人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2015年1月29日木曜日

キューバ産のプロポリスの抗癌主成分 「ネモロゾン」 もPAK遮断剤?


最近、オバマ大統領の勇気ある裁断で (半世紀近くずっと途絶えていた) キューバと米国との間の国交が回復した。キューバ人にとっても米国人にとっても大変喜ばしいことである。勿論、(敗戦後ずっと) 米国の外交に追従せざるを得なくなっている日本人全体にとっても良報である。珍しいキューバ特産品を日本へ自由に輸入することが近い将来可能になると予想されるからである。

キューバ産のラム酒やハバナ葉巻は昔から有名だが、もう一つ有名なのがキューバ産のプロポリスである。起源植物の種類によって、赤、黄、褐色の3種のプロポリスがキューバには知られている。その中で今回は「褐色」のプロポリスに注目したい。理由は、最近キューバの研究グループによって、このプロポリス中の抗癌主成分が「ネモロゾン」と同定されたからである () 。イソプレノイド誘導体である。「ネモロゾン」は中南米やハワイなどに生育する亜熱帯植物「福木」の一種(Clusia  rosea) の花からアルコールで大量に抽出される。従って、褐色プロポリスの主な起源 は、この植物と推定される。

さて、2、3年前に、ドイツの癌研によって、「ネモロゾン」(IC50= 2-5 micro M) がヒト由来のスイゾウ癌の増殖を強く抑えることが動物実験で確認された(2)。スイゾウ癌の増殖は殆んど100%「PAK依存性」である。従って、この物質がPAK遮断剤であることはほぼ100%確実である。しかも、プロポリスはその起源植物の違い (多様性) にかかわらず、全てPAKを遮断する薬理作用を持つことは前述した。

キューバの人件費は日本や欧米にくらべて、ずっと低い。従って、キューバ特産のプロポリスを大量、安価に輸入できる可能性がある。ニュージーランド (NZ)のドル価が最近急騰している矢先、キューバから安価な褐色プロポリスを日本国内に取り寄せる商売 (貿易業) は(癌やNFに悩む) 難病患者を救う「先見の明」ある思い付きであると私は思う。

最近、早稲田大学(先進)理工学部の中田雅久教授の研究室やオタワ大学のLouis Barriau 教授のグループなどにより、「ネモロゾン」の化学合成法 も開発され、大量生産が可能になりつつある(3)。

なお、キューバのハバナ大学にあるプロポリス研究グループと最近コンタクトがとれたので、この褐色プロポリスおよび「ネモロゾン」を (キューバからの直接輸入は目下のところ無理なので、できればブラジルにあるサンパウロ大学の共同研究者を介して) 入手し、そのPAK遮断作用に関する共同研究を、我々のPAK研究センター (沖縄)で、今春から開始する予定である。褐色プロポリスの「ネモロゾン」含量は採集地によって、著しく異なり、最高の含量を誇るのは、なんと「グアンタナモ」(米軍の悪名高き刑務/収容所がある山岳地)で採集したもの (N17)で、アルコール抽出物 (乾燥重量) の約2割を「ネモロゾン」が占める。

(我々の調べた範囲内では) ネモロゾンは既知のプロポリス成分中、最強の抗癌作用を示す。ただし、水に不溶性なので、将来、"水溶性の誘導体" を開発して、臨床にも応用できるようにしたいものである。
 
参考 文献: 
  1. Pardo Andreu GL, Reis FH, Dalalio FM, Figueredo YN, et al. The cytotoxic effects of Brown Cuban propolis depend on the nemorosone content and may be mediated by mitochondrial uncoupling. Chem Biol Interact. 2015 Jan 21.
  1. Wolf RJ1, Hilger RA, Hoheisel JD, Werner J, Holtrup F. In vivo activity and pharmacokinetics of nemorosone on pancreatic cancer xenografts. PLoS One. 2013 ;8(9):e74555. 
  2. Uwamori M, Saito A, Nakada M. Stereoselective total synthesis of nemorosoneJ Org Chem. 2012; 77: 5098-107.

2015年1月28日水曜日

マリアアザミ由来の 「シリマリン」 もPAK遮断剤!


マリアあざみの種由来の「シリマリン」(Silymarin) はフラバノンの一種であるが、最近、この天然物質がセンチュウの寿命を延ばすことが判明した。更に、認知症にかかったセンチュウの神経麻痺を遅延させることもわかった () 前述したが、この種の薬理作用はPAK遮断剤の典型的な生物活性である。この物質の抗癌作用や抗炎症作用も昔から知られている。さて、PAKがメラニン色素の合成に必須であることも前述した。そこで文献を調べてみると、数年前に、韓国の研究グループにより、この物質がメラニン合成を(チロシナーゼ遺伝子の発現を抑制することによって)阻害することを確認していた(2)。従って、マリアアザミ由来の「シリマリン」もPAK遮断剤であることは疑いない。

参考文献:   

  1. Kumar J. Silymarin Extends Lifespan and Reduces Proteotoxicity in C.elegans Alzheimer's Model. CNS Neurol Disord Drug Targets. 2015 Jan 15.
  2. Choo SJ, Ryoo IJ, Kim YH, et al. Silymarin inhibits melanin synthesis in melanocyte cells. J Pharm Pharmacol. 2009; 61: 663-7.

2015年1月20日火曜日

アズキ( 小豆)の赤い色素 「ゲニステイン」 もPAK遮断剤?


日本で古来から副食物として、お汁粉、赤飯、ボタ餅、アンパンなどを作る食材として広く利用されている赤い豆 (アズキ) には、「ゲニステイン」と呼ばれる赤い色素 (イソフラボン) が豊富に含まれている。小豆を食べる習慣は元来、中国より朝鮮半島を経て3世紀より8世紀頃日本へ伝来されたと言われている。従って、聖徳太子 (574-622) もお汁粉や赤飯を祝い事に食べた可能性がある。

さて、最近、韓国の研究グループによって、ゲニステインがCAPE同様、センチュウの寿命を延ばすことが発見された (1)。そのメカニズムはCAPE同様、AMPKを活性化し、HSP16遺伝子を活性化することによる。PAK遮断=AMPK活性化=HSP (熱ショック蛋白) 活性化という (前述した) 法則に従えば、ゲニステインはPAK遮断剤という結論が導き出される。面白いことには、ゲニステインはCAPEと化学構造も類比している。同時に、ゲニステインは発癌ホルモン「エストロゲン」の拮抗体として働くとも言われている。PAKとエストロゲン受容体とは悪縁関係にある。お互いに相手を活性化しあう「悪者同志」である。従って、その悪縁を絶つゲニステインは、結果的にPAKを遮断することになる。

その昔、我々が学生時代に、東京の上野にある本場インドカレーの店で、「ライスなしに辛いカレーを食べると無料になる (ただ食いができる) 」という「食べくらべ」をやってことがある。クラスで「ただ食い」に成功したのは、私ともう一人のクラスメートだけだった。その店の丁度向いに、おあつらい向けに汁粉屋があった。甘党の二人はその店に飛び込んで、汁粉で喉を潤した。インドカレーにはクルクミンというPAK遮断剤が含まれている。汁粉にはゲニステインというPAK遮断剤が含まれている。従って、我々は「一石二鳥 」を味わうことができた (二度美味しい思いをした) 驚くなかれ、2人共72歳を越したが、大学時代の同窓会でいつも、最も健康そうに見える。この事実は何かを実証しているように思える。勿論、2人に共通なのはカレーや汁粉に強いばかりではなく、運動を常に欠かせないことである。私は競歩/登山、彼は器械体操(鉄棒)が得意である。

参考文献:

  1. Lee EB, Ahn D, Kim BJ, Lee SY, et al. Genistein from Vigna angularis Extends Lifespan in Caenorhabditis elegans. Biomol Ther (Seoul). 2015 ; 23: 77-83.