発癌/老化シグナル伝達経路は川の流れのようなものである。 (重力に沿って) 上流 (RAS) から下流 (PAK) へと水かさを増しながら流れ続け、海や湖に注ぎ込まれるが、実は循環している回路のようなものである。 海や湖の水は太陽熱によって、蒸発し天空の雲になり、雨や雪となって、再び地上に降り注ぎ、川の上流に戻って、下流へ循環を繰り返す。 従って、厳密に言えば、どのシグナル伝達分子が上流にあるのか下流あるのか言い難たい。ニワトリが先か卵が先か、わからないのと同じである。 難病や老化など生命現象は全て、言わば「繰り返しの連続」である。 一つだけ確かなことは、この悪循環経路/回路のどこかを (ダムの役目をする) 「薬」で遮断すると、発癌や老化へのシグナル伝達 (流れ) を少なくとも一時的に止めうるということだ。
PAKを遮断するハーブ由来の薬剤(例えば、プロポリス由来のCAPEやARCやアピゲニン、海洋性カロチノイド「AX」など) は、ほとんど例外なく「AMPK」と呼ばれる抗癌キナーゼを同時に活性化する機能を持つ。「AMPK」とは、絶食や激しい運動などの結果、細胞内のグルコース濃度、それから合成されるATPの濃度が低くなると、抗癌キナーゼ「LKB1」によって直接りん酸化されて、活性化されるAMP依存性のキナーゼである。 最近になって、「LKB1」がPAKを直接りん酸化して、その活性を抑制することが発見された。言いかえれば、絶食や激しい運動などにより細胞内のATPレベルが下がると、PAKが遮断されると同時に「AMPK」が活性化されるのだ。こうして、PAK遮断剤=AMPK活性化剤という等式が確立した。
興味深いことには、ごく最近、もう一つの等式も同時に確立していることが判明した。PAK遮断=HSP (熱ショック蛋白) 誘導という等式である。 どういうことかと言うと、(健康長寿に必須な) HSP遺伝子の発現がPAKによって抑制されているということである。
例えばプロポリス中のCAPEなどで、センチュウ、ショウジョウバエ、マウスなどの小動物のPAKを遮断すると、HSPが大量生産され、寿命が50%近く伸びることが、我々や他の研究者の手により見事に最近実証された。言いかえれば、PAK遮断=AMPK活性化=HSP誘導という極めて興味深い等式が成り立っていることになる。
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