人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2010年4月19日月曜日

大黄根の抗癌主成分「エモディン」は「PAK」遮断剤

2005年に我々が花椒エキスの「PAK」遮断作用を見つけた丁度同じ時期に、
シンガポールでは、もう1つの天然物が「PAK」を遮断することを発見!

大黄根の抗癌主成分「エモディン」

大黄 (Da Huang) 根エキスに含まれる「エモディン」と呼ばれるアンスラキノン
誘導体が、種々の癌細胞の増殖を抑えることが、ほぼ確立されたのは、1990
代後半である。例えば、米国テキサス州のヒューストンにあるMDアンダーソン
癌研のハン・ミエンチー教授(台湾出身)の研究グループは、ヒト由来の乳癌を
移植されたマウスを、「エモディン」(40 mg/kg、腹腔注射、週2回)で処理
すると、癌の増殖が有意に抑えられる(特に、タキソールと併用すると、相乗作
用がある)ことを1999年に実証している。この投与量は、癌患者(体重50
キロ前後) に換算すると、毎日800 mg 前後となる。面白いことには、RAS
癌の一種であるスイゾウ癌や、皮膚癌「メラノーマ」、脳腫瘍の一種「グリオー
マ」など、一連の「PAK」依存性の癌にも効くことが、次第にわかってきた。
しかしながら、この時点では、エモディンの主要な標的は、チロシン・キナーゼ
の一種「ErbB2」であると信じられていた。

ところが、2005年になって、シンガポール国立大学医学部の翁 (Ong)チュー
ンナム教授の研究室は、「エモディン」が細胞移動を抑制するメカニズムを解明
している内に、この抗癌物質がキナーゼ「PAK」とG蛋白 (RAC やCDC4
2) の結合を抑えることによって、このキナーゼの活性化を遮断していることを
発見した。この細胞移動は「癌の転移」に必須なものである。「PAK」は癌の
転移ばかりではなく、癌細胞の分裂や固形癌の増殖に必須な血管新生にも必要
不可欠である。実際、「エモディン」は、癌細胞の分裂を直接阻害するばかりでは
なく、血管新生も抑えることがわかっている。そればかりではない。「PAK」が
深く関与している炎症を抑える作用もある。更に、(細胞による糖の吸収を活性化
することよって)血糖値を下げる機能もあり、インスリン治療が効かない糖尿病
(タイプ2)の治療にも有効のようだ。さて、まだ細胞レベルの話(ハンブルグ郊外
にあるマックス・プランク研究所のエックハルト・マンデルコフ教授のグループ
による2005年の研究結果)だが、「エモディン」がアルツハイマー病に伴う
いわゆる「老人斑」の形成(特に、タウ蛋白の凝集)を抑えるという報告もある。
上記の諸機能(薬効)は、PAK遮断剤が発揮する典型的な「指紋」機能といわれ、
新しいPAK遮断剤の同定、スクリーニングに極めて有効な指標として、「PAK」
専門家の間で、最近広く使用されるようになった。

大黄根(末)は漢方として古来から、主に「緩下剤」として使用されてきたが、
この薬効は「センノサイド」代謝産物の作用によるもので、「エモディン」自身
の作用ではない。今後将来「エモディン」の作用に基づき、大黄根が(NFを
含めて) 上記の様々な難病の治療にも広く使用されることが期待される。

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