人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2015年10月26日月曜日

パブロフの条件反射(学習) の改善にはPAKが必須!
学習直前に白日光のパルス刺激を与えると、記憶力が増強する。

北京にある中国学士院 (科学アカデミー) 大学のグループらが最近、マウスを使った (記憶/学習能力に関する) 動物実験から、大変面白い 研究結果を発表した。夜間、学習直前に白日光のパルス刺激を与えると、(脳内の海馬) PAKが活性化され、マウスの記憶力が増強する。 ところが、PAK遺伝子を欠損したマウスでは、白日光のパスル刺激を与えても、PAKの活性化が起こらないため、記憶力の増強が見られない (1)。 ということは、夜中にトイレに行くために電灯をしばらく (15-30分間) 点灯した後、何かを学習すると、その記憶が長らく持続する理屈になる。。。  最近、豪州のクイーンズランド大学の研究グループによれば、超音波を頭部に照射すると、認知症患者 (マウスモデル) の記憶力が回復するという。  超音波で もPAKが活性化されるのだろうか?  面白いことには、数年前に国立台湾大学の研究グループによれば、細胞に超音波を照射してもPAKの活性化が起こるそうである (2)。

逆に、PAKが異常に活性化されると、記憶力が低下することが既に知られている。 従って、PAKレベルを正常に保つことが、効率の高い学習/記憶能力に必須であるらしい。。。

 パブロフの条件反射とは、例えば、愛犬に餌を与える直前に鈴を鳴らす習慣をつける (条件づける)と、餌を与えなくとも、鈴の音だけでも、愛犬がよだれを垂らすようになる (口に唾液が出てくる) 現象を指すつまり、餌と鈴の音との関連性を学習/記憶する (一種の「水平思考」) 能力を、 (犬や人間に限らず) 線虫を含めてあらゆる動物が備えている。

参考文献:
1. Shan LL1,2,3,4, Guo H1,3,4, Song NN5, Jia ZP6, Hu XT1,7, Huang JF2,8, Ding YQ5, Richter-Levine G9, Zhou QX1,2,3, Xu L1,2,3,4,7. Light exposure before learning improves memory consolidation at night. Sci Rep. 2015 Oct 23;5:15578.
2. Hou CH1, Lin J, Huang SC, Hou SM, Tang CH. Ultrasound stimulates NF-kappaB activation and iNOS expression via the Ras/Raf/MEK/ERK signaling pathway in cultured preosteoblasts. J Cell Physiol. 2009 ; 220(1):196-203.

2015年10月25日日曜日

NF1 (神経線維腫症 タイプ1) に併発する"自閉症状" (社交性の欠如) も
PAK遮断剤で 治療しうる!

NF1 遺伝子の欠損/機能不全による難病「NF1」には、脳内や皮膚に良性腫瘍がしばしば発生するが、この腫瘍はプロポリスなどのPAK遮断剤で治療しうる。

さて、これらの腫瘍以外に、自閉症に似た「社交性の欠如」が特にNF1の児童にしばしばみられる。 自閉症状はNF腫瘍の発生とは無関係であるが、果してPAK遮断剤で治療しうるのだろうか? 

典型的な自閉症は別の抗癌遺伝子「Fragile X」の機能不全によって発生するが、この種の自閉症はPAK遮断剤で治療しうることが数年前、MITの利根川進らによって、動物 (マウス) 実験で実証された。

さて、最近、米国のインディアナ大学医学部小児科のグループによって、NF1に伴う自閉症も 「PAK依存性」であることが突き止められた。 PAK遺伝子を欠損したマウスでは、NF1 遺伝子が機能不全を起こしても、腫瘍の発生どころか自閉症状も起こらない(1)。 更に、NF1 遺伝子が欠損したマウスを、PAK遮断試薬 (IPA-3, 医薬ではない) で処理すると、失われた社交性が回復することが判明した。 従って、プロポリスなどのPAK遮断剤によって、NF1の児童の (腫瘍ばかりではなく) 自閉症も治療しうる可能性がある。

参考文献:
1. Molosh AI1, Johnson PL2, Spence JP3, Arendt D4, Federici LM5, Bernabe C6, Janasik SP4, Segu ZM7, Khanna R8, Goswami C9, Zhu W8, Park SJ10, Li L9, Mechref YS7, Clapp DW11, Shekhar A12. Social learning and amygdala disruptions in Nf1 mice are rescued by blocking p21-activated kinase. Nat Neurosci. 2014; 17(11):1583-90. 

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2015年10月9日金曜日

PAK 遮断剤「PP1」の水溶性誘導体に関するUS特許 (US8962830B2)

発癌/老化キナーゼ「PAK」の細胞内での活性化には、いくつかのチロシンキナーゼが必須であるが、その内で、少なくとも2 種類のキナーゼ、ETK とFYN、を同時に抑えると、いわゆる「RAS癌 」(例えば、スイゾウ癌、大腸癌、肺癌など) の増殖がピタリと止まる。 この現象を我々が初めて見つけたのは、今世紀初頭(もう十数年前) のことである。 我々は当時、「AG879」と呼ばれるETK 阻害剤と「PP1」と呼ばれるFYN 阻害剤を併用して、マウスに移植したヒト由来の癌の増殖を抑えるのに成功した。 しかしながら、どちらの阻害剤も細胞透過性は高いが (IC50が10 nM 以下) 、水溶性に乏しいので、そのままでは臨床には応用しにくい。

そこで、先ず「AG879」分子の端にヘキシルアミンを付加して、水溶性の高い新規ETK 阻害剤 「 GL2003」の合成に成功した (1)。 更に、残る「PP1」の端に、同様にアミンを持つ一連のアルキル側鎖を付加することにより、水溶性を増す試みを続け、遂に2011年にその国際特許を申請した。最近、そのUS特許が許可されたことを、昔の同僚 (Tony Burgess at WEHI) から伝え聞いた(2)。 理論的には、GL2003 と「PP1」 誘導体 (例えば、PP12) を併用すれば、いわゆる「RAS癌 」やNF などの脳腫瘍の治療が、将来可能になったわけである。

次のステップは、これらの阻害剤の臨床試験を本格的に開始するために、大手製薬会社の一つに、この特許に基づく「創薬/売薬独占権」を保証するライセンスを売却することであろう。

参考文献; 

1. Hirokawa Y, Levitzki A, Lessene G, Baell J, et al (2007). Signal therapy of human pancreatic cancer and NF1-deficient breast cancer xenograft in mice by a combination of PP1 and GL-2003, anti-PAK1 drugs (Tyr-kinase inhibitors). Cancer Lett. 245: 242-51. 
2. Lessene G, Baell J, Burgess AW, Maruta H (2015). Protein kinase inhibitors and methods of treatment. US Patent (US 008962830B2).