ブラジル沿岸に生息する特殊な海鞘に存在するはず (あるいは屠殺した牛などの脳組織にも存在するかもしれない) 「STOHase」(STの3位を水酸化する=STー2001合成酵素)の活性を如何にして簡便に定量し、さらに如何に酵素を単離精製するか、その方法を先ず開発することが、このプロジェクトの成功への決め手 (鍵) となる。
定量法: STの水酸化により合成される「STー2001」の量を(間接的に)PAK1阻害活性で定量する。10年以上昔に我々が得た研究結果によれば、STのCD50は50 nM、「STー2001」のCD50は1 nM である。 言いかえれば、「STー2001」が生成されると、PAK1阻害活性が最大50倍までに上昇する。生化学の常識に従えば、この水酸化反応には 酵素以外に、空中の酸素、鉄イオンおよびBH4 (Tetrahydrobiopterin) が補酵素として必須であると推定される。
精製法: 水酸化反応に補酵素「BH4」が必須であることが予測通り証明/確認されれば、「BH4」Sepahrose などを使用して「affinity」精製することができるだろう。さらに、この酵素が「トリプトファン水酸化酵素」のごとく、カルモジュリン依存キナーゼにより燐酸化されるならば、ATPーagaroseやカルモジュリンSepharoseなども駆使して「affinity」精製が可能であろう。
さて、特に「トリプトファン水酸化酵素」に我々が何故こだわるかと言えば、実はSTは生合成の過程で、まず(アミノ酸の一種)トリプトファン2分子が重合して「インドールカルバゾール環」を形成後、単糖(ヘキソース)が結合し、更に様々な化学修飾を経たのち、最終段階で水酸化されると推定されるからである。脳内でトリプトファンは5位が水酸化されて、最終的には「セロトニン」という神経ホルモンに変化することが知られている。この位置は丁度STの3位に相当する。従って、海鞘では同じ酵素がSTの水酸化にも関与している可能性が考えられる。
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