人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2014年12月30日火曜日

「新薬の治験」で確認すべき事項: 最大許容量と有効投与量


マウスなどを対象にした動物実験の結果、安全かつ有効であると判明した新薬は、市販前に、人類にも安全 (副作用がなく) かつ (ある特定の病気の) 治療に有効であることを治験で証明 (確認) する必要がある。その理由は、ある特定の新薬 (化合物) に対する耐性や感度が、マウスなどの小動物と人類との間に差がある可能性があるからだ。そこで、治験では、先ず「フェーズ1」で、その新薬の最大許容量、つまり副作用の出ない最大投与量を動物実験の結果を参考にして、決定しなければならない。この場合、通常(健康な)ボランチアを募集し、一定の報酬(保証金)を支払った上で、投与量を徐々に増して、許容できる最大量を知る必要がある。

次に「フェーズ2」では、ある特定の病気を患っている患者の中から、一定数のボランチアを募集し、最大許容量以内で、病気の症状を有意に軽減あるいは治療しうる最低の投与量を確認する必要がある。従来は「フェーズ2」で、新薬の代わりに、偽薬(プラシーボ)を投与する患者群を設定していたが、これは前述した通り、「人道的でない」(患者のモルモット扱いである)から、今後の治験では、プラシーボ群は省略すべきである。大部分の難病は進行性なので、もし、新薬の投与によって、症状が安定化(進行の停止)あるいは軽減されれば、その投与量で新薬がある程度「有効である」ことが明白らかであろう。

(実験動物と違って、「クローン化」されていない) 患者のプロポリスや医薬品に対する感度には、個人差ばかりではなく病気の種類や症状の重さによっても、かなり差があるので、実際の投与量は、最大許容量(上限)と最低有効量(下限)の範囲内で、(注意深くモニターしながら)臨機応変に調節する必要があることは言うまでもない。 例えば、NZ産のプロポリス「Bio30」の場合、末期 (転移した) スイゾウ癌の治療には体重1kg当たり、毎日1 mlの投与が必要であるが、初期 (良性と悪性の境界にある) スイゾウ癌の治療には、その10分の1 (体重10 kg当たり、毎日1 ml) でも十分である。勿論、どちらの投与量でも副作用は全くない。 更に付け加えれば、流感 (インフルエンザ) などの感染症の予防のためには、成人でも子供でも、一日に 0。5 ml という小量で十分である。 

なお、プロポリスや銀杏 (Ginkgo) エキスは、先進国ドイツでは半世紀ほど昔から、「薬局方」の生薬 (漢方薬) として認定されているが、なぜか日本薬局方ではまだ認められていない。この点でも、日本はドイツから学ぶべきである。 
 

2014年12月27日土曜日

治験 (臨床試験) で難病患者を 「モルモット扱い」 するな!

新薬の臨床試験で、患者を2群に分けて、一群には「テストすべき新薬」を、他群には薬効のない「偽薬」(プラシーボ)を与え、この2群の間に(統計処理で)薬効の違いがはっきり出れば、つまり新薬を経口した患者群のほうが、偽薬を経口した患者よりもずっと病状が軽くなれば、新薬は有効であるという結論(診断)を下すという、(当世風の)治験のやり方は(科学的には正しくても)「人道的」には明らかに間違っているので、私は強く反対したい。 患者を 「モルモット扱い」 してはならないからだ!

理由は以下の通りである。治験の前に動物(例えば、マウスやモルモットなどを使った)実験で、新薬の薬効が、偽薬より有意に高いことが科学的にはっきり証明されているはずである。 つまり、新薬の効果は単なる心理的(催眠術的)作用ではなく、物理的に薬効があることが実証されているはずである。人類以外の動物には催眠術はかからないからだ。従って、再び(治験で)患者をモルモット代わりに使用する必要は全くないのである。 患者の半分に偽薬を与えれば、薬効は全くないのであるから、医者はその患者をはっきり(意図的に)騙していることになる。 倫理的に許し難い! 

私がこのような結論に達したのは、十数年前に、次のような映画シーンに遭遇したからである。一世紀ほど昔、世界中にジフテリアが蔓延して、多くの子供たちが次々に死んでいった時期があった。ドイツのベルリンにある有名な大学病院に40人のジフテリア患者(子供たち)が入院していた。コッホ伝染病研究所で2人の若い研究員(エミールとパウル)が(北里柴三郎のアイディアに基づいて)ジフテリアの抗血清を開発した。そして、モルモットでその血清がジフテリアに有効であることを確認した。そこで、その血清を大学病院にもってきて、40人のジフテリア患者に注射したいと申し出た、ところが(石頭の)病院長はこう言った。
「20人には抗血清を、残りの20人には血清を与えないという条件なら、許可をしよう。 もし、抗血清を得た群だけが有意に病気から回復したら、抗血清の効果を認めよう」。 

2人は抗血清を最初の20名に注射し始めた。ところが、20人目の子供がもう死んでいた。 そこで、代わりに21人目の子供に抗血清をやった。 さて、2人は病室を引き揚げようとしたが、ドアのガラス越しに、患者の母親たちの哀願するような目に会った瞬間、病室に引き返して、残りの19名の患者にも抗血清を与えてしまった! それを聞いて(例の)病院長がかんかんに怒った。 翌朝、39名の患者が全部、快方に向かったことが判明した。 話に面白い付録がついた。21人目の少年はなんと 「厚生大臣の孫息子」 だった。 大臣のはからいで、エミールはマールブルグ大学の教授、パウルは新設の "血清研究所" の所長に抜擢された。 この研究所は、今でも「癌研」 としてフランクフルトのマイン川河畔にある。

このジフテリア抗血清による快挙で、2人はのちにノーベル医学賞をもらった。 2人の学者はエミール=フォン=ベーリングとパウル=エーリッヒだった。 この古い映画の邦題は 「偉人エーリッヒ博士」(Dr. Ehrlich's Magic Bullet) !
 

2014年12月25日木曜日

懐かしの名画 (シネマ): エーリッヒ博士の 「魔法の弾丸」


原作の映画Dr Ehrlich's Magic Bullet) 1940年に米国「MGM」で制作された。ヨーロッパでナチスドイツが侵略戦争を開始した直後である。主テーマは勿論、「化学療法の父」と呼ばれている(ユダヤ系ドイツ人)パウル=エーリッヒ博士の伝記物語であるが、その背景にはヒットラーによる独裁政治(全体主義)に対する強い批判が込められている。この白黒映画は私の最も大好きな作品で、1998年に米国でビデオを初めて入手して以来、何度も繰り返して観ている。私の専門は癌研究、特に新しい抗癌剤(PAK遮断剤=「魔法の弾丸」)の開発研究であるが、この癌研究に専念するきっかけを作ったのは、(大学入試直前に読んだ)エーリッヒ博士の伝記本だった。以来、この映画を実際に観ることが私の長い夢だった。その夢が35年ほど経ってようやく実現した! 
主人公 (医者で伝染病学者) の情熱は、(ジフテリア菌や梅毒菌などの) 病原菌を特異的に(副作用なしに) 退治する薬 (魔法の弾丸) をひたすら開発することであった。そのために、梅毒菌スピロヘータに特異的な親和性を示すアニリン化合物をスクリーニングした結果、「606番目」の化合物(サルバルサン)が梅毒の特効薬であることが判明した。 旧約聖書に、羊飼いの少年デビッドが大男(敵の大将)ゴリアテのこめかみを狙い、パチンコの玉(小石)一発で倒す話があるが、この弾がそもそも「魔法の弾丸」の由来である。従って、映画は、ナチスドイツを倒すべき欧米諸国の努力(闘い)をも裏に秘めている。 この映画は、彼の同僚であるエミール=フォン=ベーリングとの友情物語でもある。(秦佐八郎など)博士の弟子たちとの師弟愛も良く描かれている。

更に、彼の賢い愛妻との愛情物語でもある。臨終間際に、愛弟子たちを病床に招き、隣の部屋で妻が静かに弾くピアノ曲に耳を傾けながら、世を去っていく白髪の博士 (61) の姿が非常に印象的だった。

夫の死後、ユダヤ人だった夫人は2人の娘と共に、米国に亡命せざるを得なかった。ナチスによる「ユダヤ人迫害」のためである。博士の秘書もユダヤ人であり、英国へ亡命した。そして、この秘書が英国で出版した「エーリッヒ伝」を私が高卒直前に、偶然(神田の古本屋で)読む機会に預かったわけである。勿論、この多才な秘書もこの映画に登場する。映画の脚本は有名な映画監督ジョン=ヒューストンが、この「エーリッヒ伝」に基づいて脚色したものである。

 日本人向けの「日本語字幕入り」のビデオが作成される日が待たれる。。。 日本では、この映画は 「偉人エーリッヒ博士」 という邦題で、1941年8月(開戦直前)に初公開された。  
 http://ucchy.tea-nifty.com/osa/2008/04/99_e398.html
日本の「抗生物質の父」梅沢浜夫(東大医学部/伝研)教授(「微化研」の創立者)もこの映画を観て、ペニシリンの開発を始めた。 この映画で、伝研から派遺された「秦佐八郎」役を演じた "日系二世" の俳優(堀内義隆)は戦後、梅沢教授の(渡米前の)英語会話の先生を務めた。  なお、梅沢教授は1980年に 「パウル=エーリッヒ」 賞をもらった。


沖縄特産の植物にはPAKを直接阻害する物質が含まれている。

琉球大学農学部 (多和田真吉教授) と鹿児島大学農学部チームとの最近の共同研究によれば、沖縄特産の植物、特に月桃 (ゲットウ) やギンネムの葉、苦瓜 (ゴーヤ) などに、PAKを直接阻害する物質が多く含まれていることが判明した (1)。

特に注目すべきは月桃の葉由来の 「ヒスピディン」 と呼ばれる代謝産物で、レスベラトロールと同様3個の水酸基を持つ (ベンゼン環とピロン環が連結した)  ポリフェノール誘導体で、その水酸基を全部メチル化するとPAK阻害活性が5倍ほど増強され、IC50が 約1 micro M になることが判明した。

従って、PAK遮断剤 「ロットレリン」 を含む 「クスノハガシワ」 果皮  (赤い染料 「カマラ」) と同様、これらの沖縄特産植物由来のエキスは、癌などの難病治療や健康長寿に寄与するばかりではなく、美白を主な目的にした化粧品 (クリーム) にも今後広く利用される可能性がある。

参考文献:
1.      Nguyen, BCQ.,  Taira, N., Tawata, S.  Several Herbal Compounds in Okinawa Plants Directly Inhibit the Oncogenic/aging Kinase PAK1.  Drug. Discov. Ther.  2014, 8: 238-44.