MBは、1876年にドイツの化学者、実業家であるハインリッヒ・カロ (Heinrich Caro, 1834-1910) によって初めて合成された水溶性の染料である。衣料の染色ばかりではなく、細胞の核(染色体)
染色や脳内染色にも使用されている。私の脳裏に最も印象的に残っているシーンは、戦前のMGM映画「Dr. Ehrlich's Magic Bullet 」(エーリッヒ博士の魔法の弾丸)の前半に登場する場面で、(梅毒の特効薬「サルバルサン」を開発した) 博士が、ミミズのような虫に、この青い染料を注射したところ、脳だけが選択的に青く染まったというシーンだ。実際、この染料は血管脳関門(BBB)を通過しうるから、脳内に生じる種々の病気の治療に有効である可能性がある。ごく最近、この染料が抗癌キナーゼ(LKB1ーAMPK)を強く活性化することが判明した (1)。前述したが、LKB1はPAKを直接燐酸化して、その活性を阻害する。従って、この染料がPAK遮断剤でもあることは明白。実際、動物実験で、(PAK依存性の) 認知症やマラリアの治療などに有効であることが報告されている。しかも、臨床実験で、(クロルプロマジンと同様) MBが統合失調症や鬱病に有効であることも報告されている。しかも、クロルプロマジンと違って、パーキンソン病などの副作用を起こさない。逆にMBは (PAK依存性の) パーキンソン病の治療にも有効である! 固形腫瘍の増殖に必須な血管新生もMBで抑制される。従って、(PAK依存性の) NFに伴う脳腫瘍の治療にも有効なはずである。水溶性だから、経口すると、腸管からの吸収も良いはずである。しかも安価である (10 g が 約3千円)。 http://www.anpros.com.au/laboratory-chemicals/methylene-blue-a-r-grade-10g/
なお、 (「メトヘモグロビン血症」治療の場合) 経口投与量は、体重kg当たり3-5 mg, 通常はMBを生理食塩水に溶かして、1%溶液 (10g/liter) を調製して、静注あるいは経口投与(体重が50 kg なら、15ー25 ml) する。従って、一回の経口投与の薬価は最大 70円という計算になる。
参考文献:
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1. Xie L1, Li W,
Winters A, Yuan F, et al. Methylene blue induces macroautophagy through AMPK pathway
to protect neurons from serum deprivation. Front Cell Neurosci. 2013; 7: 56. 2013
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