著者は東工大の名誉教授であるが、若いころ、琉球大学で、長らく教鞭をとっていたそうである。 日本では、“ナマコ学”の権威です。
ナマコは動物でありながら、ほとんど動かない。だから、植物に近いといえる。ナマコのエネルギー代謝は、体重あたりにして、人類の50分の一に過ぎない。エネルギー消費は少ないので、ナマコはほとんど眠らない。
さて、ナマコには、食用のものと、そうでないものがある。食べられないナマコの大部分には、サポニンと呼ばれる毒がある。この毒は、ナマコの天敵である魚から、自身を守るためにあるらしい。前述したが、多くのサポニン (例えば、ナマコ由来のフロンドシドA など)には、PAK遮断作用がある可能性がきわめて強い。動物には、PAKが存在するが,植物には、PAKが存在しない。 逆に、植物には、PAK遮断剤が豊富にあり、長生きの源泉になっている。 サポニンは、魚を殺すが、人類にとっては、毒ではなく、抗がん剤などの薬になる場合が多い。
言い換えれば、PAKの観点からも、ナマコは植物に近い。ナマコが“海のキュウリ”(sea cucumber)と呼ばれるのは、かなり妥当である。ゴーヤにはPAK遮断剤が豊富にふくまれているが、 ナマコは、“海に住むゴーヤ”みたいなものであると考えれば、理解しやすいだろう。
最近、気が付いたことだが、市販されている食用のゴーヤは、余り苦くない。 同様に、食用のナマコは、余り苦くない。 苦味は、主にサポニン類の含量に比例する。 従って、食用のナマコには、(薬としての)サポニン含量が少ないと考えられる。 言い換えれば、サポニンの原料としては、食べられないナマコを選んだ方が賢いことになる。 早く言えば、「良薬苦し」である。
日本近海の“食用のナマコ”[主に“マナマコ”]は乱獲のため、涸渇状態に瀕している。 逆に、食用でないナマコは、無尽蔵に存在する。 沖縄には、マナマコはごく稀である。 沖縄ナマコの大部分は、食べられないから、海岸の浅瀬にゴロゴロしている。
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