人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2015年10月5日月曜日

大村 智 (北里研究所) らが2015年のノーベル賞 (生理/医学) を受賞!


熱帯性寄生虫が媒介する「オンコセルカ症」や「リンパ性フィラリア」(象牙病) などの伝染病の治療薬=駆虫剤「イバーメクチン」(Ivermectin) 1980年代に共同で開発した大村 博士 (北里研究所) やウイリアム=キャンベル 博士 (メルク社)、及びマラリアの特効薬「アルテミシニン」を1970年代に開発した中国女性研究者(ツウ ユーユー博士)が、本年のノーベル生理/医学賞を受賞することになった。特筆すべきことは、(偶然だが) 両特効薬とも天然物由来の「PAK遮断剤」であることである。なお、ツウ ユーユー博士は、アジア女性研究者として初めて、数年前に「ラスカー医学賞」を受賞している。 

皮肉なことであるが、この「アルテミシニン」開発プロジェクトは、ベトナム戦争の副産物(落し子)だった。中国国内では、1967年当時、もはやマラリアはそれほど蔓延していなかったが、(ベトコンを助けるために) ベトナム戦争に従軍した八路軍 (中国軍) には、密林でマラリアに感染して病死する兵士が絶えなかった。そこで、毛沢東の命令により、マラリア撲滅プロジェクト (523) が、(「文化大革命」末期の) 1967523日に開始された。その指揮を取ったのが、当時37歳のツウ ユーユー博士だった。 従って、もし「ベトナム戦争」がなかったら、恐らく「アルテミシニン」は、中国では誕生しなかっただろう。 彼女にとっては、「ベトナム戦争」は、結果的には「PAK戦争」の一環となったわけであり、それが最終的にノーベル賞へ結びついたのは、大変面白い。

大村さんは1960年代半ばから北里研究所で、抗生物質 (抗癌剤)「マイトマイシン」などを開発した秦 藤樹 教授 (1908-2004) の指導下で、抗生物質の開発を続けた。 秦さんは (パウル=エーリッヒ博士の指導下で梅毒の特効薬「サルバルサン」を開発して有名になった) 秦佐八郎 (1873-1938) 博士の養子である。 従って、大村さんは パウル=エーリッヒ博士 (1908年にノーベル医学受賞) の「曾孫弟子」 ということになる。

 今回の医学/生理学賞の対象になった感染症の治療薬によって恩恵を受けたのは、(アスピリンやペニシリンと違って) 主にアフリカの熱帯地方に住む未開 (開発途上) 民族なので、見方によっては、この受賞は「ノーベル平和賞」のジャンルに属するとも言えるだろう。

(大学時代の) 私の 後輩 (寄生虫学が専門) で、東大医学部で 目下アフリカ大陸の熱帯地方特有の感染症 「眠り病」 に対する特効薬を開発中の北潔教授は、少年時代に 「アフリカの星」: アルバート=シュバイツァーの伝記を読み、ひどく感動して、この道に入ったと言う。 同じ薬学領域なので、大村さんの受賞ニュースが発表されて以来、解説を求める 「メディア攻め」 に遭遇したそうである。 

つい最近、ドイツの研究グループによって、「アルテミシニン」の誘導体で、より強い抗癌作用 ( IC50 =10 nM) を示す化合物が開発された(1)

最後に一言。 村上春樹さん、残念ながら今年も ノーベル文学賞は「お預け」のようです。。。 私見になるが、知識層 (インテリ) の読者には、彼の作品は「大衆小説」/「通俗小説」という印象が強く、更に (痛烈な) 問題提起が明らかに欠如しているため、ノーベル文学賞には値しないと判断されているようである。

参考文献:
1. Reiter C1, Fröhlich T1, Zeino M2, Marschall M3, Bahsi H3, Leidenberger M4, Friedrich O4, Kappes B4, Hampel F1, Efferth T5, Tsogoeva SB6. New efficient artemisinin derived agents against human leukemia cells, human cytomegalovirus and Plasmodium
falciparum: 2nd generation 1,2,4-trioxane-ferrocene hybrids. Eur J Med Chem. 2015 ; 97:164-72.

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