人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2014年9月29日月曜日

若返りたかったら、鳩麦を食え!


その昔 (戦後間もなく、白米の供給不足で「闇ゴメ業者」が横行していた時代に)、時の大蔵大臣だった池田勇人氏が「貧乏人は麦を食え!」と国会で発言して、一般庶民から非難を浴びたことがある。私の父は「自民党嫌い」だったが、珍しく池田蔵相のこの発言を「名言」(生活の知恵) だと言って讃めそやしたばかりではなく、白米を食べるのを辞めて、いわゆる「麦党」になった。とは言っても麦飯は余り美味しくない。そこで、パン食や麺に切り換えた。パンや麺は一般に小麦粉 (メリケン粉) で作る。父は慢性の胃潰瘍を患っていたので、こなれの悪い米のご飯が実は余り好きではなかった。その上、米は当時貴重品で、(ヤミゴメを買える) 金持ちの主食だった。パンや麺はこなれが良く、(アメリカの駐留軍からの小麦支給などのおかげで) 安価でもあった。

さて、今世紀に入って、(東南アジアやアフリカ諸国と違って) 日本全体が経済的に豊かになり、白米はもはや贅沢品ではなくなった。今の日本で大きな問題になっているのは、我々自身を含めて70才を越える高齢者が人口の20%以上を占めつつあることである。これら高齢者に忠告したいことが一つある。「若返りたかったら、鳩麦を食え!」

その理由を科学的に説明しよう。鳩麦 (英名: Adlay) はフィリピンなどの亜熱帯地方原産だが、実が鳩のような形をしているから、そう呼ばれるのだろう。漢方や民間療法では、皮を剥いた種子を 「よくいにん」と呼んで薬用に用いられ、イボ取りの効果、利尿作用、抗腫瘍作用などがあるとされる。また、ハトムギ茶やシリアル食品などにも利用される。 鳩麦エキスは皮膚に塗布すると、保湿作用、美白作用もあることが知られており、多くの化粧品に配合されている。最近、愛犬用「健康食品」としても販売されつつある。理由はこれを食べると、肥満を予防するのである。最近になって、 鳩麦エキスに抗癌キナーゼ「AMPK」を活性化して、脂肪代謝を促進し、糖尿病の発生を予防する効果があることが判明した (1)。前述したが、「AMPK」活性化剤=PAK遮断剤である。従って、イボ取りに有効、抗癌作用、抗炎作用があるのは、驚くにはあたらない。 

 最近、その美白 (メラニン色素合成を抑える) 作用のメカニズムが台湾の研究グループによって解明された。メラニン色素合成に必須な酵素「チロシナーゼ」を直接阻害せずに、その遺伝子の発現に必須な転写蛋白「MIFT」の発現や活性化を抑える作用が、 鳩麦エキスにある (2)。この作用は明らかにPAK遮断剤の薬効である。従って、癌などの難病ばかりではなく、認知症などの老化現象を抑え、健康長寿を保証する!  ただし、白米を主食とする日本では、鳩麦は安くない! (白米の価格の3倍ほどする) から贅沢な食品である。。。

参考文献:
1)    Ha do T, Nam Trung T, Bich Thu N, et al. Adlay seed extract (Coix lachryma-jobi L.) decreased adipocyte differentiation and increased glucose uptake in 3T3-L1 cells. J Med Food. 2010 ; 13: 1331-9..
2)    Huang HC, Hsieh WY, Niu YL, Chang TM. Inhibitory Effects of Adlay Extract on Melanin Production and Cellular Oxygen Stress in B16F10 Melanoma Cells. Int J Mol Sci. 2014; 15: 16665-79.

2014年9月16日火曜日

美白作用を持つ新薬「p-デシルアミノフェノール」(pDAP) は
恐らくPAK遮断剤


レチノイン酸 (RA) にも美白 (メラニン合成を抑える) 作用があることは知られているが、残念ながら、しばしば皮膚に炎症を起こす副作用があり、美白用クリームに利用するには問題がある。そこで、星薬科大学の研究グループ (高橋)
、副作用のないRA誘導体を開発しているうちに、より美白作用の強い、しかも炎症を起こしにくい化合物をつい最近発見した (1)。その化学名は「p-デシルアミノフェノール」(pDAP)メラニン阻害剤の標準物質として良く知られているコージ酸より強い美白 (メラニン合成を抑える) 作用を示した。しかも、その作用メカニズムがコージ酸とは異なることもわかった。

コージ酸はメラニン色素合成に必須な酵素「チロシナーゼ」を直接阻害するが、PDAPはチロシナーゼを直接阻害しない。チロシナーゼ遺伝子の発現に必須な転写蛋白「MIFT」の活性化を抑えることが判明した。 しかも、
発癌キナーゼ「AKT」を抑制せずに、PAKの下流にあるキナーゼ群 MEKーERKシグナル経路を
選択的に抑制していることもわかった。従って、この化合物「pDAP」が(メラニン色素合成に必須な) PAKシグナル経路を何らかのメカニズムで 遮断している可能性が強い。
もし、(予想通り) pDAPがPAKを遮断することが確認できれば、PAKによるMITF活性化には少なくとも2通りの経路が関与していることになる。一つは(前述した) 転写タンパク質「ベータカテニン」を介する経路、もう一つはキナーゼ「RAFーMEKーERK」を介する経路である。
いいかえれば、この新薬はいわゆる「美白 クリーム」などの化粧品ばかりではなく、癌、炎症、様々な感染症、認知症などの治療にも将来役立つ可能性がある。 

参考文献:

  1. Takahashi N, Imai M, Komori Y. Inhibitory effects of  p-alkylaminophenol on melanogenesis. Bioorg Med Chem. 2014; 22: 4677-83.