翌年には、抗ペラグラ因子として、ニコチン酸 (=ビタミンB3) をも発見した. しかし、(日本語からドイツ語への)邦訳ミスがたたって、発見当時は世界的に “ビタミン発見者”としては認められなかった。そこで、実際には鈴木梅太郎よりも後でビタミンを発見したポーランドの生化学者カジミール=フンク[1884-1967]が“ビタミンB1の発見者”という名誉を勝ち取る幸運を得た。
さて、ニコチン酸は、“ニコチン” という(タバコ由来の)アルカロイドを強酸によって酸化すると生じる。 我々の生体内では、トリプトファンというアミノ酸から生合成される。従って、トリプトファンが欠乏すると、ニコチン酸欠乏 と同様、“ペラグラ” と呼ばれる一種の皮膚病にかかる。ニコチン酸は芳香環化合物の中で、カルボン酸を有する最も単純な天然化合物の一つである。前述したが、カルボン酸を有する化合物は、細胞透過性が悪い。従って、臨床に応用するためには、このカルボン酸に水溶性の側鎖を付加して、酸を中和する必要がある。
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