我々は2、3年前に、PAK遺伝子を欠損したセンチュウ株 (RB689)が野生株より6割ほど長生きすることを発見し、PAKが「老化キナーゼ」であることを実証した (前述)。驚くなかれ、結核の特効薬として知られている抗生物質「リファンピシン」もセンチュウの寿命をちょうど6割延ばすことが、最近インドの研究グループによって発見された(1)。
その延命効果には少なくとも2種類の遺伝子産物が必須であることが判明した。その一つは「PTEN」と呼ばれる抗癌フォスファターゼである。この酵素は発癌/老化キナーゼ「PAK」を遮断することが知られている。もう一つは「FOXO」と呼ばれる転写/長寿蛋白である。「FOXO」の転写機能はPAKによって阻害される。従って、この結核の特効薬が「PTEN」を介して、「PAK」を遮断し、長寿蛋白「FOXO」を活性化し、HSP16 (熱ショック蛋白) を活性化している可能性が高い。 サリドマイドやレスベラトロールも上記のメカニズムでセンチュウの寿命を延ばすことが知られている。多数の奇形児を発生して悪名高かった「サリドマイド」が最近、抗癌剤として使用され始めている。
従って、結核の特効薬「リファンピシン」は (結核患者ばかりではなく) 健康な人々にも、ありがたい効用をもたらすようである。ただし、妊婦は「サリドマイド」と同様、この結核の特効薬を避けるべきであろう。
参考文献:
- Golegaonkar S, Tabrez SS, Pandit A, Sethurathinam S, et al. Rifampicin reduces advanced glycation end products and activates DAF-16 (FOXO) to increase lifespan in C. elegans. Aging Cell. 2015 Feb 26.
0 件のコメント:
コメントを投稿