チロシナーゼというのは、チロシンというアミノ酸を酸化してメラニン色素にする酵素であるが、その酵素の発現にPAKが必須であることが最近判明した。 「黒」マウスからPAK遺伝子を除くと「白」マウスが誕生するからである。 従って、プロポリスなどに含まれているCAPE などでPAKを遮断すると、肌は美白に、髪は (メラニン色素の量に応じて) 好みの色に変化しうるわけである。(化粧品会社をスポンサーにして) テレビでこんな面白い話をすれば、特に女性の聴取者がきっと喜ぶに違いない。。。
さて、最近問題視されている化粧品会社(カネボウ)の美白成分「ロドデノール」(白樺の樹皮由来) はチロシン誘導体の一種であり、チロシナーゼに直接結合して、そのメラニン合成機能を阻害する。従って、ロドデノールはPAKを遮断するわけではないので、癌などの難病治療や健康長寿には役立ちそうもない。
PAKの生理的役割に関する我々の視野が広くなったついでに、美白効果のあるハーブ類から、PAK遮断剤を新しく発掘する試みをしてみた。こういう作業 (頭の体操) はリタイアした高齢者にとって、脳の老化を予防する (遅らせる) のに有効であるからだ。 予想通りいくつか見つかったが、その中で今までこのブログで一度も触れたことのない物質を一つ、ここで紹介しよう。
「マデカッソシド」(MA)と呼ばれるトリテルペンの配糖体である。 「ツボクサ」(漢方では「雪公根」と呼ぶ)というマダカスカル原産のセリ科の薬草の葉(タイでは食用野菜、ミツバに似た味)に多く含れており、従来、抗癌、抗炎症、傷口の修復、記憶力の増進などの薬効があることが知られていた。これら一連の薬理作用は、既知のPAK遮断剤の典型的な「指紋」に相当するもので、この配糖体が、PAKを遮断することを強く示唆している。
さて、昨年末になって、韓国の研究グループより、この配糖体が、紫外線照射によって起こる炎症に伴うメラニン合成を抑えることがモルモットを使った実験で明らかにされた。 次にMAが分子レベルで一体何をしているかを文献上で調べてみた。2012年に南京の中国薬科大学の研究グループによって、MAが発癌性のPI3KーPAKーLIMKシグナル伝達経路を抑えていることが実証された。つまり、MAも結局「PAK遮断剤」なのである。 驚くなかれ、中国産の「美肌クリーム」には、MAを配合したものが少なくない。 ひょっとすると中国美人の秘密の一つはMAかも知れない!
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