太平洋戦争中に生まれ、敗戦直後の米軍による占領時代を小学生として過ごした
我々の世代にとって、ダグラス・マッカーサー最高司令官の存在は、色々の意味
で今日ある我々の人格形成に大きな寄与をしてきたといえる。その意味で、彼に
よる戦後日本の民主化の在り方、歩み方をもう一度顧みて、その是非を問ってみ
る一助として、この本は大変参考になると、私は信じる。1978年出版の英文
伝記「General Douglas MacArthur」(米国生まれのシーザー) by William Manchester
はアメリカ人の目で見たマッカーサー伝であるが、この占領史は、その時代を中
学/高校/大学の学生として過ごした著者 自身による観察であり、(既に3人の
子供を抱えた)私の両親の目に写ったマッカーサー観と比較しながら、面白く読
ませてもらった。「マッカーサー憲法」とも呼ばれている今日の日本国憲法の作
成は、彼の占領政策の中でも、最高の傑作であるといえる。第9条(戦争放棄)
が現在でも問題になっているが、私の個人的見解では、天皇に関する第1ー8条
は今や「時代遅れ」(いわゆる「無血統治」に必要だったもの) で、もう破棄して、
天皇制を廃止すべきだが、あとは「先見の明」のあるリベラルな内容であり、そ
のまま維持するのが賢明であろう。
さて、最近の米国(ブッシュ政権)による泥沼「イラク占領政策」と比較して、マッ
カーサーの日本占領政策は抜群に勝れていた(老獪そのものだった!)。昭和天
皇の戦争責任を問わぬ代わりに、象徴化した天皇を巧みに背後で「隠れ蓑」として
使って、敗戦直後の混乱した日本の統治を「無血」で(旧日本軍部の反乱を完全に
抑えながら)成功。 いわば「男から武器を取り上げ、女に参政権を与える」近代日本を
見事に築き上げた! 彼は、占領国を丸腰で堂々と歩く、恐れを知らぬ大君だった。
実は、日本の民衆が彼の身を守ってくれると確信していた、敵の将軍ながら
「あっぱれな人物」である。。。
1950年に朝鮮動乱が勃発後まもなく、マッカーサーの日本占領政策は終了して、
日米平和条約と日米安保条約の締結によって、日本は米国に軍事基地を提供する
「独立国」(実質的には「属国」!)になった。 その後、1972年に沖縄の日本本土
への返還を条件に、本土内にある米軍基地をほとんど全部、沖縄に移転させた。
さて、その基地を日本国外(つまり、米国領土内のグアム島など)へ移転させ、
日本が真に独立できるのは、一体いつの日になるだろうか?
目次
「オレンジ戦略案」の長い影
I Shall Return!
青い眼の大君《タイクーン》
「解放軍」の虚実
勝者は裁く
法を与えるもの
「改革」をめぐる人間力学
神と人とに奉仕せん
My Dear General
「逆コース」という名の協奏曲
勝利に代るものなし?
老兵は消えゆかず
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