人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
For detail, click the above image.

2017年3月7日火曜日

人類にとって 「進化」 とは、一体何か?

チャールズ=ダーウインの進化論によれば、人類が (チンパンジーやオランウータンなどの) 類人猿から進化を遂げたのは、四足で木々を飛び回っていた習性を捨てて、地上に二本足で立ち、頭をしっかり支えながら、歩き始めた瞬間に始まる、といわれている。人類の赤ちゃんが (イヌネコのごとく) 四足で這い回っていた時代から、スックと立ち上がって、力強く歩き始めた瞬間に、その個人の進化、特に頭脳の進化が急速に始まる。「寝る子は育つ」という諺があるが、実際には、寝たままでは、象のごとく図体ばかりが大きくなるだけで、頭脳の進化は遅々として進まない。

さて、少なくとも公立の小中学校での義務教育は、個人個人に人類社会に溶け込むために必要な最小限の知識を、大人の謂わば「猿真似」によって、習得させることにあると考えてよかろう。少なくとも (近所の区立学校に通学していた) 私自身の義務教育はそうだった。しかしながら、都立の名門高校に入学以来、色々な試練が待ち構えていた。他人の猿真似はもはや許るされなくなった。それは、我が家の特殊な家庭の事情にもよる。 我が家 (両親と3人の子供) では、母はいわゆる「主婦」ではなく、外で働いて、細腕で家計を支えていた。父は京大出のインテリだったが、戦争中、日本軍による満州侵略などに反対して、教職を追われて以来、農作業をしながら、家事や子供の養育/教育などをまかなう「主夫」だった。しかしながら、敗戦後の日本社会における女性の稼ぎは高が知れていた。幸い、毎日の食事には困らなかったが、それ以外の物は、必要最小限度に切り詰められた。

幸い、義務教育は無償だったが、高校では、都立でも、授業料が課せられる。先ず、両親は学校に授業料免除を願い出た。更に、私の学費 (教科書代や通学費) を支えるために、日本育英会から奨学金の貸与を勝ち取った。 ここから、仲間の同級生とは、全く違う高校生活が始まった。 我が校にもいわゆる「詰め襟制服」があったが、高価なので、私は母がバーゲンセールで手に入れてくれた安いジャンパーを、通学服にしていた。 我が校では、一学年に男子が300名、女子が100名だった。その内、上から200名以内に入っていれば、二浪まで我慢すれば、東大に入学できた「古き良き」時代だった。しかし、我が家では、家が狭いので、3人兄妹が6畳一間で生活していた。従って、自宅での自習はおよそ無理だった。放課後や週末は近くの区立図書館あるいは、母校のひっそりとした教室、あるいは四ツ谷 (赤坂) にある国立図書館で自習を余儀なくされた。

もっとも、いつも自習ばかりしていたわけではない。実は (父に似て) 猿真似が大嫌いな私は、陸上部に入部してから、長距離所属で、「競歩」という珍しい競技を始めた。当時の日本では、高校生で競歩をしていたのは、私以外には、殆んど見かけなかった。レースでは、実業団からの選手たちに混じって、20-50キロ競歩を競った。お蔭で、高校に入学当時、全校で女子を含めて1200名中、最もチビだった私は、高校3年間に身長を36センチ延ばし、その大きなギャップを埋めることができた。これは、私にとって、最大の進化の一つだった。

もう一つの進化は、生涯の進路を決めたことである。 まず、サラリーマン生活は辞めにした。ある特定の専門家になることを志した。化学と絵を描くことが好きな私は、ある日、癌に役立つ「魔法の弾丸」を開発する決心をした。 そのきっかけは、神田の古本屋で立ち読みをしている最中に、面白い伝記を見つけたからだ。原書はドイツ語で戦前に出版されたが、その英訳を偶々見つけた。「化学療法の父」 として知られているドイツのユダヤ系病理学者である 「パウル=エーリッヒ」 の伝記だった。 彼は1908年に免疫学でノーベル賞をもらったが, その翌年、梅毒の特効薬「サルバルサン」 の開発に、助手の秦佐八郎と共に成功した。それが、「化学療法の父」と呼ばれるようになった由縁である。さて、サルバルサンはエーリッヒ博士の 「魔法の弾丸」 と呼ばれるが、その由縁は以下のごとくである。サルバルサンは、アニリン色素とひ素の化合物である。アニリン色素は梅毒の病原菌に特異的に結合するが、それ自身には毒性がない。ところが、それにひ素を結合させると、梅毒菌 (スピロヘータ) を選択的に殺すというわけである。 この発想は、博士が病理学者で、組織染色の名人だったことに起因する。スピロヘータを染める色素とひ素という毒を巧みに組み合わせて、606番目の化合物として、サルバルサンが誕生した。その話を読んで、「これが我が人生だ!」と私は思った。

さて、梅毒は既に退治された。次の敵は「癌」だと、私は感じた。そこで、大学では、医学ではなく、薬学をめざした。創薬という学問は、極めて総合的な学問である。有機化学と分子生物学と薬理学/病理学を駆使した「グレンツゲビート」(境界領域) を行く「雑学」である。脳の 左半分と右半分の間で、常にピンポンゲームのやり取りを続けるユニークな学問である。そして、成功すれば、少なくとも癌患者の命を救うことができるやりがえのある仕事である。。。こうして 「人々のために役立つ」天職を見つけることができた! 

伝記を見つけて以来、既に半世紀以上の月日が過ぎた。残念ながら、私のめざした 「魔法の弾丸」は、市場には未だ出ていない。しかし、研究室で日々、輝きを増している。我々が最近見つけた「魔法の弾丸」は15K と名付けられた。「ケトロラック」という鎮痛剤の誘導体 (エステル) である。 原料であるケトロラックの「K」と開発した「2015年」を組み合わせたものである。ケトロラック自身にも弱い (プロポリスに匹敵する) PAK遮断作用があるが、カルボン酸であるため、細胞透性が悪い。そこで、水溶性のトリアゾール環をもったアルコールと結合させて、エステルすると、細胞胞透性が飛躍的に増し、その抗癌作用が500倍以上、増進されることがわかった。早速、特許を取得し、早急に臨床テストが開始できるよう、色々な準備作業を進めている。

面白いことに、このエステル化反応は、「クリック化学」 という化学反応を利用したものであるが、その組み合わせ反応は、かつて、エーリッヒ博士がアニリン色素とひ素を組み合わせて、梅毒の特効薬 「サルバルサン」 を開発した手法と、不思議にも良く似ている。違いは,組み合わせの相棒が各々違っただけである。つまり、昔の組み合わせゲームが進化して、癌の特効薬 (強力なPAK遮断剤) が誕生した!
 
進化とは 「変化しつつある様々な環境に応じて、自らをうまく適応させて生き延びようとする努力」 だと、私は思う。そして、それが単に受け身ではなく、積極的に新しい環境に飛び込んで、それに挑戦かつ克服することによって、偉大な (思いがけない) 発明/発見が生まれるのだと、私は信じている。猿真似ばかりして、惰性だけで人生を送り続ければ、人類はマンモスや恐竜と同様、やがて絶滅する外ない! 

米国で、目下 「トランプ大統領」 を熱狂的に支持する教育程度の低いブルーカラー労働者や農民層の動きは、結局、滅び逝くマンモスや恐竜の「最後の抵抗 (あがき)」に過ぎない。。 「トランプ政権」にベッタリかじり着く 「安倍政権」 の寿命もそう長くはないだろう。。。 進化なくして、繁栄は生まれない!

0 件のコメント: