人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2011年7月30日土曜日

NF腫瘍:朝日新聞紙上に初めて紹介されたNF1患者の実例

http://www.asahi.com/health/ikiru/TKY201012090188.html

半年ほど前、皮膚にできる茶あざやほくろの延長線として、NF1由来の瀰漫性腫瘍(こぶ状のPlexiform)の一例が紹介された。残念ながら、その扱いは、かなり表層的(皮膚科的)で、この稀少難病への深い突込みが足りない。まず。その病因の分子的レベルの理解(説明)が乏しい。従って、その治療薬への考察が全くない。腫瘍は一時的に外科手術で除かれても、遺伝的病因(NF遺伝子変異)が依然残っているので、あとからいくらでも、同様な腫瘍が発生し、一生“いたちごっこ”の繰り返しを続けざるをえない。

さらに、神経線維腫症(NF)とは、この記事で取り上げているように,皮膚のあざ(カフェオレ班)やおでき様、あるいはこぶ状の腫瘍ばかりではなく、脊髄神経や脳内に腫瘍をもたらし、視神経、聴神経、言語(学習)中枢、運動神経などを圧迫することによって、幼児から晩年まで、これらの諸機能を麻痺し続ける。だから、その9割が良性腫瘍であるにもかかわらず、患者のQOLをひどく低下させる(単なる美容や整形、容姿の問題ではない!)。しかも脳外科手術は、しばしば(脳の重要な機能を損なう)深刻な後遺症を残す。

そればかりではない。この遺伝性稀少難病が感染すると誤解(勘違い)している人々が多い日本社会では、アジア・アフリカの後進諸国と同様、未だにNF患者たちを差別扱いする傾向が根強く残っている。従って、NF患者たちは、二重に苦しんでいる。

フランスの文豪ビクトル・ユーゴーの名作“ノートルダムのせむし男”の主人公は、文学史上初めて紹介された重症なNF1患者の一例であるが、今日の日本のNF1患者の現状は、せむし男 ”カジモド“ が中世時代のパリで受けた苦しみ(迫害)と、さほど違わない。

さらに、癌患者と違って、NF患者の数は、3千人に一人の割合だから、その治療薬の開発もひどく遅れている。NF腫瘍の増殖には、発がん性のキナーゼ(蛋白リン酸化酵素)PAKが必須である。今のところ、(PAKを遮断する)プロポリスと呼ばれるミツバチが作る漢方薬(健康食品)が市販(通販)されている唯一の特効薬である。従って、日本政府(厚生労働省や文部科学省)や日本のNF専門家たちに、より有効なNF特効薬(PAK遮断剤)の開発研究への努力を、緊急かつ切にお願いしたい。

最後に付け加えたい大事な点がある。NFの発生頻度は3千分の一の確率で起こる。つまり、NF患者は、残りの2999人の身代わりになって、この稀少難病に一生苦しんでいる。だから、我々健康人(幸いNFを逃れた人々)は、(NFという“貧乏くじ”を引いてくれた)NF患者たちに感謝しなければならない。だから、NF患者を率先して、支援しなければならない倫理的責務をになっているという自覚を常に持つべきだろう。不朽の名作“ノートルダムのせむし男”をそう読むべきなのだ。

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