伝染病研究所や北里研究所の創始者である北里柴三郎は、ジフテリア抗毒素の開発者であるが、世界初のノーベル医学賞は、その同僚で "商才のある" エミール=ベーリング独りに行ってしまった。
ノーベル受賞者大村さんが、抗生物質の研究者として優れていることは承知済みだが、研究所の経営にも抜群の才能があることを、初めてこの本で知った。メルクなど米国の大手製薬会社と共同研究を組み、イベルメクチンなどの商品化で、莫大な (250億円を超える) ロイヤリティ-を企業から獲得して、それを(北里)研究所経営に充てた。見事である!
我々ベンチャー研究者も、いわゆる“大村方式”を採用して、飛躍的な創薬研究を近い将来、進めていきたい!
奥さん(文子さん)が、算盤塾の先生(経営者)であったという、エピソードも面白い。 埼玉に、研究所の臨床センター(病院)を建設する際には、地元の医師会の根強い反対を、地元の住民運動で打破するために、奔走したそうである。結局、還暦まもなく、乳がんで亡くなったそうであるが、大村さんのノーベル (平和賞) 受賞には、絶対に欠かせない存在だったようだ。
実は、イベルメクチンの抗癌作用がロシアの研究者によって、発見されたのは、文子さんの死後であった。 更に、この抗生物質が、(プロポリスと同様)PAK
遮断剤でもあることを我々が見つけたのは、今から数年前だった。 ごく最近、中国の研究グループが、イベルメクチンなどのPAK遮断剤が「オートファジー」(細胞の自食) を癌細胞に引き起こすことを発見した。
しかしながら、この(人畜無害の)PAK遮断剤は、血管脳関門を通過しにくい。 そこで、我々自身の使命は、イベルメクチンに代わるべき血管脳関門を通過しうる強力な "新規" PAK遮断剤を開発し、大手の製薬会社と共同で、できるだけ早く市場に出すことである。
せっかく強力な新薬を開発しても、“商才” がなければ、製薬会社を介して、市場に商品として出すことができず、恩恵を受けるべき難病患者たちの手に届けることができない
ことを肝に銘ずべきである!