新春の壁画 「夢見る海女」

朝から、海の底まで潜って、真珠貝を集め続ける海女たちは、黒海沿岸の貧しい
漁村に住む若い娘たちである。日没近くになって、灯台に灯がともり始める頃、
彼女たちはトボトボと家路につく。やがて、夜空に満天の星が輝き始める。彼女
たちは夜空に描かれた星座の中に「シンデレラ」座を見つけて、来るかも知れぬ
バラ色の将来を秘かに夢見る。。。 ある日、この海辺に若い未婚の男性が現われ、
娘の一人に恋をする。 この壁画を観て、こんなロマンチックな想像ができる人は
一体何人いるだろうか？

 黒海の北岸に広がる肥沃な平野は、現在「ウクライナ」という国に属する。この土
地はベルリンの壁が崩壊するまで、ソ連邦の支配下にあった。 ウクライナは形式
的にはロシアの支配下から独立したが、事実上は、未だに封建的なロシアの支配
から脱し得ていない。 民主化を目指す「オレンジ革命」はとうとう失敗に終わった。
そこで、黒海沿岸の都市「オデッサ」に住む多くの進歩的な女性たちは、ウクライナ
からの脱出を計って、西欧諸国の男性との結婚を日増しに求めている。。。

 さて、ウクライナ脱出をインターネットで斡旋する業者の間に、暴利をむさぼる悪
質な輩が少なからず暗躍している。 従って、多くのハッピーエンドなケースの蔭
には、狼の餌食になった男女は数知れない。。。

この社会問題を題材に「из Украины」 ( Out of Ukraine)（さらば、ウクライナ!）

というロマン小説の執筆に最近取り掛かっている。この本の表紙 (あるいは映画の

ポスター)を念頭に、この壁画を描いた。