その標的であるいくつかの発癌キナーゼの中、どのキナーゼが老化現象に必須であるかは、ごく最近まで不明 (謎の一つ) だった。
さて、PAKによって直接燐酸化される (発癌) キナーゼの中に、「インテグリン依存キナーゼ」(ILK)と呼ばれるキナーゼがある。
このキナーゼを阻害すると、癌の増殖を選択的に抑えるが、正常な細胞の増殖には全く影響を与えない。
この薬理(抗癌)作用はPAK遮断剤と良く似ている。
この12月に入って、その謎を解く論文が米国南カリフォルニア(サンディエゴ)にあるサンフォード・バーンハム医学研究所のマレーン・ハンセン博士 (デンマーク出身) の研究室から発表された。
線虫を研究材料に使って、ILK遺伝子の発現を抑えると、この虫の耐熱性が増すと共に、寿命が伸びることを発見した (1)。 そのメカニズムは、熱ショック蛋白の産生に必須な 「HSFー1」 と呼ばれる転写蛋白の産生を増すことによることが判明した。
つまり、ILKは通常、「HSFー1」 遺伝子の発現を抑えることによって、熱耐性を低下させ、寿命を縮めていることになる。
参考文献:
1. Kumsta C,
Ching TT,
Nishimura M,
Davis AE,
et al. Integrin-linked
kinase modulates longevity and thermotolerance in C. elegans through neuronal
control of HSF-1. Aging Cell. 2013
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