人々の “健康促進” のために!

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2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2008年10月13日月曜日

物理学に強いが、医学に弱い日本人の頭脳?

今秋のノーベル物理学賞の受賞者が3人共いずれも日本人学者、南部、小林、益
川の諸氏となり、第一号の湯川氏を含めて合計7人の日本物理学者(七人の侍)
の独創的な業績が今日まで世界的な評価を受けたことが明白になった。ノーベル
化学賞をもらった日本学者も今秋で合計5名になった。ところが医学の分野では、
日本人でノーベル賞をもらった学者は一人もいない。1987年に米国MITの
利根川進氏(京大の理学部化学科出身)が医学生理学賞を受賞したが、彼の研究
内容は抗体遺伝子の進化/発生分化に関するもので、医学というよりは、「分子
生物学」と呼ばれる部類に属するもので、病気の治療には直接役立たない。しか
も、彼の研究は日本国内で行われたものではなく、スイスのバーゼル研究所で始
められ、かつ完成したもので、日本における医学や生物学の研究水準とは全く無
関係である。

さて、今秋ノーベル化学賞をもらった米国の学者3名の中に、日本人であるが米
国で長い間GFP研究をやってきた生化学者の下村氏(長崎大学薬学部出身)が
含まれている。彼がプリンストン大学で留学 (ポスドク) 中、1960年頃から
始めた、緑色の蛍光を発するクラゲから発見したGFPという蛍光蛋白に関する
開拓的な研究に対して、与えられたものである。これも純粋な生化学であり医学
には直接関係ないし、日本国内での研究成果でもない。日本では一体なぜ、世界
的な評価に価する独創的な医学研究が育ちにくいのだろうか? 今秋(「ノーベ
ル賞への近道」といわれる)「ラスカー医学賞」をもらった遠藤氏は製薬会社
「三共」勤務時代に、世界に先駆けて、コレステロール低下薬「スタチン」を開
発した研究者であるが、東北大の農学部出身である。

ちなみに(私が制癌剤開発研究のため20年以上永住している)豪州の人口は日
本の人口のわずか6分の1(約2千万人)に過ぎないが、ノーベル医学生理学賞
学者を戦後、なんと6名も産んでいる。戦後すぐ、抗生物質「ペニシリン」の開
発でノーベル賞第一号をもらったハワード・フローリーを始め、(胃潰瘍や胃癌
の発生主因である)ピロリ菌の発見で、最近ノーベル賞をもらったバリー・マー
シャル とロビン・ワレンなど全員、医学部出身である。もっとも数学を始め基
礎科学がかなり遅れている豪州では、物理学や化学でノーベル賞をもらったとい
う学者の例はまだ聞いていない。

医学部に進学するいわゆるエリート学生は、理系(自然科学志望)の学生の中で
最も頭脳明晰である(少なくとも、入学試験の合格点数が最も高い)といわれて
いる。従って、物理学や化学を専攻する学生よりも、学力的に劣っているとは考
えられない。とすると、日本において医学研究が不作な(独創性に欠けている)
のは、日本の大学の(法学部と同様、伝統的に最も封建的な)医学部における教
育のあり方、研究に対する基本姿勢に根本的な問題があるのだろうか?
 
巷では、日本人の研究が世界的な評価を受けにくいのは、日本人が英語の表現力
や会話力に弱いからだといわれている。しかし、果してそうだろうか? 素粒子
の研究で今秋ノーベル賞をもらった益川氏は、「英語嫌い」で海外の学会に出か
けない変人で有名だそうだが、海外でもちゃんと評価されている。医学部出身、
あるいは医学関係の研究者は、特に英語に弱いのだろうか? 多くの実例をみる
と、そんなことはとても考えにくい。(海外生活35年の私自身の体験によれば)
海外の学会でも、極めて流暢な英語を話している医学関係者が多い。

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