生薬/漢方として古来から珍重されているウコン根茎には「クルクミン」と呼ばれるPAK遮断剤が含れていることは良く知られているが、最近、中国の研究グループによって、ウコン (あるいはキョウオウ) 根茎には、もう一つの新しいPAK遮断剤も含れていることが明らかにされた (1)。その名は「ベーターエレメン」(beta-elemene)。発見の発端は、胃癌の放射線治療に対して感受性を高める薬剤のメカニズムを探索している内に、「ベーターエレメン」にPAKを遮断する機能があることが明らかにされた。
放射線や紫外線が発癌キナーゼ「PAK」を活性化することは前述したが、放射線治療に併用して、ウコン由来の生薬を使用すると、放射線耐性の胃癌細胞が死に易くなることから、その成分を調べている内に、「ベーターエレメン」が放射線感受性を高める薬剤の一つとして浮上したわけである。
更に、「ベーターエレメン」処理により、「PAK1IP1」(PAK1結合蛋白1) と呼ばれる蛋白が大量生産されることが判明した。この蛋白は、NF2蛋白 (マーリン=Merlin) と同様、PAKのN端近くに結合して、その活性化 (自己燐酸化) を阻害する ことが、実は米国テキサス州のMDアンダーソン癌研のグループによって十数年前に明らかにされていた (2)。
ただし、「ベーターエレメン」の抗癌作用 (IC50=約300 micro M) はクルクミンやプロポリス成分であるCAPEやARC (アルテピリン C) よりもずっと弱い。 この薬剤の細胞透過性及ぶ水溶性を高める誘導体の開発が将来望まれる
ごく最近、別の中国の研究グループによって、「ベーターエレメン」のdimethylpiperazine 誘導体 (IIi) が合成され、抗癌作用が100倍ほど高められた (IC50=3 micro M) という報告が発表された (3)。
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