。

2013年11月21日木曜日

英国のノーベル賞生化学者フレッド・ サンガー (1918-2013)

フレデリック・サンガー(英国の偉大な生化学者)が20日, ケンブリッジの病院で睡眠中、そのまま永眠についた。 95才の大往生だった! 

1940年にケンブリッジ大を卒業後、生化学者となる。1958年に血糖値を調節するインスリンの構造 (アミノ酸配列) 決定で、1980年には
DNAの構造 (塩基配列) 決定 法 (いわゆる「サンガー法」)の開発に関する研究で、ノーベル化学賞を2度も受けた。
"ゲノム時代の父" とも呼ばれている。

 サンガー博士は、我々「生化学者/分子生物学者」たちの「鏡」だった。進歩的な
クエーカー教徒で、第2次世界大戦では、自らの良心(平和主義)に従い、従軍
を拒否したそうである。

彼に関する詳しい伝記については:   http://en.wikipedia.org/wiki/Frederick_Sanger

2013年11月19日火曜日

桑の葉には、PAKを遮断する「オキシレスベラトロール」(R4)が豊富!

絹糸 (フィブロイン) の原料である繭をせっせと作る蚕の餌 (主食) である白桑
(Morus alba)の葉には、抗炎症作用があることが古来から知られており、
例えば喘息を治療する漢方薬としても使用されているそうだ。 さて、 ごく最近
になって、台北にある 台湾科学アカデミーの研究グループが桑の葉に含れる
抗炎症成分の同定に成功した。驚くなかれ、それはレスベラトロール (R3)
の誘導体だった。 オキシレスベラトロール (R4)と呼ばれ、ピシアタノルと同
様、4個の水酸基を持ち、抗炎症作用もR3より強い (両誘導体R4の違いは、
4番目の水酸基の位置にある)。 もちろん、PAKを遮断し、AMPKを活性化
することもわかった。

参考文献:

Chen YC, Tien YJ, Chen CH, Beltran FN, et al. Morus alba and active compound
oxyresveratrol exert anti-inflammatory activity via inhibition of leukocyte
migration involving MEK/ERK signaling. BMC Complement Altern Med. 2013
; 13: 45.

桑の葉を食べ続ければ、PAKを遮断するR4のお蔭で、健康長寿を楽しむことが
できるはずであるが、 不運にも、蚕の場合は (4回目の脱皮を終える頃)食欲を失
(断食) し、繭作りに専念し始め、蛹になって休眠した後、羽化して成虫 (蛾) になり、
交尾して(メスは) 産卵を始める。 成虫の生存期間は、オスの場合8日前後、メスの
場合は3日前後である。さて、卵が孵化するのは、産卵後11日目である。 従って、
蚕の両親は子供たちの顔を見ずに死んでゆく運命にある。。。

2013年11月11日月曜日

Ascofuranone (AF) : Inhibiting Trypanosomal Cyan-resistant Oxidase (TAO) and Blocking Mammalian PAK

AF was an antibiotic isolated from a phytopathogenic fungus by Gakuzo Tamura's
group at Tokyo University in 1972. It  was found in 1980s that AF lowers
the lipid level in serum and suppresses the growth of cancers. In 1996,
AF was found  by Kiyoshi Kita's group at Tokyo University to inhibit the
Cyan-resistant oxidase in Trypanosoma (TAO) which causes sleeping disease
in Sub-Sahara Africa. More recently AF was found by a Korean group led by
Young-Chae Chang to block the oncogenic kinase PAK and activate the anti-oncogenic
kinases LKB1-AMPK in mammals, leading to the activation of adiponectin gene. 
Thus, like "Adiporon" (an adiponectin agonist), AF would be useful for
the therapy of sleeping disease as well as a variety of PAK-dependent diseases
such as cancer, diabetes (type 2), obesity and  AD (Alzheimer's).

2013年11月9日土曜日

国産新薬 「アスコフラノン」 (眠り病の特効薬) も PAK遮断剤 !

ベンチャー製薬会社「アリジェン」(社長: 所  源亮(=ところ げんすけ) 氏) が目下、
開発研究を支援している新薬の一つである。  実は数年前に、私の大学時代
の後輩で、北潔教授 (東大医学部) からもらった、山内一也と北潔による 共著で
「眠り病は眠らない」(岩波科学ライブラリー、2008年) という単行本を読んでい
て、上記のタイトルが稲妻のごとく私の頭を横切った。 これも例の「水平思考」
の所産の一つだ。

彼の専門は分子寄生虫学で、アフリカ大陸に流行しているツェツェバエが媒介
するトリパノソーマという寄生虫 (原虫) によって引き起こされる「睡眠病」に効く
特効薬を目下開発しつつある。この伝染病は人や家畜を永遠に眠らす (殺す)
病気である。その (開発途上の) 特効薬の一つに抗生物質「アスコフラノン」(AF) と
呼ばれる物質がある。AF は植物に病気を起こすカビの一種 (糸状菌)から、
東大農学部 (農芸化学) の田村学造教授の研究室によって、1972年に発見された。
この物質に抗癌作用があることが、同研究室の永井和夫 博士 (東工大名誉教授)
 によって、1982年に発見された。どうやら、マクロファージという貪食細胞の呼吸系を
活性化することによって、癌患者の免疫能を高め、癌の転移を抑えるそうだ。

さて、その話を耳にした北教授は、睡眠病の病原体トリパノソーマの呼吸系に、
この物質がどんな影響を与えるか調べ始め、1996年になって極めて面白いことを
発見した。この寄生虫の(無酸素) 解糖系は、哺乳類の解糖系とちがって、シアン
耐性である。酸化酵素 (オキシダーゼ) がシアン耐性であるからだ。AF が
この寄生虫のオキシダーセを選択的に阻害した。哺乳類の解糖系には無害だった!

従って、AF は人畜無害な (副作用のない) 「睡眠病の特効薬」となりうることが
示唆されたわけである。

他方、抗癌作用のメカニズムの詳細も更にわかってきた。2007年に韓国のグルー
プにより、AF がRASーRAFーMEKーERKという発癌キナーゼ経路を遮断する
ことが既に解明されていた。 更に2010年に、同じ研究グループによって、AFが
AMPKやアディポネクチン遺伝子を活性化することも実証されている。
詳しくは前述したが、PAKはRAS発癌経路の要であると同時に、 AMPK を遮断する働きもある。
いいかえれば、AF もアディポロン同様, PAK遮断剤  (=AMPK 活性化剤)  なのだ!

 従って、この新薬は熱帯アフリカのいわゆる「見捨てられた病気」(眠り病) ば
かりではなく、温帯に住む我々自身を取り巻く癌や糖尿病 (タイプ 2) などの難病

や老化現象の予防、治療にも有効な「人畜無害」の薬になる可能性が 高い。

2013年11月7日木曜日

直訴: 山本太郎の袋叩きは止めよう!

「脱原発」を唱えて、(東京区から当選した)無所属の参院議員、山本太郎が
最近、(円遊会で)天皇に手紙を直に手渡しとして、国会で総スカンを受けてい
る。 私は海外に40年以上、豪州に25年以上永住しているから、山本太郎と
いう議員の人間性について、詳しくは知らない。 しかし、私が彼のような立場に
あったら、きっと天皇に直訴(直接、手紙を手渡)しただろう。日本の政党(与党で
も野党でも)に属する政治家連中に何を訴えても、真面目に受け取ってくれない
からだ。 いわゆる「政治評論家」連中にしても同様だ! 

天皇は今や「神聖な存在」ではなく、生身の人間なのだ。しかも(平成天皇は、
昭和天皇と違って)民衆の苦しみを受け止める心を明らかに持っている。 私も
その昔、天皇家に手紙を出したことがある。宮内庁で全部押収(闇に伏)されたが。

従って、本人が円遊会に招待された(絶好の)機会に直接、書簡を手渡す以外に
方法がないのだ。今回の場合も、手紙は結局、宮内庁の役人に押収されたが、
直訴という事実だけは少なくとも社会に報道された! 私から観れば、山本太郎に
議員辞職を迫る(袋叩きをしている)与野党の議員連中こそ、「税金のタダ食い」
をしている輩だ!

少数派に対する受け皿が全くなくなると、どういう事件が発生するか、賢明な人
なら容易に想像できるだろう。 昔なら(大塩平八郎などによる)一揆が起こる。
今なら首相官邸爆破、国会爆破などのテロが各地で続発する。 中国ウイグル
地区 (山西省) の住民による北京広場での自爆テロなどが、その典型的な例である


自分たちの怠慢で人災を起こした「東電」が、自身の尻拭いを国民の血税に全部頼
り、自社はヌクヌクと利益を上げている。 これほど「不敬」なパーフォーマンス
がどうして許されるだろうか?   怒りの余り、東電の本社を爆破する人々がそのうち
出てくるかもしれない。。。 1949年の米国映画「Fountainhead」(ゲーリー・クーパー主演) の
有名な爆破シーンが目に浮かぶ。

山本太郎を批判する前に、自分が少数派に属する人々からの切実な訴えの受け皿に
なる努力を深思にしているかどうか自問自答してもらいたい!