人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2015年4月23日木曜日

海洋生物 “ナマコ” も、水溶性の抗癌性サポニン (PAK遮断剤) を含む。

京大薬学部卒の島田恵年が1969年にナマコから、水虫に効くトリテルペン配糖体を同定した。そのナマコ由来の物質は、”ホロスリン” という水虫薬として市販されている。


さて、ナマコ由来のトリテルペン配糖体は水虫ばかりではなく、その他各種の病気にも有効であることが、最近知られている。
http://www.jinshomaru.com/original15.html

数年前に、米国シカゴにあるがんセンターのトマス=アドリアン教授の研究室により、大変面白い発見がなされた。海洋生物ナマコ (北大西洋産)の水溶性エキスが、すい臓がんの増殖を抑え, その抗癌主成分は、フロンドシドA (FRA) と呼ばれる トリテルペン配糖体 (サポニン)。 水溶性であるから、腸管吸収がよく、動物実験では、毎日 体重kg当たり1 mg でも、がんの増殖を50%阻害する(1)。ただし、それ以上投与しても、なぜか、その抑制度は高まらない。 従って、この配糖体だけでは、がんの完治は難しい。

その抗癌作用のメカニズムはまだ良くわからないが、p21遺伝子を活性化することから、PAKを遮断している可能性が高い。 最近、我々の手で、FRAが直接、PAKを阻害することを突き止めた (2)。 目下、沖縄プロポリス(OP) 同様FRAがせんちゅうの健康寿命を延ばすかどうかを検討中である。

さて、ナマコは英語でSea Cucumber と呼ばれる。直訳すれば、“海瓜”である。面白いことには、陸の瓜で、ゴーヤとかヘチマにも、抗癌性のトリテルペンが含まれていることは、前述した。“ククルビタシン”と呼ばれるPAK遮断剤である。この2つ (海の幸と陸の幸) を組み合せたら、すい臓がんは完治できるだろうか? 試してみる価値はあると思う。

沖縄の ”黒ナマコ” シャンプーには育毛効果があるという広告を最近、インターネットで見た。そこで、その科学的根拠を研究するプロジェクトも開始した。  我々による最近の研究結果に従えば、少なくとも沖縄近海のナマコエキスにも、(Bio 30 や沖縄プロポリスに匹敵する) 強い抗癌作用があることが確認された。 目下、PAK遮断作用の有無を検討している。

ひょっとすると、ナマコ中のサポニン成分(トリテルペン配糖体)によるのかもしれない。 高麗人参中のサポニン (ジンセノシド)には(抗癌作用・美白作用ばかりではなく)毛作用も知られているからである (3)。 “水平思考”の得意な人なら、海に住むナマコ (中国では、“海参”、つまり海の人参と呼ばれる)を、陸に育つ人参や瓜に例えることに、それほど抵抗は感じないはずである。育毛作用のある物質の中から、抗がん剤を探し出すというやり方には、大きな意義がある。なぜなら、脱毛作用という副作用を持たない抗癌剤が開発しうるからである。
 


 参考文献:
1Al Shemaili J1, Mensah-Brown E2, Parekh K3, Thomas SA3, Attoub S4, Hellman B5, Nyberg F5, Adem A4, Collin P6, Adrian TE7. Frondoside A enhances the anti―proliferative effects of gemcitabine in pancreatic cancer. See comment in PubMed Commons belowEur J Cancer. 2014 ; 50: 1391-8.
2.  BC. Nguyen, K. Yoshimura, S. Kumazawa, S. Tawata, H. Maruta. Frondoside A from Sea Cucumber and Nymphaeols from Okinawa Propolis: Natural anti-cancer agents that selectively inhibit PAK1 in vitro. Drug Discov. Ther. 2017, in press.
3. Park GH, Park KY, Cho HI, Lee SM, et al. Red ginseng extract promotes the hair growth in cultured human hair follicles. J Med Food. 2015; 18: 354-62.




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2015年4月20日月曜日

“二人で紡いだ物語” (米沢富美子著)

今から十数年前に出版された高名な女性物理学者の興味深い手記(回想録)を琉球大学の図書館で偶々見つけたので、 (院生の研究を指導する合間に)  少しづつ読んでいる。
著者は1938年に大阪生まれ、京大出身の理論物理学者で、ノーベル受賞者である湯川秀樹や朝永振一郎などの後輩である。修士時代(1961年)に京大経済学部出身の米沢まさ晴と結婚生活を始めた。 大学のエスペラント語クラブで初めて知り合った仲であった。“君の好きな物理と僕との結婚を両立させなさい”という言葉に惚れ込んで、結婚生活を始めたそうである。とても運の良い女性である。もっとも、彼女には、人並み外れた学者らしい才能があったから、この難しい両立に成功したのであろう。そして、研究を続けながら、3人の娘を立派に育て上げた。 私に言わせれば、彼女は、“日本のマリー=キューリー的存在”である。
冒険好きで、しかも寂しがり屋の彼女は、証券会社勤めの夫がロンドンへ海外出張になると、進んで英国の大学への留学を断行して、一年間のハネムーンを楽しむ。帰国後、湯川氏が創立した京大の基礎研に院生(博士課程)として、入所し、世界的に有名な “米沢(CPA 理論”を確立する。そして、東京勤務になった夫を追って、朝永氏の教育大理学部の助手に就職する。ちょうど朝永氏が1965年にノーベル賞を受賞した直後である。
間もなく、京大に戻り、(狭き門である)基礎研の助手(五年契約)に見事に採用される。以後、東工大で助手、基礎研で助教授を経て、1983年に慶応大学工学部の教授に就任した。1996年には、日本物理学会の会長≪女性としては初めて≫に就任する。その前後に、(35年間、助け合って生きてきた)夫が肝臓がんで急に死亡。 2004年に、定年で慶応大学を退官し、その翌年、ロレアル―ユネスコ女性化学賞を授与される。持ちの大胆さと辛抱強さを発揮して、日本の女性科学者として“頂点”に達した。
しかしながら、女性が実験科学分野で、これに匹敵するような業績を上げることは、極めて困難である。 (紙と鉛筆あるいは"パソコン"だけで全てが済む) 数学や理論物理の世界では、(最先端の分子生物学と違って)高価な実験装置や試薬などの購入や多数の実験助手に給料を払うために、(他人と競争して)莫大な研究費を稼ぐ必要が全くないからである。豪州のメルボルンで私の弟子として、20年以上に渡って、地道にコツコツとPAK研究を続けている北京大学医学部出身の優秀な女性研究者がいるが、研究費稼ぎで未だに大変苦労している。片や神戸の理研では、ろくに生物学もわからぬ女性が、流行のIPS研究に飛びついて、数億円にも及ぶ研究費を浪費しながら、万能細胞と称する“イカサマ細胞”作りで、ノーベル賞級(?)の業績と、愚かなマスコミにもてあやされ、女性科学者たちの顔に泥を塗るようなことをしでかした。このような実験科学界の“歪み”をできるだけ早く是正する必要があると、私は痛感する。

 

2015年4月19日日曜日

鈴木梅太郎 (1874-1943) と ニコチン酸=ビタミンB3(抗ペラグラ因子)

戦前に活躍していた (東大卒の) 農芸化学者。静岡県出身。(我が国では)ビタミンの発見者として有名。 1910年に米ぬかを食べると脚気が治る、あるいは予防できることを発見した。米ぬかには、白米に欠けているビタミンの一種[オリザニン] (のちに、ビタミンB1の一種であることが判明) が豊富に含まれているからである。

翌年には、抗ペラグラ因子として、ニコチン酸 (=ビタミンB3) をも発見した. しかし、(日本語からドイツ語への)邦訳ミスがたたって、発見当時は世界的に “ビタミン発見者”としては認められなかった。そこで、実際には鈴木梅太郎よりも後でビタミンを発見したポーランドの生化学者カジミール=フンク[1884-1967]が“ビタミンB1の発見者”という名誉を勝ち取る幸運を得た。

さて、ニコチン酸は、“ニコチン” という(タバコ由来の)アルカロイドを強酸によって酸化すると生じる。 我々の生体内では、トリプトファンというアミノ酸から生合成される。従って、トリプトファンが欠乏すると、ニコチン酸欠乏 と同様、“ペラグラ” と呼ばれる一種の皮膚病にかかる。ニコチン酸は芳香環化合物の中で、カルボン酸を有する最も単純な天然化合物の一つである。前述したが、カルボン酸を有する化合物は、細胞透過性が悪い。従って、臨床に応用するためには、このカルボン酸に水溶性の側鎖を付加して、酸を中和する必要がある。

 最近、韓国の研究者がニコチン酸のペプチド誘導体を合成して、特許を取ったことが判明した. 面白いことには、この誘導体にも、ニコチン酸アミドと同様 (メカニズは多少違うが)、メラニン色素合成を抑える(美白)作用がある。言い換えれば、ニコチン酸には、本来、PAK遮断作用があるが、細胞透過性が低いため、その美白作用が検出しにくかったと推察される。 従って、できれば、悪名高きタバコ製造業界を啓蒙・説得し、タバコの葉を原料にして、(細胞透過性の高い)新規なニコチン酸誘導体を開発して、難病の治療や健康長寿に貢献させる工夫をしてみたいものだ。

2015年4月12日日曜日

薬学者のための座右の銘:  難病患者の目線で
“安価かつ安全な特効薬の早期開発を目指し、科学の粋を集めよ!”

琉球大学構内には、少なくとも2人のノーベル物理学者の言葉(座右の銘)が残っている。付属図書館の前に、湯川秀樹の ”学而不厭” (理論物理学者・教育者らしい)。中国の “論語” に由来する言葉だそうである。つまり、孔子の言葉である。

我々の産学官共同研究ビルの入り口には、天野浩(LED発明家)の ”人のために” (応用物理学者らしい)。 もし、PAK専攻の薬学者がノーベル賞をもらったら、”難病患者の目線で” という言葉を、恐らくこのキャンパスに残すだろう。
目下、私は、琉球大学に新設した ”PAK研究センター” で、大学院生の研究指導をやっている。癌や認知症など様々な難病に効く(かつ副作用のない) “PAK遮断剤” の開発を目指している。最近、付属図書館で、興味深い本を一冊見つけたので、読書中である。

”石館守三“(1901-1996)に関する伝記である。彼は青森県出身の薬学者で、わが母校(東大)の初代薬学部長であった。 彼は有名な天然物有機化学者であったが、敬虔なクリスチャンでもあった。 天然強心剤 “ビタカンファー” の発見、日本初の合成制がん剤 ”ナイトロミン“ の開発、ハンセン氏(ライ)病の特効薬 “プロミン” の合成などを手掛け、多くの難病患者の命を救った。従って、彼の好きな座右の銘は、おそらく “難病患者の目線で研究をすべし” という言葉であったろうと想像する。

“安価かつ安全な特効薬の早期開発を目指し、科学の粋を集めよ!”

彼はいわゆる “象牙の塔” の学者ではなかったし、利を主に追求する製薬会社の研究者でもなかった。私にとっては、梅毒の特効薬 ”サルバルサン“ (化合物606)を開発して、”化学療法の父“  となったパウル=エーリッヒ博士(1854-1915)と共に、石館守三先生は、薬学界の”鏡“である。 もっとも、先生は我々が学部へ進学する数年以上前にすでに定年で退官していたので、我々の年代にとっては、ずっと ”伝説の人物“ だった。

2015年4月7日火曜日

肥満に悩む人は冷や飯を食え!

沖縄は最近、健康長寿県のタイトルを失い、肥満率が全国最大(36%)というありがたくないタイトルを獲得した。マウス実験では、“肥満と健康長寿は逆比例する”ことが実証されている。そこで、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究グループが、肥満対策の一環として、太らない(難消化デンプン=レジスタントスターチを多く含む)米(稲)の品種を開発し始めたというニュースがテレビで放送された。“象牙の塔”と批判されているOISTがようやく、地元沖縄に貢献できる研究を始めたのは、歓迎できる。

しかしながら、良く調べてみると、温かいご飯のデンプンは消化しやすいが、冷えると、“難消化デンプン”に変化することが判明した。 したがって、冷や飯を食べる、あるいは、(冷えた)おにぎり弁当を食べると、肥らなくなる!

その昔(敗戦直後)、”貧乏人は麦を食え”*と国会で発言して、新聞の話題になった蔵相がいた。その蔵相はその後、池田隼人首相になった。 さて、現在の沖縄知事は、地元沖縄県民の願いをくみ取り、米軍基地を粛々と拡張する(米政府の傀儡)安倍政権と対決姿勢を取りつつある。私は、この知事に、“肥満症患者は冷や飯を食え” というメッセージを住民に発信することを提言したい. そうすれば、沖縄は昔どうり、健康長寿県に戻るだろうし、OISTで(難消化デンプン=レジスタントスターチを多く含む)米(稲)の品種を開発するために、研究費を浪費する必要がなくなる。もし私が沖縄知事になったら、“肥満になりたくないなら、ゴーヤおにぎりやゴーヤチャンプルを食べろ!” というメッセージを発信するだろう。ゴーヤやへちまには、PAK遮断剤である”ククルビタシン”が豊富に含まれ、肥満症を解消して、健康長寿をもたらすからである。

勿論、“肥満の解消”に最も有効なのは、“カロリー制限”(節食、腹八分目)と“適度の運動”であることは、言うまでもない。

*白米を食べても麦を食べても栄養価は同じだから、貧乏人は安価な麦で必要な栄養を取れ、という “生活の知恵”
 
 

2015年4月3日金曜日

ブラフミー (Brahmi)の薬理 (PAK遮断)効果

“オトメアゼナ”(バコパ、Bacopa monnieri)は、インドでは“魔法の植物”とまで言われ、“ブラフミー”(創造の神“ブラフマン”の知恵を助けるもの)と言う名前まで付けられ、瞑想を助けるハーブとしてヨガの修行をする人に特に使われている。 『アーユルヴェーダのハーブ医学』によれば “ブラフミー”というハーブは、“アーユルヴェーダ”の 薬の中で最も重要な若返りのハーブであり、主に神経と脳細胞を活性化し、 知性を高め、長寿を促し、記憶力を増し、老化や老衰を遅らせ る。免疫機能を高め、体内を浄化し栄養を補給し、副腎を 強めます。同時に、血液を浄化し、湿疹や疥癬だけでなく、 ハンセン氏病や梅毒などの慢性の皮膚病にも特効がある。  

ヒマラヤ山中によく見られ、ヨガ行者の 瞑想のための食物。右脳と左脳のバランスを整える。 WHO (世界保健機構) は ブラフミーを「21世紀の驚異的薬草」、 「保護すべき薬用植物の中でもっとも重要なものの一つ」と位置付けている。 驚くなかれ、自宅の庭でも手がるに栽培できる。開花期間が長く、春~秋にかけて白やピンク、紫色、淡いブルーの小花を咲かせる。

 つい最近、その水溶エキスの薬理作用の科学的裏付けがインドの研究グループによって、線虫という小動物を使用してなされた。バコパのエキスには、線虫の平均寿命を延長する作用があることが判明した。そのメカニズムは熱ショック蛋白(HSP16 を大量生産することによって、高熱などのストレスに対して耐性になる(つまり、夏バテになりにくい体質に変換する)ことにある (1)。前述したが、PAK遮断剤は熱ショック蛋白(HSP 遺伝子を活性化する作用があり、健康長寿を促進する。従って、この水溶エキスもPAK遮断剤の一つとして考えてよかろう。近い将来、このエキスがPAK遮断剤であることを直接に実証してみたい。PAK遮断剤ならば、美白作用(メラニン色素の合成を抑える作用)もあるはずである。(抗癌剤NF治療薬ばかりではなく)お肌を若返らす化粧品添加物としても有効である可能性も出てきた。
 
参考文献:
1. Phulara SC1, Shukla V1, Tiwari S1, Pandey R1. Bacopa monnieri promotes longevity in C elegans under stress conditions. Pharmacogn Mag. 2015 ;11, 410-6.