人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2018年2月25日日曜日

人類の進化: ネアンデルタール人 (原人) が洞窟に描いた抽象画?

つい最近、米科学誌「サイエンス」上に、ネアンデルタール人が洞窟の壁に描いた漢字「月 」に似た梯子らしい図面 (乳牛と肉牛を区別する畜舎?) などが発表され、この原始類人 (原人) が抽象的概念を表現しうる能力があることが明らかになった (1)。 イベリア半島 (スペイン) で発見されたこれらの洞窟画や図面は、今から6万5千年以上昔のもので、"新人" (ホモ サピエンス=クロマニヨン人) がアフリカ大陸から欧州大陸に移住した時期 (今から4万5千前) よりも、少なくとも2万年以前のものである (1)。 従って、ネアンデルタール人 (タール原人) が言語を使用していた可能性が高くなった。

さて、日本人の祖先も (中国大陸から、初めて「紙と漢字」を輸入した) 4世紀後半の弥生時代までは、言語自身はあったが、それを具体的に書き記す手段がなかったようである。 従って、当時の日本本土に住んでいた「新人」(ホモ サピエンス、弥生民族) は、タール原人と、意志の疎通手段に関しては、それほど大きな違いはなかったようだ。 大きな違いは、タール原人は「石器」民族であったが、(朝鮮半島由来らしい) 弥生民族は既に「鉄器」を使用して、「銅器」文化の (日本土着の) 縄文民族を武力で平定していた。 つまり、弥生民族は、いわゆる「理系」民族だった。

私は若い頃、画家志望だった (文系)。後に 薬学部 (理系) に進学し、(副作用のない) 抗癌剤 (=PAK遮断剤) の開発をめざす「シグナル分子療法」研究者になり、過去45年近く、海外 ( 欧米や豪州) でがんばっている。 従って、素晴らしい絵を描くタール原人の古代石器文化に、秘かに憧れている。一説には、タール原人は「赤毛」だったといわれている。洞窟画が殆んど全部、「赤い絵の具 (塗料) 」で描かれていたのは、偶然の一致だろうか?

興味深いことには、遺伝子に関して、タール原人と新人との間には、99。7%の一致が証明されている。つまり、1000個の遺伝子の内、3個しか違いがない。 更に、新人と (絶滅前の) タール原人との間に、交配 (mating) がかなり頻繁に行なわれたという遺伝学的な証拠もある。つまり、我々現代人は、「タール原人 (文系) と新人(理系) との混血/雑種」の子孫である。 従って、ひょっとすると、人類の持つ絵描きの遺伝子の一部は、タール人由来かもしれない。

 タール原人は主に「狩猟民族」として知られているが、洞窟に描かれた図面 (2頭の牛を別々に囲む畜舎?) の解釈によっては、積極的に「酪農畜産」もしていた証拠にもなる! 図面の左上整然とした点々」は、畑か牧草地ならば、「農耕」の証明にもなる? 非常に興味深いことだが、タール原人が絶滅したと考えられている4-5万年前に、豪州大陸に移住して来た石器民族「アブオリジナル」 (黒色の原住民) の典型的な伝統絵画には、この"整然とした点々"が特徴的である。タール原人から受け継いだ伝統的文化の一端かもしれない。

言い換えれば、タール原人自身は大昔に絶滅したが、その遺伝子の一部は我々現代人の中で、今でも生き生きと機能している (生きている) と解釈して良いだろう。

 合金/雑種は、純金属や純種よりもずっと優れている! 新人との混血に関わった旧人類はタール人だけではなかった。近年発見されたデニソワ人(シベリアの洞窟で見つかった4万年ほど前の謎めいた指の骨から回収されたDNAによって特定された人類集団)も、我々の祖先との間に混血があった。名作「大地」の著者、パール=バック女史 (1937年受賞の米国ノーベル文学作家) は、前半世紀を中国大陸でそごし、「多民族文化 (multi-culturalism) の母」として知られているが、(飛行機の機材に使用されている) 「ジュラルミン」という軽合金 (アルミニウムを主体とする銅、マンガン、マグネシウムとの合金) を例にとり、「合金/雑種は純金属/純種よりも遥かに優れている」事実を強調した。 同様に旧人類との混血は、新人の生存に有益に働いた (おかげで、新人は生存競争に有利に働くいくかの遺伝子を獲得できた)。例えば、タール人から受け継いだDNA (恐らく、NF2遺伝子などの抗癌遺伝子) は免疫力を高め、更に、デニソワ人由来のある遺伝子変異は、チベット人が酸素の希薄な高地で生活するのを助けている。

 注: 1856年、英国の進化論者チャ-ルズ=ダーウインが「種の起源」と題する歴史的な本を出版する数年前に、ドイツ北部、デュッセルドルフ近郊を流れる川の流域にある渓谷 (タール) の洞窟の奥で、一体の人類由来らしい風化した骨を、近くに住むネアンデル牧師が見つけた。以来、警察や考古学者の手によって、この人骨のDNA分析がなされ、その結果、その古い人骨は現代人ではなく、数万年昔の、ホモ=サピエンス (新人) とは多少違うある種の「原人」のものであることがわかった。 そこで、この原人は「ネアンデルタール人」(略称、タール人) と呼ばれるようになった。その後、この人骨と同じようなDNA配列を持つ 古い人骨が、ユーラシア大陸 ( ヨーロッパや極東) 、更に北米大陸などの洞窟内で発見されるようになった。しかしながら、アフリカ大陸 (サハラ砂漠以南) や豪州大陸では、タール人の骨は未だ発掘されていない。4-5万年前、アフリカ起源のクロマニヨン人がヨーロッパ方面に移動し始めた頃、タール人とクロマニヨン人との間に (異種ではなく異民族) 交配が頻繁に行なわれる一方で、タール人自身は、なぜか「絶滅」の運命にさらされた。 

 豪州の原住民 (aboriginal) は、230年前に始まる白人 (主に英国人) による移住と侵略により、原住民の人口は激減したが、「絶滅」は辛うじて避けることができた。 同様の現象が、北米大陸、南米大陸でも、更に、(太古の) 日本列島の原住民 (琉球、クマソ、アイヌなどの縄文人) にも起こった。しかしながら、欧州や中東でタール人が「絶滅」した理由は、未だに大きな「謎」である。 

 チンパンジーやオランウータン等の類人猿が絶滅せずに未だに生き残っているのにも拘わらず、文化水準の遥かに高いと思われるタール人が絶滅したのは、甚だ理解に苦しむ。。。クロマニヨン人と「共通の生活圏」を争ったからだろうか?  つまり、(お互いの) 利害が余りにも一致 (拮抗) し過ぎたためだろうか。ユーゴスラビア、シリア、アフガニスタンなどの「市民戦争」(異民族間の殺し合い) を眺めていると、そんな気がしてならない。 「寛容の精神」が欠如し過ぎている!  (我々の世代が未だ少年時代を過ごしていた) 敗戦直後の日本を思い起こすと、限られた食料や生活必需品などを皆んなで互いに「分かち合う精神」があったような気がする。。。それがあれば、「絶滅」は必ず避けることが出来た筈である!

現代人のY染色体には、タール人由来の遺伝子が見つからない!  最近、タール人の染色体Yに関して、大変奇妙なことが発見された。人類の染色体は23対あるが、その内で、"性染色体" と呼ばれる対は、女性はXX で、男性はXYの組み合わせになっている。ところが、現代人類の性染色体の内、Y染色体にだけ、タール人由来の遺伝子が未だ発見されていない。 X 染色体を含めて、他の染色体には、タール人由来の遺伝子が3-4% 残存している。 この事実は、タール人の男性 (XY) と新人の女性 (XX) が交配した場合、生まれくる混血の大部分は、娘(XX) で、(何故か) 息子 (XY) は殆んど生き残らなかった可能性を示唆している。その原因は人為的な「間引き」の結果なのか、それとも「タール人由来のY染色体は、新人のX染色体と対を成しえない」避けがたい遺伝学上の理由があるのだろうか?  謎は深かまる!

References: 

1, Hoffmann DL1, Standish CD2, García-Diez M3, Pettitt PB4, Milton JA5, Zilhão J6,7,8, Alcolea-González JJ9, Cantalejo-Duarte P10, Collado H11, de Balbín R9, Lorblanchet M12, Ramos-Muñoz J13, Weniger GC14,15, Pike AWG16. U-Th dating of carbonate crusts reveals Neandertal origin of Iberian cave art. Science. 2018; 359: 912-915.
 

 

2018年2月14日水曜日

Valentine Day: 有名「国立大学」入試向け英語の出題例

本日は "バレンタイン=デー"。欧米の習慣によれば、恋人宛てに、熱い愛の囁き (メッセージ) をカードにたくして送る日。そこで、この日に因んで、間もなく迫る国立大学入試向けの (しゃれた) 英語の出題例 (記述問題) を受験生諸君へ送ろう。


出題問題:  恋人から、Valentine Card に添えて、"I  LOVE YOU" というメッセージをもらった。 この恋人に、返信すべき英語 を、"Two Words" で、記述せよ!

ヒント:  目下、欧米では、過去に上司から「セクハラ」などを受けた被害者(主に女性たち) が、こぞって「       」運動を始めた。その結果、(トランプ大統領を除く) 有名な映画監督や社長や政治家などが失脚し始めた。 この 「     」 に入るTwo Words が正解である。 

 実は、この英語の出題の裏には、現在の受験生たちが生まれたばかりの時代 (沖縄G7サミットの直前) に発生したある面白い政治的エピソード (傑作) がある:

このエピソードを境にして、(世論の「支持率最低記録」を背景に) 森首相は退陣を余儀なくされた!