数年前、我々は、(麻婆豆腐の味付けに使われる香辛料の一つである) 四川省特産の花椒 (の実) エキスにはPAK遮断作用があり、乳癌などの増殖を抑えることを発見した (1)。 もちろん、正常細胞には何ら悪影響を与えなかった。 しかしながら、その主要抗癌成分の化学的同定にはまだ成功していなかった。
ところが、2013年になって、中国の上海交通大学の研究グループによって、花椒 (の実)エキス中のポリフェノール「GXー50」 (1 mg/kg、腹腔注射) が認知症マウスの記憶を回復しうることが確認された (2) 。 前述したが、認知症の進行にもPAKが必須である。 従って、「GXー50」が (抗癌/抗認知症作用を発揮する) PAK遮断剤である可能性がある。 実際、「GXー50」の化学構造はPAK遮断剤であるCAPE (コーヒー酸 フェネチルエステル) やクルクミンと良く似ている:
プロポリス由来のCAPEのエステル結合が、花椒のGXー50ではアミド結合に置換されている。従って、CAPE同様、GXー50の化学的な合成も極めて容易であり、かつ安上がりに違いない (驚くなかれ、米国の試薬会社「シグマ」から既に"研究用"として市販されている!)。
ともあれ、花椒エキスがプロポリス同様、癌や認知症などの難病の予防に役立ち、最終的には「健康長寿」にも貢献するのは間違いなかろう。
参考文献:
1. Hirokawa Y,
Nheu T,
Grimm K,
Mautner V,
et al. 2006. Sichuan
pepper extracts block the PAK1/cyclin D1 pathway and the growth of
NF1-deficient cancer xenograft in mice. Cancer Biol Ther. 5: 305-9.
2. Tang M,
Wang Z,
Zhou Y,
Xu W,
et al. A novel
drug candidate for Alzheimer's disease treatment: gx-50 derived from
Zanthoxylum bungeanum. J Alzheimers Dis. 2013 34: 203-13.
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