人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2010年10月5日火曜日

体外受精(IVF)の開発はノーベル医学賞に値いするか?

今年のノーベル医学賞が意外にも、英国のロバート・エドワーズ(ケンブリッジ
大名誉教授、85)に贈られることになった。受賞理由は「体外受精技術の開発」。
1978年に、世界初の体外受精児「ルイーズ・ブラウン」を誕生させることに
成功した。体外受精(IVF)は、女性の卵巣から卵子を取り出し、精子を加え
てできた受精卵(胚〈はい〉)を、子宮に戻す技術。以後、世界で400万人以
上のIVF児が誕生しているといわれている。

しかしながら、正直な感想を述べるならば、我々分子生物学者の間では、この受
賞にかなり冷やかな反応が隠せない。なぜだろうか?

その理由の1つは、幹(ips)細胞の開発による再生医学研究で、昨年ラスカー賞
(基礎医学)を受賞し、ノーベル医学賞の「最有力候補」と噂されていた京大医
学部の山中伸弥教授(48)が今年は、受賞の選外になったからだ。 まだ若く健
康はつらつな山中教授は、ひと先ず高齢で病床のエドワーズ教授に、席を譲った
格好になった。。。

さらに、私見を述べさせてもらえば、高価な体外受精(IVF)までして、子供
を産む必要は全くない気がする。世界には、60億以上の人口が溢れており、特
にちっぽけな島国「日本」では、一億2千万の人口が所狭しとひしめき合ってい
る。もっと人口を減らし、一人一人の生活水準(QOL)を上げることの方がずっ
と重要であるように思える。子供が欲しいが不妊ならば、世界中(特に、東南ア
ジア・アフリカ)に溢れている戦争(難民)孤児の一人を養子や養女として、我
家で育てればよいのだ! 従って、「IVFの開発は、ノーベル医学賞には値い
しないのではないか」というのが、分子癌研究者としての、私の率直(あるいは
素朴)な感想である。

ところで、堕胎を含めて「産児制限」を一切禁止しているローマ法王を始めカトリック
教会は、今回のIVF開発者に対するノーベル医学賞授与を非難していると聞いた。
体外受精は自然ではない(人工的である)という素朴な理由からである。
しかしながら、(多産の)カトリック社会のごとく、(人口12億の)中国を含めて世界中が
産児制限を辞めたら、地球上は人口過剰になって、人類ばかりではなく、他の
哺乳類も食料不足のために、ほとんど餓死してしまうだろう。従って、無神教
(科学者)の私は、カトリックの肩を持つ積りは毛頭ない! だいたい、カトリックは
ガリレオ・ガリレイを始め「先見の明」のある多数の科学者を弾圧してきた。
いわば、「科学(理性)の敵」である。 

考えようによっては、人類自身の破滅を導きかねない「無制限な」人類の繁殖を
未然に防ぐために、自然が我々に与えてくれた巧妙な制御メカニズムの1つとして、
「不妊」(結婚夫婦の約1割)という現象を位置付けることもできる。産児/育児
などごく平凡な日常活動に携わる代わりに、(人類特有の)より知的な活動(例
えば、自然科学の研究)に女性を専心させることができれば、人類のQOLは
一層高められるだろう。。。

因みに、線虫では、PAKというキナーゼ活性が高過ぎると多産、短命になる。
また人類では、このキナーゼの活性が高過ぎると、知能の発達を抑制したり、
癌が発生しやすくなることが知られている。従って、「不妊 」(あるいは「少子化」)
の原因が、「PAKの不活」にあるとすれば、逆に「不妊」は知能の発達、
抗癌作用、健康長寿を増強している要因となることが容易に想像されるだろう。
「IVF」(産児/育児)よりも「知的活動」を選択する方が、ずっと賢明に違いない、
と私は思う。

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