人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2015年1月14日水曜日

NF2蛋白 「マーリン」 (Merlin): 細胞内にある 「PAK阻害蛋白」 


正常な細胞には、癌細胞の増殖を抑える働きを持つ蛋白、いわゆる「抗癌蛋白」がいくつか存在する。これら一連の「抗癌蛋白」がその機能を失う、あるいはそれを作る遺伝子 (抗癌遺伝子)が欠けると癌にかかりやすくなる。歴史的には抗癌蛋白として、核内の「転写蛋白」であるRBやp53、あるいは「GAP」と呼ばれるRAS阻害蛋白が最初 (1987年頃)に見つかった。以来、抗癌遺伝子を癌細胞に挿入するという療法、つまり「癌の遺伝子療法」という考え方が学界に流行し始めた。しかしながら、実際のところ、25年以上経った今日でも癌の遺伝子療法は技術上、実現性に乏しい。

さて、前述したが、「PAK」と呼ばれるキナーゼが癌の増殖に必須であることが判明したのは、それから10年後の1997年頃である。以来、PAKを阻害あるいは遮断する抗癌蛋白を発見する努力が世界中で始まった。 しかしながら、発癌遺伝子であるRASと違って、PAK遺伝子は殆んど変異を起こさない。そこで、PAKの上流にあるRASが変異した (例えば、スイゾウ癌由来の)癌細胞を使って、その増殖を抑える抗癌遺伝子を、我々はまず探索し始めた。

米国のボストンにあるハーバード大学病院(MGH)にあるジム=ギゼラ教授のグループが1992年に、新しい抗癌遺伝子を発見した。この遺伝子が欠損すると、「NF2」(神経線維腫症 タイプ2)と呼ばれる脳腫瘍を伴う稀少難病が発生する。彼はNF2遺伝子が作る抗癌蛋白に「Merlin」という名前を付けた。彼は元々カナダ人だが、英国に伝わる古い伝説物語「アーサー王」に登場する年老いた魔法使い「Merlinに魅せられていた。そこで、NF2を治しうる抗癌蛋白に、この魔法使いの名を選んだ。 その論文が発表されるや、私は彼にFAXを送って、その遺伝子を使う共同研究を申し出た。 RAS癌 (スイゾウ癌) の増殖をNF2遺伝子療法で抑えることができるかどうか、試してみたかったからである。実験は見事に成功した!  つまり、RASの発癌経路をMerlin がピタリと遮断することが判明したわけである。しかしながら、Merlin が一体どんな薬理作用をもっているのか、その詳細 (分子メカニズム)が長らく不明のままだった。

10年後のある日、シドニーに住む女性から突然メールを受け取った。ローズマリーという母親で、末っ子のルイ (8歳)がNF2という難病にかかって、視力を失いつつあった。「RAS癌に効くPAK遮断剤はNF2の治療にも有効ではないのか?」という質問だった。我々はそれまでにいくつかのPAK遮断剤をRAS癌の治療をめざして、開発中だった。「その遮断剤をNF2の治療にも使えないものか」という切実な問いかけだった。我々は稀少難病であるNF2腫瘍の治療実験をやったことがそれまで一度もなかった。従って、イエスともノーとも確答ができなかった。 ただし、理論的には、その可能性はあった。そこで、早速 Merlin がPAK阻害蛋白であるかどうか」を調べてみた。実際そうだった (魔法使いの「魔力」はPAK阻害だった!)。しかも、手持ちのPAK遮断剤でNF2腫瘍の増殖が止まった。ローズマリーの顔が急に明るく輝いた。

数年後に我々は、市販/通販されているNZ (ニュージーランド) 産のプロポリス「Bio30」にPAK阻害作用があること、更にNF腫瘍やスイゾウ癌の増殖をピタリと抑えることを動物実験で確かめた。以後、これらの脳腫瘍やスイゾウ癌患者を主に対象とする「Bio30」の治験を続け、良好な治療効果を得ている。プロポリスは古代エジプト時代から難病の治療に使用されてきた伝承薬 (ミツバチが調剤する抗生物質)であり、「アーサー王の伝説」に登場する魔術師マーリンも常用していたに違いない。少なくとも古代ギリシャの「医学の祖」ヒポクラテスはプロポリスを常用し、90歳以上長生きした。

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