人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2015年7月26日日曜日

鎮痛剤「ケトロラック」(商標トラドール) から、500倍強力なPAK遮断剤「15K」を 開発!

製薬会社ロッシュから[1989年以来]販売されている抗炎症剤・鎮痛剤 「トラドール」は、光学異性体である2種類の化合物 (Ketorolac) の混合体 (ラセミ体) である。 その内、"S-Ketorolac " が「COXー2」 (Cyclooxygenase 2) を直接阻害することが知られていた。  ところが、ごく最近になって、米国ニューメキシコ大学による 最近の研究によって、"R-Ketorolac"  には (「COXー2」 を直接阻害する作用はないが)  RAC-PAK シグナル経路を遮断することがわかった(1)。

炎症や痛みの原因であるプロスタグランディンを合成する酵素「COXー2」 の発現 (転写) にはPAKが必須!

 抗炎症剤/鎮痛剤である「アスピリン」が、炎症や痛みの原因であるプロスタグランディンを合成する酵素「COXー2」 の発現 (転写) を抑えていることは、かなり昔から良く知られている事実である。 さて、最近になって、「COXー2」が固形癌の増殖にも必須であることが判明した (2)。 従って、アスピリンに、弱いながらも抗癌作用があることは、驚くにはあたらない。

炎症や固形癌/腫瘍の増殖にPAKが必須であることは、繰り返し前述した。そこで、PAKとCOXー2との間に、何か深い関係があるかどうか、文献調査をやってみた。すると、驚くなかれ、PAKが「COXー2」 遺伝子の発現 (転写) に必須であることが判明した (3)。 従って、PAK遮断剤は「COXー2」 遺伝子の発現を抑えることによって、癌の増殖や炎症を抑えるばかりではなく、鎮痛作用も発揮することが容易に想像できる。実際、抗炎症剤として、広く使用されている薬剤「トラドール」は、鎮痛剤としても使用されている。

 
言い替えれば、「トラドール」中の「R-Ketorolac」 は、PAKを遮断することによって、最終的には「COXー2」遺伝子の発現を抑える役割を果たしていることになる。 従って、「トラドール」は実際には、異なる2種類の薬剤による相乗作用で、炎症や痛みを抑えるばかりではなく、NFなどの固形腫瘍の増殖をも抑える作用をもっているはずである。 実際、最近、動物 (マウス) 実験で トラドールが卵巣癌の増殖を抑えるという報告が出ている (4)。

もう一つ、COX-2の機能に関して面白い発見が最近、韓国のグループによってなされた。COX-2遺伝子の発現を抑えると、メラニン色素の合成が下がる (5)。 つまり、「PAKーCOXー2」シグナル経路はメラニン合成にも必須であることが判明したわけである。言い替えれば、「トラドール」には美白作用もあるに違いない。

2015年秋に入って、ケトロラックから、抗癌作用が500倍以上の強力なPAK遮断剤 「15K」を、Click Chemistry という手法によって、開発した (6)。 水溶性で、かつ細胞透過性が極めて高い。 2017年初めに特許を取得し、市販をめざして、一連の動物実験を進めている。 最近の実験では、微量でせんちゅうの平均寿命を3割も延ばすので、「15K」に副作用は全くないと考えてよいだろう!

参考文献:

1.      Guo Y1, Kenney SR Jr2, Muller CY3,et al. R-ketorolac Targets Cdc42 and Rac1 and Alters Ovarian Cancer Cell Behaviors Critical for Invasion and Metastasis. Mol Cancer Ther. 2015 Jul 23.

Deletion of cyclooxygenase-2 inhibits K-ras-induced lung carcinogenesis. Oncotarget. 2015 ; 6(36):38816-26.
3. Pham H1, Vincenti R, Slice LW. Biochim Biophys Acta. 2008; 1779(6-7):408-13. COX-2 promoter activation by AT1R-Gq-PAK-p38beta signaling in intestinal epithelial cells.

4. Guo Y1, Kenney SR2, Muller CY3, Adams S3, Rutledge T3, Romero E4, Murray-Krezan C5, Prekeris R6, Sklar LA1, Hudson LG2, Wandinger-Ness A7. R-Ketorolac Targets Cdc42 and Rac1 and Alters Ovarian Cancer Cell Behaviors Critical for Invasion and Metastasis. Mol Cancer Ther. 2015; 14(10):2215-27.

5. Kim JY, Shin JY, Kim MR, Hann SK, Oh SH. siRNA-mediated knock-down of COX-2 in melanocytes suppresses melanogenesis. Exp Dermatol. 2012; 21(6):420-5. 
6. Nguyen BC, Takahashi H, Uto Y, Shahinozzaman MD, Tawata S, Maruta H. 1,2,3-Triazolyl ester of Ketorolac: a “Click Chemistry”-based highly potent PAK1- blocking cancer-killer. Eur. J. Med. Chem, 2017, 126, 270-6.


2015年7月10日金曜日

脂肪分解酵素 (リパーゼ) を利用した ARC (Artepillin C) 合成法の開発:
海鞘由来の “ST-2001“ 誘導体の酵素的合成にも応用しうる!

ブラジル産グリーンプロポリスの主要抗癌成分ARC (Atepillin C) は、 PAK遮断剤であるが、その化学合成法は、2002年に、徳島大学の宇都義浩博士らによって、確立された(1)。 さて、ごく最近、ARCを酵素的に合成する方法が、慶応大学薬学部の 須貝威教授らによって、開発された()。 利用した酵素は、酵母菌由来のリパーゼBで、(ある特定の位置にある)エステル結合を分解 (脱アセチル化) して、脂肪酸 (カルボン酸) を遊離する働きを持つ。

この論文の要旨を読み終わった瞬間、ある名案[奇抜な考え]が私の脳裏に閃いた。 スタウロスポーリン(ST の誘導体で、海鞘由来の “ST-2001“ と呼ばれるPAK
遮断剤の誘導体を酵素的に合成しうる方法である。 十年以上、最善と思われるルートを私は模索し続けていた。 詳しくは、国際特許を申請してから、ここに記載しよう。


この酵素(Lipase B)はエステル結合を分解するだけではなく、アルコールとカルボン酸からエステル結合を形成する反応も触媒する。例えば、コーヒー酸とフェネチルアルコールからCAPEを酵素的に合成しうる (3)。  従って、ST-2001の誘導体を酵素的エステル化で合成することも理論的には可能である。 とにかく、このプロジェクトは、"未知への挑戦"である。
 

科学の世界でも、前人未到のピークを制覇する直前に、我々は勇敢であらねばならない。前途に(叩いてから渡れる)石橋など皆無だからだ。エベレスト山頂に至る “ヒラリー・ステップ” のごとく、自分の全身(四足と頭)で新しいルートを切り開かねばならない。

“サイはついに投げられた! いざ、ルビコンを渡らん!

 
  参考文献:

1.Uto Y, Hirata A, Fujita T, Takubo S, Nagasawa H, Hori H. First total synthesis of artepillin C established by o,o'-diprenylation of p-halophenols in water. J Org Chem. 2002; 67: 2355-7.

2. Yashiro K, Hanaya K, Shoji M, Sugai T. New synthesis of artepillin C, a prenylated phenol, utilizing lipase-catalyzed regioselective deacetylation as the key step. Biosci Biotechnol Biochem. 2015 18: 1-5.
3. Ha SH, Van Anh T, Koo YM. Optimization of lipase-catalyzed synthesis of caffeic acid phenethyl ester CAPE in ionic liquids by response surface methodology. Bioprocess Biosyst Eng. 2013; 36: 799-807.

2015年7月9日木曜日

沖縄産プロポリスの製品化により、プロポリスの “国際的な品質管理の指標” (例えば、anti-PAK Index) 設定をめざす!


我々が最近立ち上げた “沖縄産プロポリス製品化プロジェクト” には、主に次のような目的がある。
種々のプロポリスを健康食品から(保険がきく)“医薬並み”レベルに引上げるためには、国際的に通用する品質管理の指標 (例えば、anti-PAK Index を設定する必要がある。プロポリスは産地によって、その成分が全く違うので、成分表示だけでは、品質を比較することができないからである。そこで、その共通な薬理作用、つまり、抗癌作用(PAK依存性の癌細胞の増殖をを50%抑える濃度IC50の逆数 X 100=Anti-PAK Index)で評価する方法を確立すべきである。
例えば、Bio 30 は12.5、沖縄プロポリス(OP, Propolin G の含量=11%) は8、ブラジル産(グリーン)プロポリス(GP, ARC の含量=12%)は、1 。 

ところが、市場では、Bio 30は、(NZでは)25㏄瓶がたった千円、GPは、30㏄瓶が(沖縄では)一万円以上で通販されているのが現状である。そこで、沖縄の養蜂組合を啓蒙して、地元産のOP を製品化して、Bio 30並みの安価な値段で、沖縄 (および日本本土) の消費者(特に、難病患者)へ提供するという “良心的な事業” を起こさせる必要がある。 

最近、豪州北東沿岸(亜熱帯地方) から採取されるプロポリスにもゲラニル系側鎖 (例えば、Propolin G など) を有するフラボノイド類が含まれていることが判明した。従って、その起源植物も恐らく (沖縄産プロポリスと同様) 「オオバキ」であろうと推定される (1)。

参考文献: 

Massaro CF1, Simpson JB2, Powell D3, Brooks P3. Chemical composition and antimicrobial activity of honeybee (Apis mellifera ligustica) propolis from subtropical eastern Australia. Naturwissenschaften. 2015 ; 102 (11-12): 68.
 

2015年7月7日火曜日

CAPE (caffeic acid phenethyl ester) の直接標的: PAKの上流にある “AKR (Aldo-Keto-Reductase) 1B10”


温帯地方で取れるプロポリス(例えば、Bio 30 中の主要抗癌成分CAPEが、発癌・老化キナーゼPAKの遮断剤であることは、繰り返し前述した。しかしながら、その直接の標的が最近までよくわからなかった。ところが、最近になって、岐阜薬科大学の松永俊之教授の研究室によって、CAPE (IC50= 80 nM) の直接標的が、PAKの上流にあるG 蛋白(RAS RAC) の活性化に必須な酵素 “AKR (Aldo-Keto-Reductase) 1B10” であることが確認され、更に、その強い阻害剤 (化合物10CIC50= nM が、CAPEの誘導体として、開発された (1)。
 しかしながら、この誘導体(10C)の "細胞透過性" は相変わらず悪く、抗癌作用の指標であるIC50300 nM前後に留まっている。

参考文献

1.Soda M, Hu D, Endo S, Takemura M, et al. Design, synthesis and evaluation of caffeic acid phenethyl ester (CAPE) -based inhibitors targeting a selectivity pocket in the active site of human aldo-keto reductase 1B10. Eur J Med Chem. 2012; 48: 321-9.

2015年7月4日土曜日

胎盤形成に必須な遺伝子PEG10: ウイルス起源、発がん性、免疫抑制

東京医科歯科大学の石野教授夫妻によって、10年以上前に発見された“PEG10”と呼ばれる遺伝子は、ほ乳類の胎盤(へそのう)形成に必要な遺伝子であるが、その起源を探ってみると、“ある[発がん性の]レトロウイルスからの ”トランスポゾン“ の一種である”ことを、最近(“生物の進化”を扱うNHKテレビ番組で)から学んで、いささか驚いた。
 
PEG10には、発がん性があると共に、(“異物”である胎児を受け入れるために)母体の免疫能を一時的に抑える作用もある。さて、その遺伝子産物(つまり“Syncytin” と呼ばれる蛋白)は、一体どんな機能を持っているのだろうか? この蛋白は、ウイルス(HERV-W の膜蛋白”ENV に由来し、本来は、ウイルスの外膜を、宿主の細胞膜と融合させることによって、ウイルスの細胞内への侵入を助ける役割を果たしている。妊娠した母体では、胎児の尿管由来のへそと母体の子宮組織を融合して(栄養や酸素補給のための)胎盤を形成する役割を果たす。
 
哺乳類でありながら、体外に産卵する ”カモノハシ“ には、鳥類や魚類と同様、PEG10 遺伝子が存在しない。