人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2010年7月25日日曜日

難病に王手をかける 「健康長寿への方程式」

今から百年以上も昔、かの有名な理論物理学者アインシュタインが、「相対性原理」
という学説の中で、ある簡単な方程式(等式)を世に紹介した。E=MC2
  つまり、物質のもつエネルギー(E)は、その重量(M)と速度(C)の自乗
に比例する。 この等式に従って、米国のシカゴ大学で初めて「原子エネルギー」
というものが原子炉を使って開発され、さらに太平洋戦争末期に、原爆が開発さ
れて、広島と長崎の悲劇を産む。。。

惨めな敗戦を迎えた日本の若者たち(特に、女性たち)に、まず希望を与えてくれ
たのは、(機会均等、男女同権を保証する)民主的な憲法をもたらしてくれたマッ
カーサー司令官だった。食料不足のためひもじい思いをしていた我々学童たちに
も、コッペパンと脱脂粉乳を給食として支給してくれた。1949年には、日本
人として初めて、京大の理論物理者である湯川秀樹博士がノーベル賞をもらった。
それで、日本人全体が自信をようやく取り戻した。そして、朝鮮戦争が休戦になっ
てまもない1953年に、ニュージーランドの登山家(養蜂家)であるヒラリー
卿が(ネパール出身の)「シェルパ」テンジンと共に、世界最高峰エベレストを
ついに征服して、「意志あらば、この世に不可能はなし」を身をもって我々に知
らしめた! かくして、我々は「開拓精神」の素晴らしさを学び取った。ちょう
どその頃、私自身は、駐留軍からもらった「パス」という特効薬のおかげで、小
児結核から無事解放され、復学して(自宅療養中に父親から手解きされた)数学
に熱中し始めた。理詰めの将棋の面白さも父親から教わった。次第に極意を会得
し、しばしば父親に王手をかける瞬間を満喫し始めた。そして、大学で「薬学」
という複雑な学問を修得した。しかし、1970年代初頭の日本における生化学
(あるいは分子生物学)水準の低さに飽き足らず、海外(欧米)にずっと留まり、
新しい制癌剤の開発研究に将来従事すべく、当時流行し始めた蛋白燐酸化酵素
(キナーゼ)の研究をNIHで始めたのは、もう30数年前のことだった。最近
になって、ようやく癌や糖尿病などの難病に(逃げ道を塞いで)「王手」をかけ
得る安価かつ安全な天然の特効薬を見つける極意なるものを会得し始めた。

さて、これから紹介する新しい方程式(極意)は、分子医学に関するもので、新しい
エネルギーや大量殺りく兵器を開発するのには役立たないが、地球温暖化や難病を
克服しながら「健康長寿」をエンジョイするのに貢献する、と私は確信している。

PAK遮断剤 = LKB1/AMPK 活性剤 = FOXO活性剤= 健康長寿への薬

まず「PAK」とは、一体何だろう? 癌、NF、リューマチなどの難病の病因になって
いる発癌性のキナーゼ (我々がNIHで初めて見つけたミオシン・キナーゼの仲間)である。
従って、この酵素を遮断する薬剤あるいは天然物(例えば、「プロポリス」など)は、もちろん癌、
NF、リューマチなどの治療に役立つのは明らかである。 しかしながら、それだけではない!

最近の研究から、タイプ2(インスリン耐性)糖尿病の治療に有効なAMPK活性剤
(例えば、メトフォルミンなど)は、「PAK」を遮断する機能もあることが判明した。 
なぜだろうか? 京都大学医学部薬理の武藤 誠教授によれば、
「AMPK 」という抗癌キナーゼを直接燐酸化して、この酵素を活性化する別の
キナーゼ「LKB1」には、同時に、「PAK」を遮断する働きももっているからである。
従って、LKB1/AMPK 活性剤 = PAK遮断剤 なのである。
つまり、これらの糖尿病治療薬は、癌、NF、リューマチなどの難病にも有効と
いうわけである。

それだけではない! その逆もまた真なりなのだ! つまり、PAK遮断剤の
代表例であるプロポリス、クルクミンなど12種類以上の天然物には、LKB1/
AMPK 活性剤 としての薬効もあることが判明した。一体なぜだろうか? 色々
の理由が考えられるが、その一つは次のようである。 「PAK」はチロシン・
キナーゼである「ErbB2」という発癌性酵素を介して、AMPK を遮断する作用
がある。 従って、「PAK」を遮断するプロポリス(例えば、「Bio 30」など)、
クルクミン、エモディン、メトフォルミン、レスベラトロール、ポリフィリンD
(PPD)、ベルベリン、カプサイシン、サリドロサイド、イベルメクチン、サリドマイド
などを含む市販品は、AMPKを活性化することによって、糖尿病(タイプ2)の治療
にも役立つはずである。 驚くなかれ、それだけではない!

我々哺乳類や線虫の寿命をコントロールしている「FOXO」という転写蛋白は、
抗癌蛋白の一種でもあるが、その機能はAMPK により活性化され、PAKによ
り遮断されている。従って、上記のPAK遮断剤=LKB1/AMPK活性剤は、
「FOXO」を活性化することによって、我々の寿命をさらに延ばすことができる。
しかも、上記の難病を治すばかりではなく、熱耐性を増強するため、「夏バテ」の
予防、いわゆる「地球温暖化」に耐える力をも与えてくれる! つまり、
健康長寿の源になるわけである。 従って、今後長生きしたかったら、上記の
方程式をしっかり記憶にとどめておくのはよいことだろう。。。

ただし、上記の方程式に必ずしも当てはまらない例外が最近一つ見つかった。「ト
レハロース」という2糖類で、大福餅や生八ツ橋などの皮(衣)によく使われて
いる安価な食材である。ごく最近、都立老人研の本多グループによって、この
「甘い」食材が線虫の寿命を延ばす働きを持つことが発見された。もちろん、こ
の機能には「FOXO」が必須なのだが、なぜか、PAK遮断剤=LKB1/A
MPK 活性剤と違い、「FOXO」を活性化しない。つまり、ベースラインの活
性で十分のようだ。しかしながら、熱耐性を誘導し、夏バテ予防にも有効らしい。
「例外のない法則はなし」と昔からいわれているが、トレハロースは、その典型
的な一例であろう。

沖縄産の苦瓜(ゴーヤ)、霊芝、中国四川省特産の花椒(山椒の親戚)のエタノール
エキス中の苦味成分(トリテルペン類など)にも、PAK遮断=LKB1/AMPK
活性作用があり、夏バテ予防、糖尿病/癌治療、リューマチなどの炎症やアルツハイマー病の
治療、健康長寿などに役立つ。しかし、「良薬、口に苦し」で、そのままでは、なかなか服用しにくい。
しかも水に溶け難いので、胃腸からの吸収が良くない。さて、世の中、うまくできている
もので、この苦味を消し、水溶性にする便利な天然物(安価かつ人畜無害!)が
一つ存在する。「シクロデキストリン」(CD)と呼ばれる環状のオリゴ糖である。
CD分子の外側は水溶性だが、内側は脂溶性である。そして、水に溶け難い脂溶
性の物質を内部に取り込んで、水溶性にするばかりではなく、苦味や辛味を消し
てしまう。従って、プロポリスやクルクミンなど上記の「苦いあるいは辛い」脂
溶性の良薬をCDで包摂すれば、「胃腸からの吸収がよい」ばかりではなく「無味
無臭」の良薬にすっかり改良することができる。神戸にある「シクロケム」の
寺尾啓二博士(京大の化学科出身)は、このCDの専門家で、医薬、食品、
化粧品などのCDによる改良法の最先端に挑戦しつつあると聞いている。

さて、つい最近、もう一つ大変面白いことに気づいた。上記の物質(良薬)と
正反対の作用を持つ物質(毒物!)、すなわちPAK活性剤やLKB1/AMPK
遮断剤は、自然界にはほとんど見つからない。なぜだろうか? もし、そんな
毒物が天然にゴロゴロしていたら、我々を含めて、ほとんど大部分の動物は、恐竜
やマンモスなどと共に、ずっと大昔に絶滅していたに違いない。改めて、自然の
恩恵(特に、薬用植物やミツバチの英知)に深く感謝しなければならない。。。

さて、上記の方程式に従って、健康長寿に役立つ薬や食材を、安価かつ敏速に
見つける方法は一体あるのだろうか? 最近、その方法を一つ見つけた。透明な微小の
線虫で、熱ショックをかけると、GFP (緑色蛍光蛋白) を発現する特殊な株 (CL2070)
を生きまま、スクリーニングの検体にする方法である。FOXOが活性化されると、
熱ショック蛋白(HSP16) の遺伝子が発現しやすくなるからだ。 この遺伝子の
発現をコントロールする「プロモーター」部分にGFP遺伝子(cDNA) が連結した
遺伝子 (HSP16-GFP) を挿入したCL2070 株に熱ショックをかけると、ゆっくり
プロモーターが活性化され、GFPの蛍光が時間と共に、増大する。ところが、この株を
CAPE (プロポリス中の抗癌主成分) などのPAK遮断剤=LKB1/AMPK
活性剤で一晩処理してから、熱ショックをかけると、瞬く間に線虫全体に蛍光が拡がるのだ! 
将来は、蛍光測定器を連結させて、このスクリーニング法をオートメ化することも可能だ
ろう。。。

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