人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2017年7月16日日曜日

SF 劇場: 健康長寿の薬 「CAP 40」


僕は老犬である。ニュージーランド生まれの 頭の良い白黒の「シープドッグ」(羊飼いの犬) である。名前は「チャーリー」。飼い主のお気に入りの喜劇俳優 「チャーリー=チャップリン」 から名前をもらった。ご主人と一緒に 「マクロン共和国」 の南部、モンブランの山麓に最近住み始めた。  主人は隠居生活を10年ほどアメリカで過ごしていたが、最近 「トランプ合衆国」に なったので、幻滅して、こちらに引っ越してきた。 主人は 「独裁者が大嫌い」 だといっている。

ところで、ご主人の職業はといえば、抗癌剤の開発研究を欧米で長らく続けていたが、リタイアしてからは、新しい「健康長寿の薬」の発掘もてがけているようだ。といっても、自分で研究するのではなく、自宅でパスコンを駆使して、メールを介して、世界中の若い研究者の 「リモコン指導」(無給奉仕) を続けている。 何故そんな事を僕が詳しく知っているかといえば、僕には犬と人間の言葉を両方理解できる特技があるのだ。少なくとも日本語、英語、ドイツ語、フランス語なら理解できる。
中国語やロシア語は苦手である。 犬語は「万国共通」である。

ご主人は現在、独身である。その昔、一度結婚したことがあったようだが、研究に没頭し過ぎたためか、とうとう伴侶に捨てられた。もっとも、僕には三度の食事を忘れずに用意してくれるし、天候が許せば、毎日、朝と夕方には、散歩に連れていってくれる。だから、不満は全くない。それに、散歩の道すがら、時々研究の発展状況も詳しく説明してくれるので、退屈もしない。 ご主人も僕に似て、かなり頭がきれるようだ。 最近、いくつの発明、発見をして、特許を取得して、その一つをある欧米の大手製薬会社へ売却に成功したそうである。最近、特許権売却で稼いだ大金で 「健康長寿財団」 を設立し、健康長寿に役立つ薬の開発研究を振興する活動に徹していると聞いている。

40年ほど昔、ご主人がまだ若い頃、米国で 「PAK」 と呼ばれる奇妙な酵素を土壌アメーバ中に発見した。その後、同じような酵素が人などの哺乳類にも存在することがわかった。不思議なことに、この酵素は、我々の生命には全く必須ではない。むしろ存在しないほうがずっと長生きする。 従って、加齢酵素とも呼ばれている。更に、この酵素には発癌性がある。 従って、PAKを阻害する物質には、抗癌性質もあれば、健康長寿にも寄与するわけである。 いいかえれば、PAK 遮断剤は、副作用なしに癌を治療しうる。 そのようなPAK 遮断剤を開発し市販すれば、ノーベル賞間違いなしである。 ご主人は、明らかに、それを長らくめざしてきた。 しかし、75歳に近ずき、最近多少あせりを感じ始めた。

そこで、思案の結果、ある名案が脳裡に閃いた。2000年にノーベル化学賞をもらった米国の有機化学者 (Barry Sharpless) がClick Chemistry (CC2) という 化学反応を考案した。 この反応を使うと、2段階で、COOHを持つどんな化合物でもエステル化によって、細胞透過性を飛躍的に増進することができることを、ご主人が発見して特許にして、売却した。 しかし、この方法は、実験室での小規模な反応では安全だが、工業化して大規模で反応させると、"爆発を伴う危険性" があった、 将来、製薬のために常に「安全操業」するには、爆発性のない反応を見つける必要があった。 そこで、ご主人は、忍者の里 (伊賀) に住むある有機化学者の助けを借りて、CAP Chemistry (CC1) と呼ばれる、たった一段階で、(爆発なしに) エステル化が可能になる新しい試薬  (CAP 試薬)  を発明して、新しい特許を申請した。 そして、そのCC1 で、 「MAP」 と呼ばれ抗生物質 (PAK遮断剤)COOH 基をエステル化 (CAP) することに成功し、「CAP 40 」と命名した。

「CAP 40」は非常に強い抗癌作用を持つばかりではなく、線虫の寿命を40% 延長することもわかった。つまり、副作用を全く生じない (PAKを遮断する) 合成抗癌剤がついに誕生した!

その論文を発表するや、ご主人のところにメールがひっきりなしに殺到し始めた。ある朝、ストックホルムからも一通のメールが届いた。実はご主人は電話や自家用車が嫌いだから、我が家には電話も車もない!「来たる12月10日 (故アルフレッド=ノーベルの誕生日) に、CC2 の発見者と共に、ストックホルムにご来訪下さい」 という伝言だった。友人 Barry Sharpless にとっては、 化学部門で2度目の受賞になった。 実は、バリーが2000年に受賞したのは、別の発見によるものだった。 ご主人は、バリーを手助けすることによって、思いがけない ("棚ぼた") 受賞 を受けることになった。 ストックホルムから帰宅すると、ご主人は僕の首にメダルをぶら下げて、こう言った。「日本で初の女性ノーベル受賞者になりました。 メダルは、(忠犬への) ご褒美としてチャーリーにあげましょう」。 以来、近所の犬たちも、僕に少し敬意を表するようになった。 ご主人は、「CAP 40」など一連のPAK 遮断剤が市販され、多くの患者たちの難病が治癒される日を、なお首を長くして、待ち続けている。もし、 それがご主人の生きている内に実現すれば、2度目の受賞 (本命の"医学賞") も夢ではない。 (僕の記憶が正しければ)  女性でも、ノーベル賞を2度受賞した一例が、一世紀以上昔にある。 「ラジウム発見」のキュリー夫人である。

例の ("棚ぼた") 受賞は、東京で開催された2020年の夏期五輪の直後だった。やがて、平成天皇も生前退位し、東宮御所に引越しされ、代わりに皇太子夫妻が皇居で即位し、年号を 「先見」 と改めた同じ頃、総選挙で(おごれる) 自民党政権 が見事に大敗し、「国民ファースト」の党首が初代女性首相として就任した 。(了)

2017年7月14日金曜日

パリ祭: (メルボルンにある) 我が家で始めた "新しい伝統"

今日 (7月14日) はフランスの (1789年) 革命記念日である。日本 (特に東京)では、「パリ祭」 と呼び、(大正デモクラシー時代から) リベラルなインテリたちがフレンチベレーをかぶり、フレンチワインを飲みながら、自由と平等と博愛を謳歌する日でもある。 (実は「独文専攻」の) 我が父がまだ健在であった頃、我が家では、父のバイオリンの伴奏にあわせて、(勿論「フランス語」で) フランス国歌 (ラ=マルセエーズ) を合唱したり、シャンソン等を歌いながら、モンブランなどのケーキに舌づつみを打ったものである。 私の渡米前のことだから、もう40年以上も昔のことであるが。

今年の「パリ祭」は特別の意味を持つ。若いマクロンが選挙で大勝して、いわゆる 「マクロン共和国」 をフランスに樹立したからである。今や、世界は、孤立主義のトランプの米国ではなく、マクロンのフランスに、主導権を譲った感がある。ドイツのメルケル首相の人気にも陰りがさし始めている。 そこで、今日は 「マクロン共和国」の誕生を祝って、我が家に(フランスの) 三色旗を掲げる準備を始めた。使い古しの枕カバーに、赤と青の水性ペンキで色を塗り、目下裏庭で乾燥中である。長い棒(ポール) の先に滑車を取り付けて、国旗 (三色旗) を我が玄関前に、「パリ祭」の日だけ (厳かに) 掲揚するという、我が家の「新しい伝統」を築くことにした。 近所の反響や如何に?  マクロン同様、都議選で大勝した小池都知事は、今年のパリ祭をどんな気持で迎えているか、大変興味深い。。。