人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2013年8月24日土曜日

PAK阻害剤「FRAX597」がNF2腫瘍(シュワノーマ)の増殖を抑制!

「FRAX597」はMIT教授である利根川進(1987年医学/生理学ノーベル受賞
者)が創立した「Afraxis」というベンチャー会社により最近開発されたPAK1
阻害剤の一つであるが、私の理解が正しければ、スイスの製薬会社ロッシュ
傘下にある米国の「ジェネンテック」へ特許のライセンスが最近下ろされ、まも
なく臨床試験が開始される可能性のある合成新薬である。しかしながら、今まで、
その薬理作用データが殆んど公表されていなかった。さて、この8月末になって、
ようやく最初の薬理データ(NF2腫瘍を対象とする動物実験結果)が米国フロリ
ダ州にあるスクリップス研究グループ (1)によって発表されたので、それを以
下に要約したい。

NF2腫瘍は、NF2遺伝子産物(メルリン=PAK1阻害蛋白) の機能不全によって
主に脳内に発生する良性腫瘍(シュワノーマとメニンジオーマの2種)であり、
その増殖にPAK1が必須であることは、既に何度か前述した。そこで、シュワノーマ
腫瘍細胞 (SC4株) の増殖に対するこの薬剤の効果をまず調べた。 細胞
培養系でIC50(細胞増殖を50%抑えるのに必要な薬剤濃度) は1 micro  M
だった。試験管内で、直接PAK1を50%阻害するのに必須な濃度 (IC50)が
わずか10 nM  (100 分の1) であることから、この薬剤の細胞膜透過能が極めて
悪いことが判明した。更に、このNF2腫瘍をマウスに移植したのち、この薬剤が
腫瘍増殖を強く抑える濃度を調べたところ、毎日100 mg/kgの経口投与が
必要であることが判明した。

我々が数年前に、NZ (ニュージーランド) 産プロポリス「Bio30」で、週2回
100 mg/kgの投与で、完全にNF2腫瘍を萎縮させたデータと比較すると、
この新薬は残念ながら、プロポリス以上に効果があるとは言いがたい。 しかも、
市場に出るのは、恐らく10年先のことであり、「ジェネンテック」から発売されれば、
きっと高価な薬となるだろう。従って、NF2患者が一生飲み続けなければならぬ薬
としては、余り推奨できない。

 むしろ、私が将来に向けて推奨したい新薬は 「IPAー3」 と呼ばれる合成PAK1
阻害剤である。 この阻害剤もまだ開発途上にある新薬であるが、香港大学の
研究グループによる最近の動物実験結果 (2) では、週3回 4 mg/kg  の投与で、
肝臓癌 (ヘパトーマ) の増殖を強く抑えることが判明した。 つまり 「FRAX597」
 に比べて、100倍近い効果がある!  この実験結果は、実は「意外」だった。
その理由は、前述の英文で詳しく論じたが、培養系では、余り薬効が優れなかった
からだ (IC50= 30 micro M!)。 恐らく、この薬剤は動物体内で何らかの代謝
 (例えば、配糖化) を受けて、強力な新しい(未知の) 阻害剤に変化したに違いない。

 「アルクチゲニン」について

蛇足だが、ゴボウシ(牛蒡の種)には、「アルクチゲニン」と呼ばれる抗癌成分が
含まれていることが、最近話題になっているようだ。 目下、国立癌センターを中
心に治験が進められている「アルクチゲニン含有のゴボウシエキス」( GBS-01)
は、直接の証明はないが、PAKを遮断していることは疑いない。すいぞう癌の
増殖、炎症、流感の感染、血管新生などを抑制、PAKの下流にあるERKを遮
断するからだ。 しかし、(特許によれば) エキスのアルクチゲニン含量は高々10%
であり、プロポリスの10倍以上経口しないと、抗癌作用が顕著にならない。 更に、
正常細胞の増殖に必須な「AKT」というキナーゼをも抑制することが知られて
いる。従って、大量に服用すれば、必ず副作用が出るに違いない。 従って、余命
いくばくかの末期すいぞう癌者の治療は別として、一生服用を必要とするNF/
TSC患者にはお勧めできない!  副作用のない(AKTを抑制しない) プロポリスや
花椒エキスをむしろ、NF/TSC患者には推奨したい。

参考文献:
 
  1. Licciulli S, Maksimoska J, Zhou C, Troutman S, Kota S, Liu Q, Duron S, Campbell D, Chernoff J, Field J, Marmorstein R, Kissil JL. FRAX597, a small molecule inhibitor of the p21-activated kinases, inhibits tumorigenesis of NF2-associated schwannomas. J Biol Chem. 2013 Aug 19. 
  2.  Wong LL, Lam IP, Wong TY, Lai WL, Liu HF, Yeung LL, Ching YP. 2013. IPA-3 Inhibits the Growth of Liver Cancer Cells By Suppressing PAK1 and NF-κB Activation. PLoS One. 8: e68843.

2013年8月8日木曜日

A New Target of the PAK1-3 Inhibitor IPA-3 (or Its Metabolite) ?


How Does IPA-3 Suppress the Cancer Growth in vivo Effectively? 

Recently a group at University of Hong Kong (1) reported that IPA-3, the direct inhibitor of PAK1-3 (group 1 of PAK family kinases) strongly suppresses the growth of human hepatoma xenograft in mice even at very low dose (4 mg/kg, i.p., three times a week). As far as my knowledge concerns, this is the first report that IPA-3 works on cancers so effectively in vivo. However, considering the IC50 in vitro (cell culture), which is around 30 micro M, it is rather unlikely that the major (most sensitive) target of IPA-3 responsible for the suppression of cancer growth in vivo is PAK1-3.

In a common sense, if a given drug ‘s IC50 in vitro is around 30 micro M, the doses far more than 100 mg/kg would be required for the suppression of cancer growth in vivo. In other words, something other than PAK1-3 could be the major target of IPA-3 or its metabolite in vivo. IPA-3 contains a disulphide bond which combines two 2-naphthalenol molecules, and in cells it binds covalently the auto-inhibitory domain (AID) of PAK1-3, and inhibits the binding to CDC42 at around 2 micro M, clearly indicating that its cell permeability is pretty poor.

Generally speaking, the drug working at such a low dose in vivo, its IC50 for the major target should be around 10 nM  in cells, less than 1/1000 of the IPA-3’s IC50 for inhibiting PAK1 in cells. Thus, it is most likely that IPA-3 is just a “pro-drug”, and in vivo (circulation) it is converted to an unknown molecule which then enters the cells far more efficiently, and inhibits its new (to be identified) target at around 10 nM. 

How can we identify this responsible metabolite of IPA-3 and its target?  Suppose we have a radioactive S35-IPA-3 molecule in our hands. Inject this radioactive molecule into mice or feed nematodes (C. elegans) with bacteria cultured in a medium containing this radioactive molecule. Collect the serum from mice or an extract of the whole nematode to analyze through HPLC. Before the analysis, the radioactive serum or extract should be incubated with cancer cells, and select the radioactive materials highly permeable through cell membranes, and determine its major intracellular localization. If its binding to its target protein(s) is covalent, we can identify the radioactive protein band (s) by SDS-PAGE.

Nevertheless, I suspect that the major target of this IPA-3 metabolite would be PAK1-3 per se or among their major targets (effectors) such as LIM kinase and beta-catenin, because the phenotypes of both PAK1-deficient (knock-out) and IPA-3-treated mice are very similar if not the exactly same.     

Reference:
  1. Wong LL, Lam IP, Wong TY, Lai WL, Liu HF, Yeung LL, Ching YP. 2013. IPA-3 Inhibits the Growth of Liver Cancer Cells By Suppressing PAK1 and NF-κB Activation. PLoS One. 8: e68843.

2013年8月6日火曜日

オリバー・ストーン語る:トルーマン米大統領は「大ウソツキ」だった!
「原爆」を広島/長崎に投下する正当性は全くなかった!

アカデミー賞の受賞作品「プラトーン」などで知られ、米国の軍事展開を批判する
米映画監督のオリバー・ストーン氏(66)が、広島の原爆の日など に合わせて
来日している。15日まで長崎、沖縄を回り、原爆や米軍基地問題について人々
と対話する予定だ。

トルーマン米大統領による日本への原爆投下に「正当性は全くなかった!」と指摘、
「歴史を正 しく記憶することが大切」と訴えている。

 「米国は日本がソ連に侵略されることを恐れていた。 だから日本が降伏したがっ
ているのを知りながら、ソ連のスターリンを威嚇するため、日本に原爆を落とした」

(つまり、原爆投下はトルーマン大統領の「反共政策」の一環に過ぎなかった!)。
広島市で市民団体のシンポジウムなどに参加したストーン氏は強調する。

 昨年、歴史学者でアメリカン大准教授のピーター・カズニック氏とテレビドキュ
メンタリー「もうひとつのアメリカ史」を制作、同名の本を出版した (日本語版
は早川書房「オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史」)。公文書を
ひもとき、戦時中から今のオバマ政権まで続く覇権主義に疑問を投げ かける内容
だ。

 すべての元凶とみるのが日本への原爆投下。戦争を早く終わらせ、多大な犠牲
を防ぐのに必要だったという米国の正当化理論に対し、ストーン氏は「私 も長年、
投下は正しかったと信じていたが、それは神話、ウソだと分かった。今も子ども
たちはウソを教えられている」と指摘する。(朝日新聞:2013年8月6日朝刊から抜粋
/編集)

 注釈:
1995年出版のガー・アルペロビッツ著「Decision to Use the Atomic Bomb」
(原爆投下決断の内幕)によれば、トルーマン大統領の原爆使用に関する弁明(原
爆は日本の降伏を早める目的だった)が、実は「真っ赤なウソ」であるばかりで
はなく、原爆を使用せんがために、正に降伏しかかっていた日本の降伏を故意に
遅らす策略も画した。 つまり、終戦直前の6月になるまで、米国では原爆がまだ
製造されていなかった。 そこで、2種類の原爆製造が完成するまで時間稼ぎに、
トルーマンはポツダム宣言で、日本に無条件降伏(天皇制廃止)を要求した。日
本がこれを拒否することをお見通しだったのだ。 馬鹿な日本政府はその罠にまん
まとはまって、ポツダム宣言を拒否した。 こうして、米国は日本の降伏直前(8
月)に、初の(人体実験用)原爆(ウラニウム弾とプルトニウム弾)を一発ずつ
用意することができた! その実験結果は我々の歴史が周知するところである。