人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
For detail, click the above image.

2014年7月30日水曜日

NF2蛋白「メルリン」の意外に多彩な機能

抗癌蛋白「メルリン」が機能不全になると、神経線維腫症(タイプ2) という脳腫瘍が
発生することが知られているが、10年以上前に我々は、このメルリンの直接
標的が発癌キナーゼ「PAK 」であることを発見した。メルリンは「PAK」阻害蛋白
なのである。 従って、メルリンが機能不全になると、「PAK 」が異常に活性化される。
いいかえれば、「PAK」を抑えれば、神経線維腫症(タイプ2, NF2) を治療しうる
わけである。 実際、プロポリスなどの「PAK」遮断剤は、臨床においても、数年前
からNF2 の治療に広く使用され始めた。

さて、ごく最近になって、メルリンのもう一つの機能が発見された。 この蛋白が
機能不全になると、「PAK」の活性化に必須なG 蛋白「RAC」も異常に活性化
されることが米国のセントルイスにあるワシントン大学のデビッド=ガットマンの
グループによって、明らかにされた。更に、発癌性チロシンキナーゼである「ErbB2 
  」も異常に活性化されることが同時にわかった(1)。 この2つの新しいメルリン
標的は「PAK」の活性化に必須であることが以前から知られていた。 従って、
メルリンは「PAK」そのものを直接に阻害するばかりではなく、その上流をも遮断
するのである。

「 Bio 30  」などの温帯産プロポリス中の主要抗癌成分「CAPE 」はG蛋白「RAC 」の
活性化を抑えることによって、「PAK」を遮断する。更に (理論的には)、
「ErbB2 」阻害剤である「 AG 825 」やクルクミンも神経線維腫症(タイプ2) の治療薬と
なりうる可能性がある。 ただし、 "AG825" には「脱毛」という副作用があるので、要注意!

参考文献:
 
1. Garcia C, Gutmann DH. Nf2/Merlin controls spinal cord neural progenitor function in a Rac1/ErbB2-dependent manner. PLoS One. 2014 ;9: e97320.


2014年7月28日月曜日

フィレンチェの巨大「ダビデ」像、メルボルンの巨大「ビーナス」像

目下、「メルのビーナス」に最も相応しい頭部 (顔) のモデルを探索中である。
イタリアのフィレンチェを訪れる女性観光客たちの最大の関心事は、ミケランジェロ作の
「ダビデ」(高さ5メートルの大理石像) を見上げて、うっとりと悩殺されることだと
言われている。実は、世界中の男性観光客たちを悩殺するような高さ5メートル
前後のブロンズ像を、メルボルンの州立美術館の前 (あるいは予測される
「交通麻痺や事故」を避けるため、道路を隔てた直ぐ向こう側にある植物園内) に
建設しようと企てている人物がいる。そのブロンズ像のモデルの一つがメルボルンを
象徴する「メルのビーナス」である。勿論、「トルソ」だけではなく、頭付きの方が
観光的に受けると市の観光事業部では考えている。

このビーナスの頭に相応しい女性モデルを一人、私は個人的に良く知っている。
メルボルンはアテネに次いで、ギリシャ人が多い大都市である。 彼女も「ミロのビーナス」と
同様、ギリシャ人の子孫である。彼女の旦那の兄貴ダビデは、優れた芸術家で油絵や
彫刻を専門に制作しているフリーランサーである。特にブロンズ像の制作にたけている。
そこで、彼に頼んで、「メルのビーナス」の上に乗せるべき彼女の頭を先ず制作して
もらおうかと、私は考えている。。。最終的には、このレプリカとなる高さ5メートル
(5倍の拡大版) のブロンズ像を、メルボルン市の中心に据え付ければ、男性観光客を
ここに引き付けること間違いなしであろう。

ミケランジェロのダビデ像を酷評した同時代のライバル「ダ・ビンチ」曰く:

ああ、解剖学的な画家よ、気をつけ給え!  君が裸体の感情の全てを表現せんが
ために、骨や腱や筋肉を強調する余り、「木偶の坊」の画家とならぬように…

2014年7月24日木曜日

芸術性の高いマネキン 「メルのビーナス」 に魅せられて

日本では梅雨が明けて、猛暑日が続いているようだが、メルボルンでは真冬 (日中
の室温が10度!) である。さて、昨日は久々遠出をして、(バス、市電、列車、タ
クシーなどを駆使して) 片道2時間半もする郊外にあるマネキン屋の倉庫に出かけ
て、銀色に輝く「トルソ」(女性胴体、約5キログラム) を80ドルという格安で入手してきた。
(経営不振のため) 10月に店仕舞いをするそうで、定価の4割り引きで、棚下ろしセール中
だった。


早速、我が家の台所の食卓に安置し、ビキニ、肌着、レオタード、水着、ナイトガウン、
浴衣、腰巻タオルなどの衣装を着せ、照明ライトを駆使して、セクシーな芸術
写真を幾つか撮ってみた。 昨夜のメインメニューはトップレスの「トルソ165」である。
往年の米国映画「マネキン」のシーンをふと思い出す。芸術家くずれで、女性にも
さっぱり運のないジョナサンが自分の作った最高のマネキン「エミー」に、あるデパートの
ショーウインドーで再会する。そのうち、マネキンが人間の姿に変身して、ジョナサンの
恋人役を演じる。 そんな夢を見ながら、昨夜は熟睡した。

私がマネキンに初めて興味をもったのは、今から30年以上昔のことである(勿論、
例の映画が制作されるずっと前のことである)。当時、西ドイツのミュンヘン郊外
にあったマックスプランク研究所で数年間、生化学の研究を続けていた。ある日、
汽車で (ネッカー河畔にある) ハイデルベルグという美しい古都に出かけた。 日没
ごろ、街燈がともり始めた街並みのショーウインドーで、肌着をまとった足長の
すらりとしたマネキン(名付けて "ネッカーのビーナス") に出会った。早速、彼女を
カメラに収めた。 今でもその一こまを写真アルバムに大事に保存している。 しかし、
マネキン (しかも、首や手足のない「トルソ」) を今ごろになって自分の手で買おうとは、
想像だにしなかった。

実は3、4年ほど前に、等身大 (高さ165 センチ) の真っ白な素焼きの若い女性像
 (ジュリーという名) を、我が芸術の庭に「オブジェ」のひとつとして設置した。
ジュリーも定価の半額 (約300ドル)で店仕舞い前の骨董品屋から入手したものだ
が、目方が40キログラム以上する。しかも、(海外旅行など留守中の) 盗難を防ぐ
ため、鉄筋コンクリートで土台をしっかりと地面に固定してしまった。 従って、
屋内 (例えば、アトリエや台所など) への持ち込みは不可能だった。 このマネキン
 (名付けて"メルのビーナス"、頭部=20センチ、残りの脚部=55センチを仮に補充すれば、
身長=165センチ前後) はずっと軽量で、持ち運びがすこぶる簡単であり、屋内での
愛玩用 (目の保養) にぴったりである。勿論、(実際には) 顔と手足がないので、
想像力をたくましくせねばならないが。。。

2014年7月20日日曜日

「アルニカ」オイルは、癌やNF1の「ブク」にも有効である可能性が高い。

オーガニック・アルニカ・オイルとは、アルニカ[ウサギ菊]という花の抽出物(ひまわり油で抽出)ですが、ヨーロッパでは、炎症などを治す塗り薬として使用されています。ところが、数年前の資生堂による研究によれば、この抽出物(トリテルペン類)には、美白(メラニン合成を抑制する)作用もある (1)。そのメカニズムは、どうやらPAK遮断によるものらしい。というのは、炎症もメラニン色素合成もPAKを必要とするから。言い換えれば、アルニカ抽出物は、プロポリス同様、NF1のブクにも聞くはず。 amazon.co.jpや楽天から注文すると、50mlが900円。

つい最近、このエキスには熱ショック蛋白(HSP)を誘導する作用もあることが、慶応大学薬学部の水島 徹教授の研究室によって明らかにされた(2)。前述したが、PAKHSP遺伝子の発現を抑える作用がある。 このエキスは強力なPAK遮断剤(例えば、helenalin 2-methylbutyrate を含む。 従って、美白を目的とする化粧品ばかりではなく、抗癌剤としても、将来広く利用できる可能性が高い。 

参考文献:

1.    , Naitou T, Umishio K, Fukuhara T, Motoyama A. A novel melanin inhibitor: hydroperoxy traxastane-type triterpene from flowers of Arnica montana. Biol Pharm Bull. 2007; 30: 873-9.

2.Usui K, Ikeda T, Horibe Y, Nakao M, Hoshino T, Mizushima T.
Identification of HSP70-inducing activity in Arnica montana extract and purification and characterization of HSP70-inducers. J Dermatol Sci. 2015; 78: 67-75.
 

胃潰瘍の特効薬 「セルベックス」: 癌やNF腫瘍 にも効くはず!



セルベックス(エーザイ)50mgカプセル、毎日3回(薬価30円)、処方薬?

胃潰瘍の薬だが、動物実験では、認知症にも有効。HSP(熱ショック蛋白)を誘導する作用がある。PAKのすぐ上流、例えば RAC/CDC42 などの G蛋白を遮断することによって、HSP遺伝子を活性化していると思われる。胃潰瘍も認知症もPAK依存性の疾患であるからだ。従って、理論的には、癌、NF、ALSなどにも有効なはず。詳細は、8月5日に更新した記事を参照されたし。

"寿命を伸ばす" 線虫由来の忍耐ホルモン(ダウモン)


線虫は発生の過程で、食物の欠乏や乾燥、高熱など周囲の環境条件が悪化すると、一種の忍耐ホルモンが体中に分泌され、ストレス耐性の幼虫に変態する。この変態現象は、細胞性粘菌の植物化に類似している。 2005年に、韓国ソウルのヨンセイ大学の有機化学者、マンキル・ジュング教授のグループがこの忍耐ホルモン(ダウモンと呼ばれる比較的に水溶性の糖脂質)の化学構造を決定し、その化学合成にも成功した(1)。2009年には、同じグループにより、ダウモン誘導体が合成され、強い抗癌性(IC50=20 nM)があることが示された。 さらに、ごく最近になって、同じグループにより、このホルモン(2mg/kg)を毎日経口させると、(PAK1遺伝子の欠損と同様)マウスの寿命が50%ほど伸びるばかりではなく、炎症を抑えることをも実証した(2)。従って、このホルモンがPAK1(あるいはそのすぐ下流の発癌・老化酵素“ILK”=integrin-linked kinase) を遮断する可能性が極めて高く、我々はヒト由来の膵臓癌細胞などを使って、それを近く実証する実験を計画している。


参考文献:

1.          Jeong PY, Jung M, Yim YH.et alChemical structure and biological activity of the C elegans dauer-inducing pheromone. Nature. 2005433: 541-.
2.          Park JH, Chung HY, Kim M, et alDaumone fed late in life improves survival and reduces hepatic inflammation and fibrosis in mice. Aging Cell. 2014, in press.