炎症や痛みの原因であるプロスタグランディンを合成する酵素「COXー2」 の発現 (転写) にはPAKが必須!
抗炎症剤/鎮痛剤である「アスピリン」が、炎症や痛みの原因であるプロスタグランディンを合成する酵素「COXー2」 の発現 (転写) を抑えていることは、かなり昔から良く知られている事実である。 さて、最近になって、「COXー2」が固形癌の増殖にも必須であることが判明した (2)。 従って、アスピリンに、弱いながらも抗癌作用があることは、驚くにはあたらない。
炎症や固形癌/腫瘍の増殖にPAKが必須であることは、繰り返し前述した。そこで、PAKとCOXー2との間に、何か深い関係があるかどうか、文献調査をやってみた。すると、驚くなかれ、PAKが「COXー2」 遺伝子の発現 (転写) に必須であることが判明した (3)。 従って、PAK遮断剤は「COXー2」 遺伝子の発現を抑えることによって、癌の増殖や炎症を抑えるばかりではなく、鎮痛作用も発揮することが容易に想像できる。実際、抗炎症剤として、広く使用されている薬剤「トラドール」は、鎮痛剤としても使用されている。
言い替えれば、「トラドール」中の「R-Ketorolac」 は、PAKを遮断することによって、最終的には「COXー2」遺伝子の発現を抑える役割を果たしていることになる。 従って、「トラドール」は実際には、異なる2種類の薬剤による相乗作用で、炎症や痛みを抑えるばかりではなく、NFなどの固形腫瘍の増殖をも抑える作用をもっているはずである。 実際、最近、動物 (マウス) 実験で トラドールが卵巣癌の増殖を抑えるという報告が出ている (4)。
もう一つ、COX-2の機能に関して面白い発見が最近、韓国のグループによってなされた。COX-2遺伝子の発現を抑えると、メラニン色素の合成が下がる (5)。 つまり、「PAKーCOXー2」シグナル経路はメラニン合成にも必須であることが判明したわけである。言い替えれば、「トラドール」には美白作用もあるに違いない。
2015年秋に入って、ケトロラックから、抗癌作用が500倍以上の強力なPAK遮断剤 「15K」を、Click Chemistry という手法によって、開発した (6)。 水溶性で、かつ細胞透過性が極めて高い。 2017年初めに特許を取得し、市販をめざして、一連の動物実験を進めている。 最近の実験では、微量でせんちゅうの平均寿命を3割も延ばすので、「15K」に副作用は全くないと考えてよいだろう!
参考文献:
抗炎症剤/鎮痛剤である「アスピリン」が、炎症や痛みの原因であるプロスタグランディンを合成する酵素「COXー2」 の発現 (転写) を抑えていることは、かなり昔から良く知られている事実である。 さて、最近になって、「COXー2」が固形癌の増殖にも必須であることが判明した (2)。 従って、アスピリンに、弱いながらも抗癌作用があることは、驚くにはあたらない。
炎症や固形癌/腫瘍の増殖にPAKが必須であることは、繰り返し前述した。そこで、PAKとCOXー2との間に、何か深い関係があるかどうか、文献調査をやってみた。すると、驚くなかれ、PAKが「COXー2」 遺伝子の発現 (転写) に必須であることが判明した (3)。 従って、PAK遮断剤は「COXー2」 遺伝子の発現を抑えることによって、癌の増殖や炎症を抑えるばかりではなく、鎮痛作用も発揮することが容易に想像できる。実際、抗炎症剤として、広く使用されている薬剤「トラドール」は、鎮痛剤としても使用されている。
言い替えれば、「トラドール」中の「R-Ketorolac」 は、PAKを遮断することによって、最終的には「COXー2」遺伝子の発現を抑える役割を果たしていることになる。 従って、「トラドール」は実際には、異なる2種類の薬剤による相乗作用で、炎症や痛みを抑えるばかりではなく、NFなどの固形腫瘍の増殖をも抑える作用をもっているはずである。 実際、最近、動物 (マウス) 実験で トラドールが卵巣癌の増殖を抑えるという報告が出ている (4)。
もう一つ、COX-2の機能に関して面白い発見が最近、韓国のグループによってなされた。COX-2遺伝子の発現を抑えると、メラニン色素の合成が下がる (5)。 つまり、「PAKーCOXー2」シグナル経路はメラニン合成にも必須であることが判明したわけである。言い替えれば、「トラドール」には美白作用もあるに違いない。
2015年秋に入って、ケトロラックから、抗癌作用が500倍以上の強力なPAK遮断剤 「15K」を、Click Chemistry という手法によって、開発した (6)。 水溶性で、かつ細胞透過性が極めて高い。 2017年初めに特許を取得し、市販をめざして、一連の動物実験を進めている。 最近の実験では、微量でせんちゅうの平均寿命を3割も延ばすので、「15K」に副作用は全くないと考えてよいだろう!
参考文献:
1.
Guo Y1,
Kenney SR Jr2,
Muller CY3,et
al. R-ketorolac
Targets Cdc42 and Rac1 and Alters Ovarian Cancer Cell Behaviors Critical for
Invasion and Metastasis. Mol Cancer Ther. 2015 Jul
23.
2. Pan Y1,
Jiang Y1,
Tan L1,
Ravoori MK2,
Gagea M3,
Kundra V2,4,
Fischer SM5,
Yang P1.
Deletion of cyclooxygenase-2 inhibits K-ras-induced
lung carcinogenesis. Oncotarget.
2015 ; 6(36):38816-26.
3. Pham H1,
Vincenti R,
Slice LW.
Biochim Biophys Acta.
2008; 1779(6-7):408-13. COX-2 promoter activation by AT1R-Gq-PAK-p38beta signaling in intestinal
epithelial cells.
4. Guo Y1,
Kenney SR2,
Muller CY3,
Adams S3,
Rutledge T3,
Romero E4,
Murray-Krezan
C5, Prekeris R6,
Sklar LA1,
Hudson LG2,
Wandinger-Ness
A7. R-Ketorolac Targets Cdc42 and Rac1 and Alters Ovarian Cancer Cell
Behaviors Critical for Invasion and Metastasis. Mol Cancer Ther. 2015; 14(10):2215-27.
5. Kim JY,
Shin JY,
Kim MR,
Hann SK,
Oh SH.
siRNA-mediated
knock-down of COX-2 in melanocytes suppresses melanogenesis. Exp Dermatol. 2012; 21(6):420-5.
6. Nguyen BC, Takahashi H, Uto Y, Shahinozzaman MD, Tawata S, Maruta H. 1,2,3-Triazolyl ester of Ketorolac: a “Click Chemistry”-based highly potent PAK1- blocking cancer-killer. Eur. J. Med. Chem, 2017, 126, 270-6.
6. Nguyen BC, Takahashi H, Uto Y, Shahinozzaman MD, Tawata S, Maruta H. 1,2,3-Triazolyl ester of Ketorolac: a “Click Chemistry”-based highly potent PAK1- blocking cancer-killer. Eur. J. Med. Chem, 2017, 126, 270-6.