沖縄の琉球大学構内(産学共同研究ビル)に、本研究センターを2015年春に、創設した主な理由の一つは、古来より「健康長寿の県」と言われていた琉球列島(沖縄県)が、主に「肥満症」などの生活慣習病のために、最近、その王座を下ろされた事態に憂慮し、戦後70年近く続く「米軍基地文化」によって毒された伝統的な琉球風の健康的な食生活様式を取り戻し、沖縄県民のみならず、日本人全体(あるいは全人類)の健康長寿を促進するのに役立つ研究を推進することである。
我々の研究標的として、いわゆる悪玉キナーゼ「PAK」を選んだ理由は、下記の通りである。まず、我々の研究により、PAKが発癌や老化現象に必須な酵素であることが判明した。PAKを遮断したマウスでは、発癌しにくい、かつPAK遺伝子を欠損した線虫の寿命は、野生株より50%ほど長い。さらに、PAK遺伝子を欠損しているマウスでは、炎症、様々な感染症、認知症、糖尿病(2型)、肥満症などが発生しにくくなる (1, 2)。従って、PAKを遮断する食品類ゃ医薬品は、健康長寿に役立つことは、火を見るより明らかである。
さらに、沖縄特産のゴーヤ、月桃、(オオバキを起源植物とする)プロポリスなどには、強いPAK遮断活性があることが、我々自身の研究によって、明らかになった。その上、これらのPAK遮断剤には、美白作用や育毛促進作用もあることが最近分かった (3, 4)。従って、沖縄産の多くの植物は、健康長寿を促進する食品類や医薬品(PAK依存性の様々な難病の治療薬)の原料になるばかりではなく、化粧品の原料にも利用される可能性がにわかに高まってきた。そこで、沖縄産の「山の幸」、および「海の幸」を研究材料に、PAK遮断剤を単離同定する研究、およびその天然物のPAK遮断作用を、さらにユニークな化学修飾により大幅に増強して、一連の新しい医薬品を開発するベンチャー事業に、主に焦点を当てている。
欧米では、最近2,3の大手製薬会社が(主に癌の治療を目指して)PAK阻害剤を開発し始め、ノーベル受賞者の利根川進教授(MIT)が、数年前に米国カルフォルニアに設立したベンチャー会社でも、(認知症、自閉症、統合失調症などの治療を目ざして)PAK阻害剤の開発が進められているが、残念ながら、我が国内では、そのような動くは殆んどない。従って、沖縄のPRCは、日本あるいはアジアにおけるPAK遮断剤開発研究の「パイオニア的な」役割を果たしている。
PRC の ”北進“ 構想:
高血圧や血栓症などの循環器病は、癌と共に、典型的な“PAK依存性難病”である。従って、我々が開発しつつある一連のPAK遮断剤も、これらの難病の治療にも役立つに違いない。
JR東海道線“岸辺駅北口”のさら地に “国立循環器病研究センター”を中心とする”医療センター“ が誕生予定(2018年)。この研究センター内に、我々のPRC(創薬支部)を発足させる計画が進行しつつある。
- 丸田 浩 (2001).「癌との闘い:
"シグナル" 療法と " 遺伝子 " 療法」 (共立出版)
- Maruta
H (2014). Herbal therapeutics that block the oncogenic kinase PAK1: A practical
approach towards PAK1-dependent diseases and longevity. Phytother Res 28: 656-72.
- Nguyen
BC, Be Tu PT, Tawata S, Maruta H (2015). Combination of
immunoprecipitation (IP)-ATP_Glo kinase assay and melanogenesis for the
assessment of potent and safe PAK1-blockers in cell culture. Drug Discov
Ther. 9: 289-95.
- Nguyen
BC, Taira N, Maruta H, Tawata S, (2015). Artepillin C (ARC) and several
other herbal PAK1-blockers: their effects on hair cell proliferation, and
a few other PAK1-dependent biological function in cell culture. Phytother.
Res., 30: 120-7.
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