人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2016年2月29日月曜日

高血圧の特効薬 「カプトプリル」: 「健康長寿」 の薬でもある!

もう40年近く昔に、米国の大手製薬会社 「ブリストル=マイヤー」 によって、高血圧の特効薬として合成/開発/販売された 「カプトプリル」 はアンジオテンシン活性化酵素(ACE)の阻害剤 (IC50=2 nM)である。 前述したが、高血圧も 「PAK依存性難病」 の一つである。 ごく最近、米国セントルイスにあるワシントン大学の研究者によって、この特効薬がセンチュウの寿命を延ばす作用があることが実証された(1)。

前述したが、老化現象も 「PAK依存性の現象」 である。 従って、この特効薬にPAK遮断作用がある可能性がある。近い中に、それを実際に確かめてみたい。 さて、この特効薬には、肺癌などの「PAK依存性の増殖」を抑える作用も既に見つかっている。

この特効薬の化学構造を調べてみると、何んと、カルボン酸が分子中にあることがわかった。そこで、このカルボン酸をエステル化して、更に強力な「健康長寿」の薬を開発することに、近いうち挑戦したいと思う。

 さて、文献を更に調べてみると、1991年にドイツの製薬会社ヘキストが「カプトプリル」の改良型で「ラミプリル」と呼ばれる高血圧の特効薬に関する特許を取得した。 「ラミプリル」 5 mg の錠剤を毎日一回と「カプトプリル」 50 mg の錠剤を毎日2回が、同定度の治療効果を発揮するという臨床結果が出て以来、「カプトプリル」の売れ行きがガタ落ちになった。
「ラミプリル」にもカルボン酸があるが、この改良型にもPAK遮断作用があるかどうか調べてみたい。

カプトプリルはプロリンの誘導体でカルボン酸を有する分子であるが、このカルボン酸が果して、ACE阻害やPAK遮断に必須かどうかが、今後の我々のエステル化プロジェクトの中心課題になる。

参考文献: 
1. Kumar S1, Dietrich N1, Kornfeld K1 Angiotensin Converting Enzyme (ACE) Inhibitor Extends Caenorhabditis elegans Life Span. PLoS Genet. 2016 Feb 26; 12: e1005866.

2016年2月27日土曜日

「Novartis」 が開発中の認知症 (AD) 治療薬 「NBー360」 はPAK遮断剤?

最近、スイスの大手製薬会社 「Novartis」 が認知症の治療薬として、「NBー360」 という化合物を開発中であることを文献上で知った。 この化合物は元々、アルツハイマー病 (AD)の原因であるアミロイド=ベーターを生産する酵素「ベータ =セクレターゼ 」 (BACE)の阻害剤として開発されたもので、血管脳関門を通過しやすい性質がある。

最近発表された "Novartis" 研究グループ (ウルフ=ノイマンら) からの報告によると、この化合物には、抗炎症作用や美白 (メラニン色素の合成を抑制する) 作用もあることが判明した(1、2)。 前述したが、AD、炎症、メラニン色素の合成 (沈着) は、悪玉酵素 「PAK」 に依存する疾患あるいは現象である。 従って、我が水平思考に従えば、「NBー360」 もPAK1遮断剤である可能性が示唆される。

もし、この推量を実証できれば、 「NBー360」 は(ADばかりではなく) NF、TSC 、 グリオーマのような脳腫瘍の特効薬としても、将来、臨床に応用される可能性がある。従って、機会があれば、この試薬をノイマン博士から入手して、PAK1遮断作用を調べてみたい。

参考文献: 
1. Shimshek DR1, Jacobson LH1, Kolly C2, Zamurovic N2, Balavenkatraman KK2, Morawiec L2, Kreutzer R2, Schelle J3, Jucker M3, Bertschi B2, Theil D2, Heier A2, Bigot K2, Beltz K4, Machauer R5, Brzak I1, Perrot L1, Neumann U1. Pharmacological BACE1 and BACE2 inhibition induces hair depigmentation by inhibiting PMEL17 processing in mice. Sci Rep. 2016 Feb 25;6:21917.
2. Neumann U1, Rueeger H2, Machauer R3, Veenstra SJ4, Lueoend RM5, Tintelnot-Blomley M6, Laue G7, Beltz K8, Vogg B9, Schmid P10,11, Frieauff W12, Shimshek DR13, Staufenbiel M14,15, Jacobson LH16,17. A novel BACE inhibitor NB-360 shows a superior pharmacological profile and robust reduction of amyloid-β and neuroinflammation in APP transgenic mice. Mol Neurodegener. 2015 Sep 3;10:44.

2016年2月14日日曜日

オリゴノール: 天然PAK遮断剤?

(古代中国の四大美人の一人と言われている) 「楊貴妃」が好んで食べた「ライチ」という果物 (果実の女王) のエキス中に含まれる高分子の配糖ポリフェノールを酵素で分解して(胃腸膜から吸収され易くした) オリゴ配糖体「オリゴノール」を健康補助食品として、数年前から札幌にある 「アミノアップ化学」 が販売し始めた。 2014年には米国のFDAからも承認を得て、世界中に販売されつつあるようだ。

さて、最近になって、この「オリゴノール」の薬理作用に関する幾つかの興味深い研究報告が出ている。それらを総合すると、「オリゴノール」は天然のPAK遮断剤のカクテルであろう、という結論が出そうである。 近い将来、サンプルを取り寄せて、実際にPAK遮断作用を確認し、いわゆる「Anti-PAK Index」を算出し、「Bio 30」と比較してみたい。

「オリゴノール」には、次のような薬理作用がある。(1) インフルエンザ=ウイルスによる感染を抑える; (2) 癌細胞の増殖や転移を抑える; (3) 炎症や痛みの元であるCOX-2 遺伝子の発現を抑える; (4)  センチュウの寿命を延ばす; (5) マウス実験で、認知症のため失った記憶を取り戻す効果がある (daily dose, 経口で 100 mg/kg) 。 これらの薬理作用は全て、プロポリスなどの天然PAK遮断剤と同じである。 我が 「水平思考」 に従えば、九分九厘 (99%) 「PAK遮断剤」に間違いない。 PAK遮断剤であれば、「美白作用」もあるはずである。 だから、唐の最盛期 (8世紀) に「主婦の感」(?) で、 楊貴妃は ライチを常食していたのかもしれない。。。

唐代の有名な詩人、李白、杜甫、白楽天などは、この時代に活躍した詩仙 (「漢詩」の天才たち) である。 特に、杜甫の 「春 望」 は、日本でも有名である:

国破れて、山河あり。 城春にして 草木深し。
時に感じて 花にも涙を濺ぎ、別れを恨んで 鳥にも心を驚かす。

峰火 三月に連なり。 家書 萬金に抵る。
白頭掻いて 更に短かし。 渾べて簪に 勝えざらんと欲す。

長安の荒廃した様を嘆いてうたった詩 (757年の作)。 実は、755年末に起こった「安禄山の乱」で、杜甫は一時長安に幽閉されていた。

皇帝(玄宗)が楊貴妃を寵愛し過ぎたために、「安禄山の乱」が発生。反乱軍により皇帝夫妻は首都長安から追われた後、楊貴妃は756年に、わずか37歳で生涯を閉じる。 玄宗は退位し、息子(皇太子)が帝位に就く。 この政変を境にして、唐朝の勢力が次第に衰退して、辺境を守る「節度使」(軍閥)が全国に割拠する「五代十国」(戦国)時代に移行していく。 楊貴妃が、いわゆる 「傾国の美女」 と呼ばれる由縁はここにある。

2016年2月13日土曜日

低次元の 「アスピリン」 製剤作戦から高次元の「エステリン」創薬作戦へ

「エステリン」という学術的「新語」は、(PAKを遮断する水溶性の) エステル体の総称である。 実は、「アスピリン」(ASA)もエステリンの一種である。サリチル酸 (SA)はベンゼン環にカルボン酸と 水酸基 (フェノール基) が (オルト位で) 付加した (柳の樹皮由来の) 天然物であるが、SA の水酸基に 「無酢」(無水酢酸)を噛まして、エステルにしたものが、合成鎮痛剤「アスピリン」である。 さて、アスピリンのカルボン酸に水溶性の(アゾ)アルコール類を噛まして、更にエステル化すると、アスピリンの細胞透過性が20倍ほど増加することが知られている。 しかしながら、この新アスピリン(アゾピリン)の抗癌作用は、なお最強プロポリス「Bio 30」の抗癌作用の5分の1に過ぎない。

そこで、我々は (製薬業界の「飛躍的発展」をめざして) アスピリンよりずっと抗癌作用の強い(使い古されたゲネリック)合成鎮痛剤(K)を出発原料にして、そのカルボン酸に(アゾ)アルコール類を噛まして、「アゾエステリン K」なる新薬を開発した。 前述したが、この新薬は化合物Kの細胞透過性を500倍以上高めるので、抗癌作用も500以上高まり、「Bio 30」の抗癌作用の1000倍近くになる。従って、明らかに「発明」としての価値 ありと判断して、国際特許を申請し、欧米の大手製薬会社の喚起を促した次第である。

先ず販路の広大な北米やEUに市場を絞り、のちに日本国内でも安く専売できるように、別に「日本特許」も申請しようと計画している。 この (日本国内では、海外より安価に薬を提供する) 方式は、いわゆる「高峰式」として知られている。日本国内のテレビ広告 (CM)番組では、できればテニスの「錦織 圭」選手に登場してもらい、日本版「アゾエステリン 圭」を大いに宣伝してもらおうと夢見ている。。。

「アゾエステリン」類はPAK遮断剤なので、癌ばかりではなく、NFなどの脳腫瘍、リューマチなどの炎症、認知症、パーキンソン病、糖尿病、高血圧、肥満症、骨粗しょう症、鬱病、自閉症、精神分裂症 (統合失調症)、様々な感染症、などを、次から次へと、強力なスマッシュで打破していくイメージは、視聴者たちにきっと受けるに違いない。ドイツで今最も人気のあるテニス選手は、アンジー=カーバー(Angie Kerber) である。今年の全豪テニス (女子) で、「米国の常勝」セレーナ=ウイリアムズを見事に破って、初優勝した。そこで、ドイツ (あるいは欧州) のテレビCMには、(できれば) アンジーを起用したいと思う。 米国内のCMでは、最も視聴覚率が高いプロ野球メジャーリーグで活躍する有名なホームラン王を起用したい。

「アゾエステリン K」以外に幾つかのエステリン誘導体を摸索している。 アゾアルコールの代りに、他の(水溶性) アルコール類を使用すれば、様々な「エステリン K」が誕生する。例えば、HUを噛ませれば、「ユーエステリン K」が生まれる。詳しくは述べないが、「アルゴエステリン K」の合成も企画している。 全てPAK遮断剤だから、標的(治療の対象)になる「難病スペクトラム」 (PAK依存病) は同じであるが、その中で最強のエステリンKを近い将来、市場に出したいと思っている。

アスピリンを巡るいわゆる軽薄な「製剤競争」に代って、今後は極めて「次元の高い」エステリンを巡る創薬競争が世界中で始まると予測される。 従って、先ず 「アゾエステリン K」の特許使用料を大手の製薬会社から獲得し、研究費稼ぎの一助とせねばならない。ベンチャービジネスは、一種の「自転車操業」である。ペダルを間断なく踏み続けなければ、横倒しになる。。。

2016年2月11日木曜日

アスピリンを巡る 「神話」 と 「史実」

医薬品の中で、最も長い歴史をもっているのは、バイエル販売の「アスピリン」と呼ばれる鎮痛剤/解熱剤/抗炎症剤である。 アスピリン(アセチルサリチル酸=ASA)という化合物が初めて効率良く純粋に合成されたのは、1897年のことである。 従って、120年近くの歴史をもち、現在なお一般に使用されている。 この化合物を合成したのは、当時「染料会社」だったドイツの「バイエル」の29歳の若者 (フィーリックス=ホフマン、1868-1946) だった。 実は、彼には慢性のリューマチに苦しむ父親がいた。 当時、リューマチなどの病気に伴う激しい痛みを和らげる薬としては、サリチル酸(SA)が一般に使用されていた。 SAは柳の樹皮から抽出される天然の鎮痛剤であるが、酸性が強いため、繰り返し経口すると、胃炎や胃潰瘍などの副作用を起こす。 そこで、彼は父親のために、SAの誘導体を合成し、その副作用を弱める試みをした結果、アセチル化したSA (アスピリン) は、副作用がずっと弱くなるが、鎮痛作用は依然としてあることが判明した。

そこで、次のような 「アスピリン神話」が 誕生した:  彼は早速、新規な化合物 「ASA」の合成法と鎮痛剤としての薬理作用に関する特許を申請して、バイエルから商標「アスピリン」で販売を開始した。 しかしながら、実は、これは「神話」に過ぎない。

史実はずっと複雑であり、先ずASAの合成法に関する特許など存在しない。 アスピリンに関する特許は山ほどあるが、それは全部 (極めて派生的な) 製剤法に関するものばかりである。 実は、ホフマンが合成に成功してから、図書館で文献調査をしたところ、40年以上昔(1853年)に、フランスのシャルル=ゲアハートが粗品ではあるが、既にASAの合成に成功しており、しかも、それから16年後にはドイツのカール=クラウトによって、純品も合成されていたことが判明した。勿論、ホフマンの合成法は多少改良されていたが、本質的には「発明」とはいい難い。 従って、特許の申請もしなかったし、その薬理作用を研究論文として発表することもしなかった。 勿論、彼の父親は(モルモット代わりに) 息子のASAを 有り難く経口した。

さて、当時の「バイエル」は「染料会社」だったが、医薬の開発も副業として始めていた。 医療部門は、ホフマンの所属する創薬課とハインリッヒ=ドレサー教授の薬理課に業務が分担されていた。 ASAはドレサーによって、薬理テスト(動物実験) されたが、特に顕著な作用は見つからず、そのまま「棚上げ」にされた。 実は、「バイエル」は当時、もう一つの新薬の開発に関わっていた。 麻薬「ヘロイン」である。 この化合物(モルヒネの誘導体)も、実は「バイエル」発ではない。 20年ほど前に英国の化学者(ライト博士)によって、発明されたものである。 しかしながら、この化合物が急に注目され始めたきっかけは、ドレサーが「バイエル」の従業員たちに、この化合物を飲ませ、「人体実験」をした結果、咳どめ薬「コデイン」の10倍の薬効があり、(中毒性などの) 副作用は10分の1であることが判明したからだ。 そこで、このモルヒネ誘導体を「ヘロイン」という商標で、1898年から販売し始めて、医療界に一大センセーションを巻き起こしていた。 従って、当初、ホフマンのASAはドレサーの関心外にあった。

ところが、1898年末に「異変」が起こった。創薬課の課長であるアーサー=アイヘングリューンは、ドレサーの無関心に腹を立て、ASAを経口して、その薬効を自身で確かめてみた。 少なくとも心臓に対する副作用はなかった。そこで、ベルリンの臨床医たちにこの薬を配り、リューマチ患者に試めしてみた。すると、リューマチの痛みばかりではなく、頭痛をも緩和したし、サリチル酸の持つ副作用が殆んど見られなかった。それを知ったドレサーは、その臨床テストの結果を、勝手に研究論文にして、臨床雑誌に発表した。その論文には、ホフマンの名もアイヘングリューンの名もなかった!  こうして、1889年に「バイエル」マークの有名な鎮痛剤「アスピリン」が市場に初めて出た。 おかげで、薬理担当のドレサー教授は「アスピリン」から巨万の富を得たが、創薬担当のホフマンやアイヘングリューンは、(結局) ASAの特許申請が却下されたため、「ASAプロジェクト」から得るものは一文もなかった。 以来、ドレサーと創薬チームの仲が険悪になったのは言うまでもない。 ホフマンは死から半世紀以上あと (2002年) になって、米国で 「発明家殿堂」入りしたそうである。

詳しくは、1991年に出版された英文の書籍 「The Aspirin Wars」(Mann, C & Plummer, M. 著) を参照されたし。平沢 正夫 による邦訳「アスピリン企業戦争」 ( ダイヤモンド社 、1994年) も出版されている。 「アスピリン」 を含有する種々の鎮痛剤 (頭痛薬) の"製剤" 特許および販売をめぐって、元祖 「バイエル」 とその他の製薬会社との間の100年以上にわたる壮絶な競争 (企業戦争) の歴史を扱った一般読者向けの本である。

最近の研究によれば、ASAには鎮痛作用ばかりではなく、抗炎症作用、血小板凝集阻害作用、弱いが抗癌作用などもあることが判明した。 なぜかと言えば、ASAはPAK遮断剤の一種なのである。 しかしながら、その抗癌作用は、例えば、最強のプロポリス「Bio 30」のわずか100分の1 に過ぎない。 我々はごく最近、別の古い鎮痛剤から非常に強力な新規PAK遮断剤 (抗癌剤) を開発して、国際特許を申請した。 その抗癌作用は何んと「Bio 30」の千倍近い。つまり、アスピリンの10万倍の活性を示す。 目下、この新規誘導体(アゾエステルの一種)を(将来)市場に送り出すための魅力的な「商標」を思案中である。 「アゾエステリン K」 という名はいかがだろうか?   「登録商標リスト」には前代未聞の名称である。

2016年2月10日水曜日

(専売) 特許の世界史

(専売) 特許制度が(高峰譲吉などの努力によって) 日本で初めて施行されたのは、明治18年 (1885年) のことであるが、この特許制度は元来、ユニークな発明や新案を奨励し、「猿真似」(今世紀の流行語では「コピペ」) を禁止する制度であるが、日本では江戸時代に、逆に「猿真似」を奨励、「発明」を禁止する法律があったのは、いささか驚きである。1721年(享保6年)鎖国時代の日本では、八代将軍吉宗が享保(きょうほう)の改革を行い、「新規御法度」(しんきごはっと)というおふれを定め、お菓子、おもちゃ、着物などの新しい工夫が禁止された。我々現代人からみれば、正に「享保の改悪」である。私のうがった見方によれば、この御法度 (禁止令) は、主に火薬、鉄砲、大砲などの「飛び道具」(戦さに役立つ武器) の改良を (薩摩などの外様大名に) 禁止するためのものではなかろうか。豊臣秀吉による「刀狩り」に始まる、いわゆる「テロ行為禁止条例」の一環ではなかろうか。

さて、世界的にみれば、最古の専売特許令は、イタリアのヴェニス (ヴェネチア共和国) で1443年に、「発明者条例」として公布された。 当時、ルネッサンス文化の中心であり、商業貿易の世界的中心地であったヴェニスは、新しい発明を奨励していた。鎖国時代の日本とは全く正反対の状況にあった。 これより2世紀ほど遡って、1200 年代には、ヴェニスの商人であるマルコ=ポーロ(1254-1324) がシルクロード沿いに隊商をしたてて、はるか「中国 」(元朝廷) まで旅し、東洋の先進的文明 (例えば、火薬、製紙、陶磁器、漢方薬、ラーメンなど) を吸収して、帰国した。 更に、有名なルネッサンス時代の画家、レオナルド=ダヴィンチ (1452-1519)は、ヴェニスで手動式の空飛ぶグライダーや大砲やら様々な発明 (デザイン) をしたことが、彼が残した遺品 (スケッチブック) からうかがわれる。 もっとも、ダヴィンチが新案特許を申請したかどうかは定かでないが。

新案特許のラッシュは、18世紀後半の英国に初めて産業革命が勃発してからのことである。 ジェームス=ワットの蒸気機関 (1776年) やロバート=フルトンの蒸気船 (1807年) などは、典型的な新案特許の例である。 フルトンがダヴィンチ同様、元来は画家であったのは、大変面白い。 空想/想像力に長けていたにちがいない。

米国海軍ペリー総督の黒船 (大砲を積んだ蒸気船) に怯えた江戸幕府および明治政府は、欧米先進国にできるだけ早く追い付くために、いわゆる「享保の改悪」を廃止して、「専売特許令」を発布せざるをえなくなったわけである。 しかしながら、初期の日本の専売特許の大半は、欧米の英文特許の単なる「コペピ」(邦訳) が多かったのではなかろうか。勿論、高峰譲吉の「アドレナリン」や「タカジャスターゼ」に関する英文特許は、正真正銘の新案特許であるが。

1985年に特許庁により選ばれた「日本の5大発明家」(番号は特許番号):
豊田佐吉 (1891年)       木製人力織機           1195      
御木本幸吉 (1896年)    養殖真珠                  2670      
高峰譲吉 (1901年)        アドレナリン              4785    
池田菊苗 (1908年)       グルタミン酸ソーダ   14805 
鈴木梅太郎  (1911年)    ビタミンB1               20785 

2016年2月9日火曜日

高峰譲吉: 「特許制度」 を駆使した日本人初の科学的発明家 (三共や理研の創始者)

明治時代に米国へ渡って活躍した日本人の科学者で特に有名なのは、野口英世と高峰譲吉であるが、実際の科学的成果 (業績) は、高峰譲吉の方がずっと上であるが、日本ではどういうわけか (「修身の教科書」向けに)、野口英世の生涯がひどく美化されて、日本の紙幣 (千円札) にまで登場している。 そこで、後世に役立つ (「アドレナリン」や「タカジャスターゼ」など) 数々の地道な発見や発明をした高峰譲吉と、その研究を支えた妻キャロリンやその両親 (特に母親マリー=ヒッチ) を取り上げて、ここで紹介したい。 NHKの朝ドラ「マッサン」物語の言わば「科学者」版である。 「ニッカウイスキー」の代わりに製薬会社「三共」を創業する。

譲吉が 越中 (富山) の蘭学医者の家で生まれたのは、米国の黒船が初めて江戸に姿を現わした直後であった。応用化学が好きな譲吉は今の東大工学部の前身で勉強した後、英国のグラスゴー大学に留学し、欧米の最先端の科学技術を見聞してきた。 帰国後、農商務省に勤務し始めた。 その後、1884年に米国のニューオーリンズで、万国博覧会が開催された折、政府の代表として、博覧会に参加するため渡米した折、運命の出会いに恵まれる将来の妻になるキャロリンの両親 (ヒッチ家) が開催した晩餐会に招待された。そこで、特に先見の銘があった母親マリーの音頭で、譲吉(30) がキャロリン(18) と婚約

3年後に結婚する約束で、譲吉は日本に帰国するが、その時、欧米の「特許」制度を初めて日本に持ち帰り、"特許庁" の高官 (副官) に就任する。   1887年にニューオーリンズで結婚式を挙げ、新婚夫婦で日本に帰国し、深川「釜屋堀」(現在の江東区大島一丁目) に居を構える。ここで、渋沢栄一らの投資家と共に、まず「東京人造肥料KK」を創業する。人造肥料の生産のかたわら、日本酒醸造の改良にも乗り出す。その過程で、麦コウジの発酵能力の方が海外のイーストよりもずっと高いことを発見して、早速 (麦から元コウジを作る)「 特許」を申請する。この特許が間もなく譲吉の運命を一転させる。 間もなく、キャロリンが異国日本で、2人の息子 (ジョーとエーベン) を出産する。 1890年に米国の両親から、意外な手紙が届く。「麦のふすまから作る発酵素を使ってウイスキーを製造したい」というウイスキートラストが見つかり、特許ライセンス (使用権) の売買交渉を申し出てきたという。恐らく、社交家の母親マリーが譲吉夫婦のために、地元でひと肌脱いでくれたらしい。   

早速、譲吉親子4人は、日本醸造家の藤木幸助を同伴して、シカゴへ向かった。 シカゴ郊外「ピオリア」は全米一を誇るウイスキー製造会社が集まる団地として知られている。 ピオリア醸造界の大ボスで、「ウルナー醸造」の社長が高峰式元コウジ改良法の特許使用権を快く買い取った。 喜んだのは束の間、間もなく、譲吉に危機が到来 (醸造工場が不審火で全焼!)。しかしながら、譲吉は妻キャロリンの機転で、命拾い。再起して、4年後には、消化酵素「タカジャスターゼ」の本格的な製造を開始し、(日本国内での) 販売のため、1899年に製薬会社「三共」の前身である「三共商店」を創設 (初代社長)。1901年には副腎ホルモンである「アドレナリン」の抽出/結晶化にも成功して、薬学博士を取得する (「ジャスターゼ」開発の際も、工学博士を取得)。アドレナリン及びタカジャスターゼの(海外での) の専売権は、自分が大株主である米国の製薬会社「パーク=デービス」 に移譲*。1917年には、「理研」を創設1920に心臓病悪化のため静養、2年後に、68年に渡る (科学者かつ実業家としての) 波乱万丈な生涯を閉じる

なお、譲吉の死後、キャロリン (59) は夫が残した遺産 (現在の価値で六兆円以上) の一部で、アリゾナ州の砂漠に牧場を買い、チャーリー=ビーチというハンサムなカウボーイ (36) と再婚して、新しい人生を楽しむ。 驚くなかれ、チャーリーは次男エーベンの友人。キャロリンは結局、譲吉と30年、チャーリーと30年、それぞれ冒険に溢れる結婚生活を楽しみ、88歳で他界。

*数年前の経済不況後、世界中で銀行や製薬会社などの合併が続出、三共は第一製薬と吸収合併、「パーク=デービス」も米国の大手製薬会社「ファイザー」に吸収された。

2016年2月6日土曜日

チャールズ=ハギンス (1901ー1997)による 「前立腺癌のホルモン療法」

3人に1人という高率で癌は発生するが、その治療法を開発した研究者の中で、ノーベル受賞者は極めて少数(4名のみ)である。その少数者の中で、最初にノーベル受賞者になったのは、カナダ出身のアメリカ人外科医であるチャールズ=ハギンス教授である。 彼の専門は前立腺癌であった。1924年にハーバード大学で医学博士を取得した後まもなく、シカゴ大学の癌研究所で、外科手術の合間に、前立腺癌の増殖と性ホルモンの関係を研究し始めた。前立腺癌の増殖には、男性ホルモン(アンドロジェン)依存性のものと、そうでないものがあるが、前者の場合は、女性ホルモン(例えば、エストロジェンなど)によって、その増殖が抑えられることを発見した。

そこで、男性ホルモン依存性の前立腺癌の治療に、「女性ホルモン療法」を初めて提唱し、臨床テストを繰り返した結果、ある程度の成果を得た。外科医は一般に石頭で因習的であるが、彼は例外的に柔軟な頭脳の持ち主だった。そこで、彼の草分け的な研究に対して、1966年にノーベル賞が与えられた。 前立腺癌の外科手術は「不可逆的」であるが、ホルモン療法の場合は、癌の根絶後、男性ホルモン療法により「一時的な女性化」を元に戻すことができる利点がある。

ついでながら、前立腺癌のホルモン療法の改良には、日本の研究者も大いに貢献していることがわかった。「新薬に挑んだ日本人科学者たち」(塚崎朝子著、講談社ブルーバックス) によれば、視床下部ホルモン ("LHーRH" と呼ばれる10個のアミノ酸からなるペプチドホルモン)のアミノ酸配列を初めて決定したのは、東大薬学部出身で "アンドリュー=シャリー" の研究室でポスドク留学をしていた松尾寿之博士であり、アンドリュー=シャリーはその功績で1977年にノーベル賞をもらった。 更に、このLHーRHの変異体を「怪我の功名」で合成した武田薬品の藤野政彦博士は、この変異体(リュープロン)が意外にも性ホルモン依存性の前立腺癌の増殖を抑制することを発見した。こうして、米国のアボット社と武田薬品の合弁会社(TAP)から、1985年にリュープロンが前立腺癌の治療薬として、販売されるようになった。おかげで、精巣除去手術や「一時的な女性化」という副作用に悩まずに、前立腺癌の治療ができるようになった。

更に、興味深いことが 「リュープロン療法」についてわかった。炎症や血管新生が抑制されていることが長崎大学婦人科の研究グループによって、数年前に観察されていた (1)。 前述したが、 炎症および血管新生は、典型的なPAK依存性現象である。従って、「リュープロン療法」は何らかのメカニズムで、PAKを遮断している可能性がある。 「リュープロン療法」は乳癌にも効くはずである。エストロジェンなどの卵巣ホルモン機能も抑制するからである。ただし、(一時的にではあるが) "骨粗しょう症" を併発する可能性もある。

私のNIH時代のボス (コーン博士) の場合は、前立腺癌の治療に放射線療法を適用したと聞いている。今年88歳 (米寿) になるが、今でもなお元気にNIHの研究室で活躍している。私自身の場合は、癌には多分ならないと思うが、もし仮に癌になったら、どんな癌でも、迷わず 「プロポリス療法」を適用する積りである。人それぞれ、自分の好みに応じて、治療法を自由に選択ができるのは良いことである。 ハギンス博士の場合はとうとう癌にもならず、(妻に先立れた後もずっと) 96歳まで長寿を楽しんだと聞いている。

PAK遮断剤 「プロポリス」の普及に貢献した古代ギリシャの「ヒポクラテス」(医学の祖)もそうであるが、古今東西 「名医」といわれる人物たちは、「健康長寿の秘訣」を自らの柔軟な頭脳で捜し当てるようである。

参考文献:


Changes in tissue inflammation, angiogenesis and apoptosis in endometriosis, adenomyosis and uterine myoma after GnRH agonist therapy. Hum Reprod. 2010; 25(3): 642-53.

2016年2月5日金曜日

夢から生まれた新しいPAK遮断剤の発明!

昨夜、とても面白い夢を見た。  ある研究所で "未熟な" 赤血球 (胎児由来のF細胞) の増殖を促進する試薬を発見した。その試薬は、ある蛋白の酸素に対する親和性を高める薬理作用をもっていた。 赤血球中で酸素の輸送を担っているのは「ヘモグロビン」(Hb) と呼ばれる蛋白である。 このHbにある変異が起こると、酸素に対する親和性が著しく低下して 「鎌状赤血球症」 (SCA) という高山病に似た症状 (貧血) が発生する。 主に黒人に多い稀少難病である。

この遺伝病の治療法の一つに、「Hydroxyurea」(HU) 法 というのがある。 HUとは、尿素の一部がOHに置換された一種の塩基性アルコールである。 このアルコールを経口すると、かつて(出産前に) 胎内で発現していた特殊な Hb の発現が誘導される。 この"胎児型" Hbは、"成人型" Hbに比べて、酸素に対する親和性がずっと高い。 従って、HU経口によって、いわゆる 「若返り現象」 がおこり、SCA患者の血中で"胎児型" Hbが大量生産され、貧血状態が解消される。

恐らく、この試薬を100メートル競走の選手に投与すれば、9秒台でゴールインできる選手が続出するだろう。。。「ドーピング」スキャンダルの元にも、なりかねない試薬である。 しかし、良用すれば、人類全てにとって、「健康長寿」(若返り) の助けにもなろう。 発明とは所詮、「両刃の剣」である。

さて、夢から醒めて、HUを利用するある名案が浮かんだ。 強力なPAK遮断剤を開発する方法である。 既存の 天然PAK遮断剤には、カルボン酸をもった化合物が多い。水溶性であるが、細胞透過性が悪いから、癌などの治療には利用しにくい。 この欠点を解消するためには、このカルボン酸をアルコール類と結合させて、エステル化 (酸を中和) せねばならない。 しかしながら、中和すると、水に不溶になる。 そこで、相手のアルコール候補としては、水溶性で然も塩基性であることが望ましい。 夢に登場したHUは、その条件を十分に満足しうる分子量の小さな、然も安価な試薬 (東京化成:  5g  8000円) である。従って、工業的に十分成り立つ「新案特許」になりうるだろう。。。

なお、HUそのものは、主に白血病やエイズの経口治療薬 (daily dose: 10-70 mg/kg) として、臨床でかなり昔から使用されている。

2016年2月3日水曜日

米国大統領予備選挙に「旋風」を巻き起こす「サンダース上院議員」の横顔

本年11月の大統領選挙をめざして、共和党内でも民主党内でも、党からの指名を獲得するために、数名の候補が篠木を削り始めている。最初の予備選挙が行われた(やや保守的な)アイオワ州では、共和党候補中、上位3名が小差でリードを保っている。しかしながら、実質的には、「大統領選挙の本命」は民主党候補中にある。8年前の大統領戦挙で、オバマ候補に小差で敗れたヒラリー=クリントン (68) が、女性初の米国大統領をめざして、ごく最近まで、大きくリードしているかに見えた。 ところが、アイオワ州予備選挙のフタを開けてみると、実に意外な結果が出てきた。

少なくとも海外 (日本国内を含めて米国の外)では殆んど無名の候補、バーニー=サンダース上院議員(74)が本命クリントン候補にわずか0。2%差で肉迫していた。 この予備選挙で、クリントンは22名のデリゲート(代議員)、サンダースは21名のデリゲートを獲得した。次の予備選挙は一週間後に(進歩的な)ニューハンプシャー州で行われる。最近の世論調査では、逆にサンダース候補がクリントン候補を18%ほどリードしているそうである。 

(やや高齢ながら)明らかに進歩的なサンダース候補の主な票田は進歩的な若者たちにある。他方、やや保守的な(比較的若い)クリントン候補の主な票田は勿論、女性層にある。 「アイオワの勝者はニューハンプシャーでは勝てない」 という予備選挙にまつわるジンクスがある。 そこで、クリントン候補は今回、サンダース候補 と "ジンクス" を両方破るために死闘を展開するに違いない (しかし、今回も 「ジンクス」 は破れなかった!)。

さて、それでは、「ダークホース」 サンダース上院議員とは、一体どんな人物なのだろうか? 彼はユダヤ系のアメリカ人である。父親(エリー)はポーランドから亡命してきたユダヤ人である。ポーランドに残ったエリーの家族は全て、ナチスによる虐殺の犠牲になった。母親(ドロシー)はニューヨーク生まれのユダヤ系のアメリカ人である。従って、もし彼(バーニー)が大統領に当選したら、"米国初のユダヤ系大統領"となるだろう。半世紀以上昔、ジョン=ケネディーが当選して、初のカトリック教大統領になって以来の快挙となる。

さて、彼(バーニー)がニューヨークで生まれたのは、太平洋戦争が勃発する直前の1941年9月である。従って、バーニーは、私自身を含めた我々の世代に属する。1964年にシカゴ大学法学部を卒業。1968年にヴァーモント州に移住して以来、そこにずっと永住している。 ヴァーモント州は隣のニューハンプシャー州やメイン州と共に、進歩的なインテリが多く住む民主党の票田である。 しかし、バーニーが民主党に入党したのは、ごく最近(2015年)のことで、それまではいわゆる「無党派」の政治家として、地元で活躍していた。

二大政党による政治を嫌って、"少数派の味方" になる政治を常に心がけた。兄のラリーは英国に永住し、グリーン党の政治家として活躍している。バーニーは兄ラリーの感化を多く受け、兄から、政治問題に関する様々な進歩的思想を教わったといわれている。バーニーは基本的には「無宗教派」であるが、バーニーの奥さん(ジェーン)がカトリック教徒である関係上、ローマ法王フランシスによる「貧富の差を無くす活動」にも共鳴しているそうである。彼は自らを福祉国家をめざす「民主的な社会主義者」と考えているようである。彼は高校時代、陸上部で中距離ランナーとして活躍し、一マイル競走で全米(インターハイ)3位に入賞した経験を持つ、「健康な精神は健康な身体に宿る」という座右の銘を信じる、いわゆる「文武両道」を心がける一種の「サムライ」である。彼は、1981年から州内で最大の都市バーリントンの名市長を10年(3期)務めた後、アメリカには珍しく、無党派の下院議員を1990年から16年間に渡って務めてから、2006年以後、無党派の上院議員を70% 以上という圧倒的な支持率を受けながら、2期目を務めつつある。地元住民からの熱い人望に支えられた「草の根」運動のベテランであり、クリントンにとっては、明らかに "手強い相手" である。