人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
For detail, click the above image.

2010年4月23日金曜日

「健康長寿への方程式」

CAPEなど数種の天然抗癌物質が、抗癌キナーゼ「AMPK」の活性化と
発癌キ ナーゼ「PAK1」の抑制を同時に行なうという不思議な現象がある。
その謎の 一部が、最近解けた!


発癌キナーゼ「PAK1」がヒトの癌の7割以上に関与していることは、たびたび
前述した。更に、この「PAK1」を遮断しうる数種の天然物が、食品や生薬や
健康ケアサプルなどとして、市場に出ていることも前述した。プロポリス中の
CAPE(カフェイン酸フェネチルエステル)、インドカレーの辛味「クルクミン」、
チリ胡椒の辛味「カプサイシン」(辛くない誘導体「カプシエート」)、
赤ブドウ中の「レスベラトロール」、漢方薬「黄連」の苦味成分「ベルベリン」、
駆虫剤「イベルメクチン」などがその例である。従って、将来、これらの天然物
が癌の治療に広く使用されることが大いに期待されている。従来のいわゆる
「ケモ」(化学療法剤)と違って、副作用(脱毛、免疫機能の低下、消化不良など)
がほとんど無いからだ。そして、極めて安価でもある!  

さて、最近気づいたことであるが、上記の「PAK1」遮断物質は皆、抗癌キナーゼ
として知られている「AMPK」を活性化しうる機能を持つ。面白いことには
「AMPK」は抗癌作用ばかりではなく、脂肪の燃焼(肥満の解消)、血糖値の
低下(タイプ2糖尿病の治療)、更に健康長寿にも重要な寄与をしていることも
知られている。この養命キナーゼ(AMPK)は、もう1つの抗癌キナーゼ
「LKB1」により、直接燐酸化され、活性化を受ける。そこで、私は最近試みに、
次のような「健康への薬理学的な方程式」を立ててみた。

LKB1活性剤=AMPK活性剤=PAK1遮断剤=健康長寿 

さて、2010年の4月になって、京大医学部薬理学の武藤 誠 教授のグループ
によって、AMPKを活性化する抗癌性のキナーゼ「LKB1」がPAK1のスレオニン
残基109(RACやCDC42が結合する部位) を直接燐酸化することにより、
PAK1を遮断することが解明された。ただし、逆に、PAK1が「LKB1」あるいは
AMPKを遮断するかどうかについては、まだ吟味されていない。ともあれ、
こうして、AMPKの活性化とPAK1の遮断が「LKB1」を介して同時に起こること、
つまり、前述した「健康長寿への方程式」(AMPK活性剤=PAK1遮断剤)の
少なくとも一部が、分子レベルで、はっきり実証されたわけである。

言いかえれば、上記の天然物以外にAMPK活性剤として既知の沖縄特産
「ゴーヤ」、チベットの高山などに生える岩弁慶の根茎エキス(漢方薬「紅景天」で
「サリドロサイド」と呼ばれる糖質が主成分)、糖尿病の特効薬「メトフォルミン」
(フレンチ・ライラック由来の天然物の誘導体)なども、新たに「PAK1遮断剤」の
仲間入りができたわけである。沖縄やチベットの住民たち、あるいはタイプ2糖尿病
患者などの「健康長寿への秘訣」の1つである。

健康長寿をもたらす「PAK1遮断剤」あるいは「AMPK活性剤」は、
GFPでラベルされた「ムシ」で、敏速かつ安価に同定できる!


何千何万という無数の検体の中から、毒性(副作用)のない抗癌剤を、ヒト由来
の癌細胞を移植されたヌードマウスで、一々スクリーニングする従来の遣り方は、
莫大な時間と経費がかかる。研究費や人手(主に院生)に乏しい「零細」の大学
の研究室では、ほとんど不可能に近い。そこで、私は最近、ある「ムシ」の助け
を借りる名案(エレガントなアイディア)を思いついて、実践してみた。「ムシ」
の名は、C。elegans。成虫でも全長たかだか1ミリ、微小な線虫である。
今世紀に入って、この「ムシ」の研究でノーベル賞をもらった学者が続出して
いるのは、若い人々にも大きな魅力(励み)の1つとなろう。さて、このムシは
身体全体が透明なので、例えば、クラゲ由来の蛍光蛋白「GFP」を発現すると、
ブルーライトの下で緑色に怪しく輝く(勿論、蛍光顕微鏡下でしか、ハッキリ見
えない!)。

さて、「ムシ」の餌は大腸菌だから、飼育代(研究経費)は無に等しい。このムシに、
ある特殊な遺伝子を挿入した聡明な学者(CL)がいる。 「GFP」遺伝子(cDNA)を
「HSP16 」(熱ショック蛋白の一種)と呼ばれる遺伝子のプロモーター部位に
連結したいわゆるレポーター遺伝子である。 この「ムシ」(「CL2070」
という名の株)に熱ショック(35度、2時間)を加えると、ゆっくり「HSP16 」
プローモーターが活性化され、ムシが次第に緑色の蛍光を発し始める。
20時間後には、蛍光が最高頂に達する。しかしながら、熱ショック直後(例えば、
4時間後)では、蛍光は微々たるものである。その理由は、例の発癌キナーゼ
「PAK1」が「HSP16 」プローモーターの機能を抑えているからである。
もう1つの理由は、例の養命キナーゼ「AMPK」が微弱なため、「FOXO」と呼ばれる
転写蛋白が十分に機能できないからだ。 ところが、前述したプロポリス中の抗癌物質
「CAPE」などで、この「ムシ」を一晩だけ処理した後、熱ショックをかけると、
ショック後間もなく、「ムシ」全体が緑色にまぶしく輝くようになる。勿論、
CAPEには毒性が全くないので、「ムシ」はハッピーそのものである (それどこ
ろか、「健康長寿」を満喫している!)。 従って、ある検体で一晩処理して、翌
朝「ムシ」全体が緑色にまぶしく輝いていれば、この検体は、前述した「方程式」
によれば、AMPK活性剤=PAK1遮断剤 (健康長寿をもたらす抗癌剤)である
はずである。

この「ムシ」による抗癌剤スクリーニングは、蛍光リーダー(測定器)を挿入すれ
ば定量もでき、更に「オートメ化」も可能だから、何千何万の検体から最強の物
質を、たった一晩でスクリーニング(選別)できるような「革命的な時代」が、
近い将来きっと訪れるだろう。

「HSP16」遺伝子が活性化されると、熱ショック蛋白 (シャペロンの一種)
が大量に生産されるため、細胞内の蛋白の熱による変性を防止する。従って、
「ムシ」も人間も「夏バテ」しにくくなり、益々悪化しつつある「地球の温暖化
現象」にも耐え、生き残ることができるようになる! 

続く

2010年4月19日月曜日

大黄根の抗癌主成分「エモディン」は「PAK」遮断剤

2005年に我々が花椒エキスの「PAK」遮断作用を見つけた丁度同じ時期に、
シンガポールでは、もう1つの天然物が「PAK」を遮断することを発見!

大黄根の抗癌主成分「エモディン」

大黄 (Da Huang) 根エキスに含まれる「エモディン」と呼ばれるアンスラキノン
誘導体が、種々の癌細胞の増殖を抑えることが、ほぼ確立されたのは、1990
代後半である。例えば、米国テキサス州のヒューストンにあるMDアンダーソン
癌研のハン・ミエンチー教授(台湾出身)の研究グループは、ヒト由来の乳癌を
移植されたマウスを、「エモディン」(40 mg/kg、腹腔注射、週2回)で処理
すると、癌の増殖が有意に抑えられる(特に、タキソールと併用すると、相乗作
用がある)ことを1999年に実証している。この投与量は、癌患者(体重50
キロ前後) に換算すると、毎日800 mg 前後となる。面白いことには、RAS
癌の一種であるスイゾウ癌や、皮膚癌「メラノーマ」、脳腫瘍の一種「グリオー
マ」など、一連の「PAK」依存性の癌にも効くことが、次第にわかってきた。
しかしながら、この時点では、エモディンの主要な標的は、チロシン・キナーゼ
の一種「ErbB2」であると信じられていた。

ところが、2005年になって、シンガポール国立大学医学部の翁 (Ong)チュー
ンナム教授の研究室は、「エモディン」が細胞移動を抑制するメカニズムを解明
している内に、この抗癌物質がキナーゼ「PAK」とG蛋白 (RAC やCDC4
2) の結合を抑えることによって、このキナーゼの活性化を遮断していることを
発見した。この細胞移動は「癌の転移」に必須なものである。「PAK」は癌の
転移ばかりではなく、癌細胞の分裂や固形癌の増殖に必須な血管新生にも必要
不可欠である。実際、「エモディン」は、癌細胞の分裂を直接阻害するばかりでは
なく、血管新生も抑えることがわかっている。そればかりではない。「PAK」が
深く関与している炎症を抑える作用もある。更に、(細胞による糖の吸収を活性化
することよって)血糖値を下げる機能もあり、インスリン治療が効かない糖尿病
(タイプ2)の治療にも有効のようだ。さて、まだ細胞レベルの話(ハンブルグ郊外
にあるマックス・プランク研究所のエックハルト・マンデルコフ教授のグループ
による2005年の研究結果)だが、「エモディン」がアルツハイマー病に伴う
いわゆる「老人斑」の形成(特に、タウ蛋白の凝集)を抑えるという報告もある。
上記の諸機能(薬効)は、PAK遮断剤が発揮する典型的な「指紋」機能といわれ、
新しいPAK遮断剤の同定、スクリーニングに極めて有効な指標として、「PAK」
専門家の間で、最近広く使用されるようになった。

大黄根(末)は漢方として古来から、主に「緩下剤」として使用されてきたが、
この薬効は「センノサイド」代謝産物の作用によるもので、「エモディン」自身
の作用ではない。今後将来「エモディン」の作用に基づき、大黄根が(NFを
含めて) 上記の様々な難病の治療にも広く使用されることが期待される。

2010年4月7日水曜日

NF患者「Denise Terrill 嬢」 (32) の死を悼むと共に、彼女の闘病が
原動力 となった「NF研究補助基金キャンペーン」に深く感謝する!

http://www.deniseterrillclassics.com/DTC/Denise.html

米国 Texas 州 Dallas 近郊にあるPlano という町で、NF2のため全身麻痺、
12年間 (寝たきりの) 闘病生活を続けながら、NF研究補助基金 (Denise Terrill
Classic Charity, DTCC) キャンペーンの原動力として活躍していたデニス・
テリル嬢 (32) が昨年の夏、その長い「務め」を終わり (NF特効薬の開発に
糸口を見い出し)、ようやく神に召されて、既に天国に逝かれたことを、最近ある
英文ネット欄 (上記) で偶然知った。そこで、彼女の涙ぐましい崇高な努力を讃
えて、この英文ネット欄を日本のNF患者向けに、多少解説を交えて、以下のご
とく邦訳 (意訳) した。

                  
デニス嬢は、ダラス近郊のプラノで、皮膚科の町医者(GP)をやっているBob
Terrill 医師とその奥さん Minerva (看護婦) の次女として、1976年10月
11日に生まれた。4歳の頃、彼女が稀少難病「NF」(神経線維腫症)にかかっ
ていることが診断された。もっとも、彼女のNFは「遺伝性」ではなく「弧発性」
だった(両親にも2人の兄姉にもNF症状は全くなかった)。その報は、彼女自
身ばかりではなく、家族全体に大きなショックを与えた。にもかかわらず、少な
くとも彼女の幼年時代は、比較的平穏に過ぎていった。ピアノやダンスのレッス
ン、乗馬などを楽しんだ。やがて、彼女は小学校で、水泳のスター選手として活
躍し始めた。しかしながら、10歳頃から、NF2腫瘍(Schwannoma)が脊髄に
発生したため、最初の手術を受け始め、水泳のレースに支障をきたし始めた。そ
の後10年間の長きにわたり、脳や脊髄に引き続き発生する腫瘍の摘出のため、
合計13回にわたる主要な外科手術を受けねばならなかった。その度に、彼女の
手足の機能が一部麻痺し、強い闘魂と「リハビリ」を通して、それを克服していっ
た。

しかしながら、13歳の頃、腫瘍の術後、両耳の聴力を完全に失ってしまった。
彼女は間もなく、母親と一緒に、手話をマスターして、普通の中学と高校を手話
通訳の助けを借りて、それぞれ卒業した。高校の卒業式の直前、彼女はまた一連
の手術を受け、車椅子でしか歩けない状態になった。しかし、彼女は校長から、
晴れの卒業証書を自分の手で受け取るために、講堂の演壇を自分の足で歩けるよ
う猛訓練を重ね、見事にそれを果たして、同級生や教師たちから満場の喝采を浴
びた! 

20歳の頃 (1997年に)、とうとう彼女の脳や脊髄の腫瘍が急激に悪化し、
最後の手術を受けた後、頭から爪先まで全身が麻痺してしまい、以後12年間、
自宅で(大学病院の看護婦を辞めた母親を交えて、3ー4人の交代で24時間つ
きっきりの看護の下)「寝たきり」の闘病生活をおくることになった。勿論、自
分で呼吸や食事ができないので、呼吸器や流動食用のチューブの助けを借りて、
強い精神力で生きながらえ続けた。この12年間、彼女の外界との会話は、手話
をする母親や看護士と彼女自身のわずかに見える片目の眼球を(イエスかノーの
合図をするため)左右に移動することによってのみ可能だった。にもかかわらず、
彼女は決して苦情も言わず、挫折もせず、両親や家族の愛情や献身に応え続けた。
その姿は、同じプラノ出身で精巣癌を奇跡的に克服後、自転車耐久レース「Tour
de France」 で7連覇を果した、かの有名な Lans Armstrong 選手ばかりではな
く、多くのNF/癌患者たちを感動せしめ、勇気づけた。

この彼女の感動的な闘病精神 (いわゆる「テキサス魂」)が、テリル夫妻を中心に
して、10年ほど前に始められた「デニス・テリル NF研究基金募集」活動の原
動力になった。それまで、NFの治療には、外科手術かガーマーナイフのような
放射線療法しかなかった (これらの「物療」は多くの場合、修復しがたい「後遺
症」を残す!)。NFに効く治療薬がまだ開発、市販されていなかったからだ。そ
こで、安全なNF治療薬の開発研究を助成するために、年間約千万円近い寄付金
を、ダラス近郊でテニス大会やゴルフ大会を毎年開催することによって集め、(稀
少難病「NF」の研究に専念するがために) 癌関係の研究費に恵まれ難いグルー
プを助成する慈善事業が始ったわけだ。

2004年から2005年まで2年間にわたって、豪州にある我々の研究グルー
プもこの恩恵に浴し、最終的には、今日最初のNF特効薬として安価に市販され
ている「Bio 30」(ニュージーランド産プロポリス・エキス) の開発を生
み出すことになる。更に、翌年には、地元テキサス州にあるMAアンダーソン癌
研の Razelle Kurzrock 博士の研究グループによる「クルクミンのリポソーム抱
合」という新しい方法で、インドカレーの辛味成分「クルクミン」をNF特効薬
として開発する研究が、このDTCC基金の対象になった。現在、この治療法の
臨床テストが米国で進められていると聞いている。従って、デニス嬢の12年間
にわたる闘病生活は、NF特効薬の開発研究に多大な貢献を成し遂げたことにな
る (注)。

2009年6月6日、デニス嬢はようやく神に召され、安らかに天国に昇天した。
テリル夫妻や兄姉にとっては、それは深い悲しみではあったろうが、ある意味で
安堵でもあった、と私は信ずる。天からデニス嬢に与えられた特別な使命(NF
特効薬の開発研究への寄与)が生前、確かに果たされたからだ。ここに改めて、
彼女の冥福を心から祈る共に、彼女やその家族によるNF界への貢献に、NF患
者の皆様と共に深く感謝したい。

注: プロポリスもクルクミンも、NF腫瘍や固形癌の大半の増殖や転移を抑え
る作用があるため、最終的には、これらの天然物はNFばかりではなく、癌の治
療薬としても、将来利用しうる。 http://www.bio30.com

追記:

実は、上記のNF特効薬の開発研究には、もう一人(若くして最近他界した)NF2患者
(少年 Louis)の家族による絶ゆまぬ努力が大きく貢献している。豪州シドニーに
住むルイス(当時 9歳)の母親 Rosemary Lee から 2002年の8月初旬、
突然私宛てにメールが届いた。ルイスが、脳内に増殖しつつあるNF2腫瘍
(Meningioma)のために、失明しそうなので、緊急にNF2腫瘍に効く薬を開発
してくれ、という極めて切羽つまった要望だった。ところが、当時、NF2の
原因遺伝子は既に同定されていたが、その遺伝子産物(「Merlin」と呼ばれる
抗癌蛋白)の機能がはっきりわかっていなかった。 もっとも、「メルリン」がどうやら
発癌性キナーゼ(蛋白燐酸化酵素の一種)「PAK」を遮断しているのでは
ないか、という間接的な推測は、私の研究室でついていたが、その確証がまだ
取れていなかった。

そこで、急きょ、それを実証する実験を開始した。その結果、予想通り、メルリンが
「PAK」を直接阻害する蛋白であることが判明した。実は、その発見がきっかけで、
例の「DTCC」NF研究助成基金 (2年間分) を、テリル夫妻から提供された。
次に、市販されている安価で安全な天然物の中から、「PAK」を選択的に遮断する
物を同定、NFの特効薬として開発する研究を開始した。まず、中国四川省特産の
「花椒」(山椒の親戚)のエキスが「PAK」を遮断することを発見した。更に、ドイツの
ハンブルグ大学病院 (UKE、欧州におけるNF研究の「メッカ」)との共同研究で、
前述の「Bio 30」が花椒エキスより強力な「PAK」遮断作用をもち、実際に
動物実験で、NF腫瘍の増殖を強く抑えることを確認するのに成功した。

惜しむらくは、2009年9月に (家族全体で、米国のボストン郊外に引っ越して
間もなく)、ルイス少年(16歳)は丸でデニス嬢の跡を追うかのごとく、突然の
心臓発作で、永眠についた。せっかく、彼のために「Bio 30」を用意 (開発 )
したにもかかわらず、彼自身はその恩恵に余り浴することなく、この世を去って
しまったのは、とりわけ母親のローズマリー (もともとは、医学とは縁のない
主婦だったにもかかわらず、ネットを介する独学でNF2に関する研究について
精通し、我々の研究室ばかりではなく、全米のNFや癌の専門家に向かって、
「クルクミン」などをNF2特効薬として開発するよう強く訴え続けたエネルギッシュな
女性)にとっては、さぞかし口惜しいことだったろう。ここに併せて、(日本語が
堪能だった) ルイス少年の冥福も心から祈る。。。

2010年3月30日火曜日

小説「ホシ(犯人)の指紋を洗い出せ!」
(Looking for the Finger Print)
ヴィクトル・ドイル (Victor Doyle)著

前書き

名作「レ・ミゼラブル」(ああ、無情)で世界的に知られているフランスの文豪
ヴィクトル・ユーゴー(1802ー1885)と「シャーロック・ホームズの冒
険」で有名な英国の探偵小説家コナン・ドイル(1859ー1930)が、もし
仮に、21世紀の今日、もう一度どこかで再会できるというチャンスがあったと
すれば、1831年出版の名作「ノートルダムのせむし男」(The Hunchback of
Notre Dame =Notre-Dame de Paris)の筋は、恐らく随分違ったものになったろう。

この小説は1923年以来、何度も映画化されたが、まだ観たり読んだりしたこ
とのない方々のために、この原作の筋書きを、まず簡単に紹介しよう。

ノートルダム大聖堂の前に、一人の醜い赤ん坊が捨てられていた。彼は大聖堂の
副司教、フロロ(Frollo)に拾われ、カジモド(Quasimodo)という名をもらう。
彼は成長し、ノートルダムの鐘つきとなる。

パリにやって来た美しいジプシーの踊り子エスメラルダ(Esmeralda)に、聖職者
であるフロロは心を奪われる。欲情に悩み、ついにはカジモドを使ってエスメラ
ルダを誘拐しようとする。

しかしカジモドは捕らえられ、エスメラルダは衛兵フェビュス(Phoebus)に恋す
るようになる。フェビュスとエスメラルダの仲は深まるが、実はフェビュスは婚
約者がいる不実な男だった。

捕らえられたカジモドは広場でさらし者になるが、ただ一人エスメラルダだけは
彼をかばう。カジモドは人間の優しさを生まれて初めて知り、彼女に恋をする。
フロロも彼女に想いを募らせるが、エスメラルダの心はフェビュスにある。フロ
ロは逢引をするふたりをつけて行き、フェビュスを刺して逃げる。エスメラルダ
は犯人にされ、魔女裁判の元に死刑が言い渡される。

カジモドはエスメラルダを救いノートルダム大聖堂にかくまう。しかし、エスメ
ラルダはカジモドのあまりの醜さにまともに顔を見ることすらできなかった。

フロロはパリの暴動の矛先をノートルダム大聖堂に向けさせ、混乱の中エスメラ
ルダを連れ出す。しかし彼女はフェビュスを刺したフロロを拒む。フロロは彼女
を衛兵に引き渡し、エスメラルダは兵士達に捕まり、処刑される。

大聖堂の塔の上からそれを見届けるフロロを、カジモドは塔から突き落として殺
す。

数年後、処刑場を掘り起こすと、白い服装をしていた女性エスメラルダと思われ
る白骨に、異様な骨格の男の白骨が寄り添っており、それらを引き離そうとする
と、砕けて粉になってしまった。


実は、主人公「カジモド」は乳児の時分から一生、稀少難病「NF」(神経線維腫症タイプ1、
NF1) の重症患者として苦しんだ。NF1患者 (特に、子供) の骨はビタミンD3欠乏の
ため、非常にもろく、乱暴に扱うと、砕けて粉になってしまう。観察力の鋭い
若き文豪ユーゴーは、この難病がNFであることが、ドイツの医師(病理学者)
フリードリッヒ・フォン・レックリングハウゼン博士(1833ー1910)によって
1882年に初めて発見されるずっと数十年前に、NF患者を小説の主人公にした
最初の作家である。彼の深い洞察と先見の明に痛く感服する。

http://www.bmj.com/cgi/pdf_extract/291/6511/1801

更に興味深いことに、一説には文豪(ユーゴー)自身が軽症ながらNF1患者であっ
た可能性があるそうである。ともあれ、貧民「ジャン・バルジャン」(「ああ、無情」の
主人公)の味方だったユーゴーが、稀少難病「NF」の患者の味方でもあったことは、
確かである。

さて、今世紀の初頭、NFという腫瘍を伴う遺伝子病の病因が解明されている。
ある発癌性のキナーゼ ( 酵素の一種) が異常に活性化することが病因である。
更に、そのキナーゼを特異的に遮断しうる作用を持つ天然産物が幾つか、最近
知られている。その内の一つは、ボヘミア地方など中欧からやってきたジプシーなら
誰でも良く知っている古来の秘薬である。不思議にも、ジプシーを含めて養蜂に
たずさわる人々の間には、NF患者や癌患者がほとんどいない。従って、もし、
この物語 (事件) が中世時代ではなく、21世紀を舞台に展開したならば、
エスメラルダは恩人であるせむし男「カジモド」の醜い顔や背中のこぶ(良性腫瘍)
を、この秘薬の力で癒してやることができたに違いない。。。

以下の小説は、ユーゴー家とドイル家の子孫の一人、ヴィクトル・ドイル、が
21世紀になって書き直した、せむし男とジプシーの踊り子のロマンスである。
この小説の圧巻(見どころ)は、名探偵ホームズの助手だった「ワトソン医師」の
孫に当たる人物が大いに活躍するところにある。 まず、犯人(病因)の正体を
特定する捜査に焦点を合わせた。。。

2010年3月15日月曜日

選択枝は唯一、日本国内にある米軍基地は
全部、グアム島 (米国領土) に移転すべき!

沖縄を始め日本列島内の何ヶ所かに、今なお米軍基地が何故か存続している。。。

終戦後の米国駐留軍による日本占領は、1950年頃に勃発した朝鮮動乱を境に
して、表向きには終了したが、南北朝鮮の戦い(実質的には、「北鮮」を後押し
する中国と、「南鮮」=韓国を後押しする米国との戦い)のため、日本は日米安
全保障条約(通称、安保)に基づいて、日本国内の各地に米軍基地を存続させて、
米軍の空輸を援助してきた。さて、朝鮮動乱は3年後に(38度線を境にして)
休戦となり、以後半世紀以上、終戦なき「休戦状態」が続いている。その後、実
際の米中戦火は、朝鮮半島からインドシナ半島に移り、南北ベトナムの領有を巡っ
て、北ベトナムのベトコンをバックアップする中国と南ベトナムをバックアップ
する米国の間で、8年間にわたる泥沼戦争が繰り広げられた。日本は「安保」に
基づいて米軍のために、日本国内に空軍基地を提供し続けた。そのベトナム戦争
も(1972年の米中国交回復に基づき)1973年にようやく終戦を迎えた。
ベトコンがベトナム全域の占領に成功してしまったからだ(実質的には、米国が
敗戦したと言える!)。

その後も米国とソ連/中国(共産主義国)との間に、いわゆる「冷戦」が続き、
その冷戦の狭間にある日本は、安保に基づき、極東における共産主義による侵略
を守る防波堤としての役割を果たすため、米軍に基地を提供し続けた。さて、ソ
連(ソビエト連邦)は、泥沼の第一次アフガン戦争で消耗し、ついに1991年
になって崩壊して、(米中間の戦争ばかりではなく)米ソ間の冷戦もようやく終
わった。本来ならば、(いわゆる「仮想敵国」のなくなった)この時点で、日米
間の「安保」は破棄され、日本国内の米軍基地は全部、グアム島など太平洋上に
ある米国領土内に移転(返還)されるべきものだった。ところが、「安保」は依
然として存続し、日本国内の米軍基地もそのまま継続しつつある。なぜだろうか?

北朝鮮(北鮮)のからの脅威(軍事的侵略)から日本を防衛するためだろうか?
 もし、そうだとすると、(天然資源に乏しく、朝鮮語が全く通じない)ちっぽ
けな日本列島を占領することによって、北鮮は一体どんな利益を得ることができ
るのだろうか? 日本人労働者を奴隷同様に使って、強制的に自動車や電化製品
(あるいは戦争兵器や麻薬)などを量産して、世界中に輸出(あるいは密輸)し、
外貨を荒稼ぎするつもりなのだろうか? 

もし、そうだとすると、朝鮮 (ハングル) 語を全員が喋る直ぐ隣の(38度線以南
にある) 韓国をまず占領したほうが、ずっと容易で便利のように見える。しかし
ながら、もし仮に、北鮮が再び韓国へ侵略した場合、(世界の「経済大国」となっ
た) 中国は、多分バックアップをしないだろう (中国製品の最大輸入「顧客」で
ある米国と敵対はできるだけ避けたいからだ) 。その結果、ずっと経済力のある
韓国の方が、最終的には戦争に勝ち、北鮮の独裁政権はついに滅亡し、念願の
「朝鮮統一」がめでたく実現されるだろう。朝鮮半島の人民 (一般大衆) にとっ
ては、(大きな人的犠牲は払っても) その方がずっとハッピーなことである。

とすると、北鮮は韓国や日本に本気で侵略はしないだろう。しかしながら、米国
から (見返りとして) 経済援助を獲得するために、次のような戦略を取る可能性
は大いにある。北鮮では現在、米国本土やハワイやアラスカまで到達しうる長距
離ミサイルはまだ開発されていない。せいぜい飛んでも、日本列島をかろうじて
越えて、太平洋に落下する程度の威力しかない (最新のミサイルテストが、それ
を如実に物語っている)。そこで、北鮮はこの短距離ミサイルを使って、日本国内
にある (北鮮を「仮想敵国視」する) 米軍基地を攻撃するぞ、という脅しを近い
将来、日本政府や米国政府に突き付ける可能性がある。「もし、それがいやなら、
もっと経済援助をせよ」と強要してくるだろう。まるで「ヤクザのおどし」同様
であるが、現在の北鮮は、事実上「ヤクザ化した国家」である。もし、脅しに乗
らなかったら、北鮮はどう出るだろうか。本気であることを示すために(見せし
めに)、ミサイルを2、3発、基地に向けて発射するかもしれない。ヤクザのや
ることだから、正確な予想はつけ難い。余り高度な発射技術をまだ持っていない
ようなので、基地の周辺の住宅地や商店街にミサイルが落ちる可能性も十分ある
だろう。戦争中、日本が開発した(貿易気流に乗る)「風船爆弾」のようなもので、
北鮮にとってみれば、「仮想敵」(日本)国内なら、ミサイルがどこに当たっても大差はないのだから。。。

このような嫌がらせ(人災 )を事前に避けるためには、(口実になりうる)米軍の
基地を全部、日本国外にできるだけ早期に撤去しておく必要があるだろう。
もし、台湾を中国から守るために、米軍基地がなお極東近辺に必要ならば、
ハッキリ「米国領内である」グアム島に基地を移転するのが得策であろう。 従って、
社民党が以前から提案しているように、沖縄および日本列島内にある米軍基地は
全部、グアム島のアンダーソン米軍基地に移転すべきである。米国の軍隊を自国
領土内に駐屯させるのは、誰の目から見ても、しごく当然のことであるからだ。

ちなみに、昨年北鮮が太平洋に向けて、ミサイル発射テストを実施する予告をした
直後、米国本土にある主力戦闘機F22(34機の内12機)がグアム島の空軍
基地に急きょ集結したが、沖縄など日本国内には1機も来なかった。つまり、
(北鮮や中国からの短距離ミサイルの標的内にある)沖縄や日本国内にある米軍
基地は、実戦になった場合、余り防衛効果を発揮し得ないことを物語っている。

続く

2010年3月3日水曜日

南米原産の「コショウボク」(胡椒木) は薬用植物:
抗菌、制癌、抗炎症、利尿、駆虫作用などがある。

メルボルン郊外にある私の引っ越し先のすぐ近くに、長いクリーク(小川より大
きく渓流より小さい)が流れている。クリークに沿って続く曲がりくねった静か
な土手道が、私の毎朝一時間の散歩道になっている。自転車(サイクリスト)や
歩行者専用の道で、自動車が全く通らないから、空気がすこぶる澄んでいる。こ
のクリーク沿いに、「垂れ柳」に似た大木が延々と並木道を作っている。葉は複
葉で典型的な柳の葉とは違うようだが、遠方からみると、丸で柳の並木のようで
ある。白い小さな花が咲き、それが赤く色づいて、小さな実になる。晩夏にそれ
が地面に落ちて、赤いじゅうたんを敷き詰めたようになる。小枝を折ってみると、
真っ白い粘性の樹脂が出てきて、松脂を思わせる新鮮な香りがする。曲がりくねっ
た幹や枝ぶりなどから、私はてっきり、この木を「柳の木」の一種だとばかり思
い込んでいた。この小枝を、自宅の庭に插し木を試みたが、なかなか成功しなかっ
た。どうやら根がないと、うまく生き残れないようだ。

そこで、ある日、この小枝をサンプルに持参して、郊外にある大きな苗木屋を訪
れ、「こんな葉をした柳の苗木はないか」と尋ねてみた。店員は、顔にニッコリ微笑
を浮かべながら、「これは柳ではなく、ウルシ科のペルー原産「peppercorn tree」
(コショウボク) と呼ばれる木ですよ」と教えてくれた。そこで、私の身長ほどあ
る苗木を2千円弱で購入して、自宅の門のすぐ後ろに、早速植え込んだ。ユーカ
リのように成長が速いそうなので、私がまだ生きているうちに、この苗木が高さ
15メートル(巾10メートル)近くの大木になる日がやって来るのを、今から大変
楽しみにしている。。。

まず、インターネットで「コショウボク」なるものの正体を少し調べてみた。学
名は「Schinus molle」だそうだ。松脂を思わせるあの芳香の精油は、どうやら
「ピネン」と呼ばれるテルペン類を含んでいるようだ。さらに、もっと面白いこ
とがわかった。この木は、中南米地方で古来(インカ時代)から「薬用植物」と
して、珍重されてきたということだ。抗菌作用、抗炎症作用などがあることから、
傷口やリュウマチの治療に使われてきたそうだ。芳香の粘液は、飲料に加えたり、
チュウインガムの材料にも使われている。更に驚くなかれ、ごく最近(数年前)
には、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスの研究グループなどにより、その抗
癌作用も見つけられている。PAK依存性の乳癌や肝癌細胞の成長を抑えるそう
だ。

さて、喘息やリュウマチなどの炎症もPAK依存性の病気である。従って、「コ
ショウボク」には、発癌性キナーゼ「PAK」を遮断する作用を持つ抗生物質が
含れている可能性が大いにある。数年前に、我々は四川省原産の花椒 (山椒の親
戚) の真っ赤な実 (peppercorn) に、「PAK」を選択的に遮断することによっ
て、抗癌作用を発揮する物質が含まれていることを発見した。「花椒」はミカン
科の潅木であるが、その赤い実は、ウルシ科の「コショウボク」の赤い実に、そ
の色や形がそっくりである。私の好きな「ダーウイン的な平行思考」からすれば、
「コショウボク」には、ある種の「PAK遮断剤」が存在するに違いない。。。

近い将来、自宅の裏庭で養蜂を始めようと計画しているが、ひょっとすると、この
木も新規な「プロポリス」の生産原料の1つになるかもしれない。何度か前述したように、
「プロポリス」とは、ミツバチが一億年の英知を絞って、木々の樹脂から作り出す天然の
PAK遮断剤 (抗生物質)である。ミツバチの幼虫を種々の感染から守るばかりではなく、
我々人類の癌や糖尿病(type 2)やリュウマチなどの難病の治療に役立つ安価かつ
安全な特効薬でもある。

もう1つ(養蜂家にとって)特記すべき薬理作用がコショウボクにあることが、数
年前にアルゼンチンのグループによって、発見されている。現在、(豪州を除く)
世界中のミツバチが「Varroa destructor 」と呼ばれるダニによって、感染をう
けて存命が危ぶまれていることを前述したが、コショウボクの精油には、このダニを
駆除する強い作用があるそうである。 従って、コショウボクを庭に植えることには、
自身プロポリスの原料木として役立つばかりではなく、ミツバチをダニ害から
救うという、一石二鳥の利点がありそうだ!

2010年2月8日月曜日

書評:「アスピリン企業戦争―薬の王様100年の軌跡 」
チャールズ・マン、マーク・プラマー (共著)、平沢 正夫 (訳)
ダイヤモンド社 (1994年出版)

奇跡の薬「アスピリン」を巡る壮絶な世紀の競争はなお続く

ドイツの「バイエル薬品」が1899年に「アスピリン」という商標で、鎮痛剤
を市販し始めてから、既に100年以上の歳月が経っているが、この薬を巡る企
業間の激しい競争や新しい薬効を見つけ出そうとする医学研究は、今なお続いて
いる。この薬の化学名は「アセチルサリチル酸」(ASA)である。実は、この
化合物は、1763年に英国の町医者 (牧師) エドワード・ストーン が柳の幹の
皮中に発見した生薬「サリチル酸」(SA)を、1897年になって、ドイツの
バイエル社の若き有機化学者 フェリックス・ホフマン がアセチル化して作った
誘導体である。SA自身は酸性が強過ぎ、胃腸に激しい副作用を起こすので、そ
れを中和するために、アセチル化したわけである。実は当時、ホフマンの父親が
重症のリューマチに悩んでいたので、その治療 (鎮痛/消炎) 薬としてSAをま
ず飲ませたが、副作用が強く、それを何とか緩和するために、アセチル誘導体
(ASA)の合成に取り組んだというわけである。この「アスピリン」は、薬業
界でたちまち大ヒットをもたらし、バイエル社は、この鎮痛剤で大儲けをした。
しかし、この薬の成功は、それだけには留まらなかった。その後(20世紀後半)、
英国のジョン・ベインらにより、アスピリンの主な標的が「プロスタグランディ
ン」という脂肪性ホルモンを合成する酵素「サイクロオキシゲナーゼ」(COXー
2)であることが発見されると共に、アスピリンが血小板の凝集を抑えることが
発見され、血栓、心筋梗塞、脳溢血などの循環系病の特効薬としても処方され始
めた。更にごく最近(今世紀初め)には、この酵素「COXー2」の発癌作用を
も抑えることが報告されている。従って、このいわば「万能薬」をめぐって、業
界や医学界で、初陣、先陣を競い合う壮絶な販売/研究競争が、その発見以来一
世紀以上にわたって続いている。 この単行本(邦訳)は、その歴史を、一般大衆
にも理解しやすく面白く綴った、血湧き肉躍る「アスピリン発見/開発物語」で
ある。学生、研究者、業界のビジネスマンにも、大変に参考になる本である。一
読をぜひ勧めたい。

この世紀にわたる「アスピリン戦争」は、泥沼の「ベトナム戦争」、「イラク戦争」、
「アフガン戦争」とは全く違い、難病に苦しむ無数の患者の命を救うべき「知的
な戦い」なので、読んでいて実に胸がすくむ。。。