筋肉の収縮メカニズムを説明するために、英国のヒュー・ハックスレーらがミオシ
ン線維とアクチン線維との間でスライディング (滑走) が起こるという説を 1954年
頃に提唱した。その仮説を分子レベルで初めて実証したのは、米国スタンフォー
ド大学医学部のジム・スプーディッチのグループであった。1983年にマイク・シー
ツが、そして1987年に豊島陽子らが、ミオシンおよびその頭部(ATPase)
がモーターとなって、ATPの分解から得られる化学エネルギーをアクチン線維
を動かす機械エネルギーに変換することを実証した。 ATP一個の分解毎にミオシンが
10nm(1cm の千分の1) だけ進むそうだ。 従って、筋線維一本を10センチだけ
収縮させる毎に、一万個のATPの分解が必要である計算になる!
これらの研究に対して、2012年にラスカー賞 (基礎医学分野) が与えられた。
ひょっとすると、2013年のノーベル医学生理学賞は、これらの分子機関車
(ミオシン、キネシン、ダイニンなど) に関する研究分野のパイオニアたちに
与えられるかもしれない。。。
因みに、ミオシンの生化学研究の草分けはハンガリー人、アルバート・セントジョ
ルジ (1893-1986) である。1937年にビタミンCの発見に関して、ノーベル賞を受
賞後、筋肉収縮の研究を始め、ミオシンATPaseがアクチンによって活性化
されることを発見し、1954年にラスカー賞をもらった。同年、スライディング説
を提唱したヒュー・ハックスレー卿は英国ケンブリッジ大学教授で、その弟子で
あるジム・スプーディッチがラスカー賞をもらうのを見届けて間もなく(2013年7月
) 89才で他界した。
蛇足になるかもしれないが、血管壁などを形成する平滑筋のミオシンは、その軽鎖
がPAKなどのキナーゼによって燐酸化されないと、アクチン線維と接触しても、
ATPを分解できないから、アクチン線維の上を転がることができない (筋肉が
収縮しない!)。 言いかえれば、平滑筋の収縮 (血圧の上昇) にPAKが深く関
与している。従って、高血圧に悩む人々は、プロポリスなどのPAK遮断機能を
持ったハーブ(健康補助食品) を規則的に飲むことによって、血圧を適度に下げる
ことができる。
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