著者は線虫研究のベテランで、私と同じ大学を卒業したほぼ同年配の理学博士である。もっとも、主な研究対象はRNAで、"創薬をめざす"薬学出身の私とはかなり違う。線虫研究の草分けであるブレナーを始め、干渉RNAを発見したファイアとメロ両氏、さらにオワンクラゲ由来のGFP(蛍光蛋白)を線虫で初めて発現したチャルフィーらの武勇伝が、この本で丁寧に紹介されている。さらに、線虫とは直接関係ないが、GFPを半世紀以上前に発見して、数年前にノーベル賞をもらった下村さんのルシフェリンや蛍光蛋白に関する研究エピソードも詳しく紹介されている。
(PAK遮断剤で処理すると) HSP16-GFPを発現する特殊な線虫株 (CL2070) を使用する私には、(当然のことながら)既知の内容が多かったが、これから線虫に挑戦したいと志す若い冒険好きな研究者たちには、大変有益な啓蒙書である。
もっとも、線虫には視覚神経や心臓などの循環器系がない。 従って、これらの分野に特に興味を持つ者は、脊椎動物であるメダカやオタマジャクシなどを実験材料として、選ぶべきであろう。 勿論、iPS研究もノーベル賞への早道らしいが、功を急ぎ過ぎて、墓穴を掘る人々がかなり目立つ。 “朝ドラ”ではないが、“地道にコツコツ” 研究しよう!
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