人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2014年8月26日火曜日

(水溶性の) クルクミン配糖体がついに登場!

(疎水性の) 側鎖の長いアルコール類やポリフェノール類の水酸基に単糖を脱水
付加することによって、水溶性の(腸管からの吸収率が高い) 配糖体を合成しうる。
クルクミンやCAPEなどのポリフェノールはPAK遮断剤として知られているが、
その疎水性のため、そのままでは臨床には利用できないというディレンマがあっ
た。 さて、ごく最近インドの研究グループによって、クルクミンの配糖化に成功
した(1)。 クルクミン分子の両端 (フェノール環) に水酸基が一つづつあるが、その一つ、
または両方にグルコースを付加すると、水溶性になり、その薬理作用が増すそう
である。 収率は65%だから、工業化しても採算が合いそうである。 プロポリスの
抗癌成分であるCAPEでも同様な配糖化が近い将来なされることを期待したい。

ところで、(市販薬の中で) 最も有名な天然の 配糖体はジギタリス由来の強心剤「ジギトニン」で
あるが、天然のPAK遮断剤の中にも 配糖体が2、3 知られている。ブルーベリー
由来のアントシアニン「C3G」、「岩弁慶」由来のサリドロサイド、赤い甜菜根由来の
ベタニン(beta-cyanin) などである。 ひまわり (品種solar flash) 種子由来の水溶性の
赤い色素も配糖体である可能性が高いので、その薬理作用を詳しく調べる価値は
大いにあると思われる。

参考文献: 
1. Bhaskar Rao A, Prasad E, Deepthi SS, et al. Synthesis and Biological Evaluation of Glucosyl Curcuminoids. Arch Pharm (Weinheim). 2014 Aug 20.

2014年8月22日金曜日

HDAC (ヒストン脱アセチラーゼ) はPAKと同様「健康長寿の敵」
(=発癌/老化酵素) である!


HDAC 阻害剤の一つである「ベーターヒドロキシブチル酸」(BHB) が、センチュウの寿命を20%伸ばすことが、ごく最近、米国サウスフロリダ大学のパトリック=ブラッドショー教授のグループによって証明された (1)。この発見は驚くにはあたらない。なぜかと言えば、抗癌剤「FK228」などで、HDAC (ヒストン脱アセチラーゼ) を阻害すると、その下流にあるPAK が阻害されることが既にわかっているからである。PAKには元来寿命を縮める機能があるから、それを何らかの方法で遮断すれば、当然寿命は伸びる。BHB はプロポリス中にあるPAK遮断剤「CAPE」と同様、「FOXO」と呼ばれる健康長寿に必須な転写蛋白を介して、センチュウの寿命を伸ばすこともわかった。「FOXO」は前述のHSP (熱ショック蛋白) の誘導にも必須である。従って、HDAC阻害剤にはセンチュウを熱耐性にする働きもある。

参考文献:
  1. Edwards C, Canfield J, Copes N, et al. D-beta-hydroxybutyrate (BHB) extends lifespan in C. elegans. Aging (Albany NY). 2014 Aug 7.

2014年8月18日月曜日

癌の放射線治療は害多くして、益少なし!:
発癌/老化キナーゼ「PAK 」を活性化するからだ


放射線や従来の抗癌剤による癌の治療は多くの副作用をもたらす。脱毛、免疫能の低下、食欲の減退などである。従って、これらの副作用を起こさない (しかも、健康長寿をもたらす可能性の高い) プロポリスなどのPAK遮断剤を使用する方がずっと賢明であろう。

さて、ごく最近、放射線のもたらす「もう一つの弊害」が分子レベルで明らかになった。韓国プサン大学の研究グループによれば、肺癌の放射線治療は、なんと発癌/老化キナーゼである「PAK 」を異常に活性化する結果をもたらす(1) そのメカニズムを詳しく調べた結果、次のようなことが明白になった。放射線はチロシンキナーゼの一種であるJAK2を活性化し、その結果、PAKが燐酸化を受けて、異常に活性化される。 けだし、乳癌では、プロラクチンがJAK2を介して PAKを活性化することが数年前からわかっている。肺癌や乳癌が放射線や抗癌剤「タモキシフェン」に対して耐性を示すのも、このPAKの異常活性化による。従って、肺癌でも乳癌でもそうであるが、(逆にPAKを遮断するプロポリスなどで治療する方がずっと効果的であると思われる。

参考文献:
  1. Kim E, Youn H, Kwon T, et al. PAK1 tyrosine phosphorylation is required to induce epithelial-mesenchymal transition and radio-resistance in lung cancer cells. Cancer Res. 2014 Aug 14.

2014年8月10日日曜日

「PAK-ILK-p65 ( NF-κB) 」 シグナル経路:
癌にも炎症にも流感にも必須!


「PAK」というキナーゼが発癌や老化に必須であることは前述した。更に、PAKに
よって活性化される「ILK」(integrin-linked kinase) も発癌や老化に必須であることも
最近判明した。従って、PAK-ILK シグナル経路は我々の健康長寿を脅やかす「悪
玉」の相棒関係にある。 さて、PAKが胃潰瘍、喘息、リューマチなどの炎症にも
必須であることが数年前から知られている。というのは、PAK遺伝子を欠損した
マウスでは、これらの炎症が発生しないからだ。だから、PAK遮断剤の一つである
「セルベックス」が胃潰瘍の特効薬であることに不思議はない。いいかえれば、
この薬剤は胃潰瘍ばかりではなく、喘息やリューマチなどの治療薬としても有効
なはずである。

さて、ごく最近、豪州のメルボルン郊外にあるモナッシュ大学の医学研究所にある
ブライアン=ウイリアムス教授の研究室が「ILK」に関して、面白い発見をした。
このキナーゼも (PAKと同様) 胃潰瘍などの炎症に必須であることをまず突き止め
た (1)。 更に、ILKによって燐酸化される転写蛋白をみつけた。 「p65」 と呼ばれる
転写蛋白 (=NF-κB の一員) は、ILKによって燐酸化されると、細胞質から核内に移行して、
活性化される。 さて、胃潰瘍の主原因は、ピロリ菌による感染であるが、ピロリ菌は
宿主のPAKを異常に活性化することによって、胃炎、胃潰瘍、胃癌など一連の病気を
発生させる。 その結果、ILKが異常活性化し、燐酸化された転写蛋白p65 が核内に入り、
炎症をもたらすTNF-アルファなど一連のいわゆる「炎症蛋白」(ホルモン) の産生を
促すわけである。

流行性感冒(インフルエンザ=ウイルス感染) にもPAKが必須であることがわかって
いる。 PAK遮断剤であるプロポリスが流感の特効薬である理由はそこにある。
さて、ILK やp65 (NF-kB) はどうだろうか?  2年ほど前にドイツのミュンスター
大学ウイルス研のステファン=ルードビッヒ教授の研究室が、p65阻害剤であるSC75741
(15 mg/kg) によって、マウスへのインフルエンザ=ウイルスの感染を見事に予防/治療に
成功した (2)。 いいかえれば、「PAK-ILK-p65」 シグナル経路は流感などのウイルス感染
にも必須なのである。当然ながら、セルベックスは流感にも有効であるはず。

 けだし、p65の発見者はドイツ人のPatrick Baeuerle である。パトリックは1980年代前半に
私がミュンヘンのマックス=プランク研究所に勤務していた頃、隣の研究室にいた
ずば抜けて優秀な院生だった。 1989年に米国MITのDavid Baltimore 教授
 (逆転写酵素の発見でノーベル賞を受賞) の研究室でポスドクをしていた頃、p65が
NFkB 複合体の一員であることを発見した。 その抗体を開発後、モノクローナル抗体の
開発研究に専念し、現在はミュンヘン大学の名誉教授であると共に、米国ベセスダ
(NIH のあるワシントン市郊外) で、抗体製剤を扱うベンチャー会社「Micromet」(最近、
Amgen が吸収合併) の社長をしていると聞いている。

参考文献:  
Integrin-Linked Kinase Modulates Lipopolysaccharide- and Helicobacter pylori-Induced Nuclear Factor κB-Activated Tumor Necrosis Factor-α Production via Regulation of p65 Serine 536 Phosphorylation. J. Biol Chem. 2014 Aug 6. 
2.  Ehrhardt C, Rückle A, Hrincius ER, et al. The NF-κB inhibitor SC75741 efficiently blocks influenza virus propagation and confers a high barrier for development of viral resistance. Cell Microbiol. 2013; 15: 1198-211.