人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2010年4月23日金曜日

「健康長寿への方程式」

CAPEなど数種の天然抗癌物質が、抗癌キナーゼ「AMPK」の活性化と
発癌キ ナーゼ「PAK1」の抑制を同時に行なうという不思議な現象がある。
その謎の 一部が、最近解けた!


発癌キナーゼ「PAK1」がヒトの癌の7割以上に関与していることは、たびたび
前述した。更に、この「PAK1」を遮断しうる数種の天然物が、食品や生薬や
健康ケアサプルなどとして、市場に出ていることも前述した。プロポリス中の
CAPE(カフェイン酸フェネチルエステル)、インドカレーの辛味「クルクミン」、
チリ胡椒の辛味「カプサイシン」(辛くない誘導体「カプシエート」)、
赤ブドウ中の「レスベラトロール」、漢方薬「黄連」の苦味成分「ベルベリン」、
駆虫剤「イベルメクチン」などがその例である。従って、将来、これらの天然物
が癌の治療に広く使用されることが大いに期待されている。従来のいわゆる
「ケモ」(化学療法剤)と違って、副作用(脱毛、免疫機能の低下、消化不良など)
がほとんど無いからだ。そして、極めて安価でもある!  

さて、最近気づいたことであるが、上記の「PAK1」遮断物質は皆、抗癌キナーゼ
として知られている「AMPK」を活性化しうる機能を持つ。面白いことには
「AMPK」は抗癌作用ばかりではなく、脂肪の燃焼(肥満の解消)、血糖値の
低下(タイプ2糖尿病の治療)、更に健康長寿にも重要な寄与をしていることも
知られている。この養命キナーゼ(AMPK)は、もう1つの抗癌キナーゼ
「LKB1」により、直接燐酸化され、活性化を受ける。そこで、私は最近試みに、
次のような「健康への薬理学的な方程式」を立ててみた。

LKB1活性剤=AMPK活性剤=PAK1遮断剤=健康長寿 

さて、2010年の4月になって、京大医学部薬理学の武藤 誠 教授のグループ
によって、AMPKを活性化する抗癌性のキナーゼ「LKB1」がPAK1のスレオニン
残基109(RACやCDC42が結合する部位) を直接燐酸化することにより、
PAK1を遮断することが解明された。ただし、逆に、PAK1が「LKB1」あるいは
AMPKを遮断するかどうかについては、まだ吟味されていない。ともあれ、
こうして、AMPKの活性化とPAK1の遮断が「LKB1」を介して同時に起こること、
つまり、前述した「健康長寿への方程式」(AMPK活性剤=PAK1遮断剤)の
少なくとも一部が、分子レベルで、はっきり実証されたわけである。

言いかえれば、上記の天然物以外にAMPK活性剤として既知の沖縄特産
「ゴーヤ」、チベットの高山などに生える岩弁慶の根茎エキス(漢方薬「紅景天」で
「サリドロサイド」と呼ばれる糖質が主成分)、糖尿病の特効薬「メトフォルミン」
(フレンチ・ライラック由来の天然物の誘導体)なども、新たに「PAK1遮断剤」の
仲間入りができたわけである。沖縄やチベットの住民たち、あるいはタイプ2糖尿病
患者などの「健康長寿への秘訣」の1つである。

健康長寿をもたらす「PAK1遮断剤」あるいは「AMPK活性剤」は、
GFPでラベルされた「ムシ」で、敏速かつ安価に同定できる!


何千何万という無数の検体の中から、毒性(副作用)のない抗癌剤を、ヒト由来
の癌細胞を移植されたヌードマウスで、一々スクリーニングする従来の遣り方は、
莫大な時間と経費がかかる。研究費や人手(主に院生)に乏しい「零細」の大学
の研究室では、ほとんど不可能に近い。そこで、私は最近、ある「ムシ」の助け
を借りる名案(エレガントなアイディア)を思いついて、実践してみた。「ムシ」
の名は、C。elegans。成虫でも全長たかだか1ミリ、微小な線虫である。
今世紀に入って、この「ムシ」の研究でノーベル賞をもらった学者が続出して
いるのは、若い人々にも大きな魅力(励み)の1つとなろう。さて、このムシは
身体全体が透明なので、例えば、クラゲ由来の蛍光蛋白「GFP」を発現すると、
ブルーライトの下で緑色に怪しく輝く(勿論、蛍光顕微鏡下でしか、ハッキリ見
えない!)。

さて、「ムシ」の餌は大腸菌だから、飼育代(研究経費)は無に等しい。このムシに、
ある特殊な遺伝子を挿入した聡明な学者(CL)がいる。 「GFP」遺伝子(cDNA)を
「HSP16 」(熱ショック蛋白の一種)と呼ばれる遺伝子のプロモーター部位に
連結したいわゆるレポーター遺伝子である。 この「ムシ」(「CL2070」
という名の株)に熱ショック(35度、2時間)を加えると、ゆっくり「HSP16 」
プローモーターが活性化され、ムシが次第に緑色の蛍光を発し始める。
20時間後には、蛍光が最高頂に達する。しかしながら、熱ショック直後(例えば、
4時間後)では、蛍光は微々たるものである。その理由は、例の発癌キナーゼ
「PAK1」が「HSP16 」プローモーターの機能を抑えているからである。
もう1つの理由は、例の養命キナーゼ「AMPK」が微弱なため、「FOXO」と呼ばれる
転写蛋白が十分に機能できないからだ。 ところが、前述したプロポリス中の抗癌物質
「CAPE」などで、この「ムシ」を一晩だけ処理した後、熱ショックをかけると、
ショック後間もなく、「ムシ」全体が緑色にまぶしく輝くようになる。勿論、
CAPEには毒性が全くないので、「ムシ」はハッピーそのものである (それどこ
ろか、「健康長寿」を満喫している!)。 従って、ある検体で一晩処理して、翌
朝「ムシ」全体が緑色にまぶしく輝いていれば、この検体は、前述した「方程式」
によれば、AMPK活性剤=PAK1遮断剤 (健康長寿をもたらす抗癌剤)である
はずである。

この「ムシ」による抗癌剤スクリーニングは、蛍光リーダー(測定器)を挿入すれ
ば定量もでき、更に「オートメ化」も可能だから、何千何万の検体から最強の物
質を、たった一晩でスクリーニング(選別)できるような「革命的な時代」が、
近い将来きっと訪れるだろう。

「HSP16」遺伝子が活性化されると、熱ショック蛋白 (シャペロンの一種)
が大量に生産されるため、細胞内の蛋白の熱による変性を防止する。従って、
「ムシ」も人間も「夏バテ」しにくくなり、益々悪化しつつある「地球の温暖化
現象」にも耐え、生き残ることができるようになる! 

続く

1 件のコメント:

mom happiness さんのコメント...

はじめまして
AMPKの検索で伺いました。
本日、NHKのためしてガッテンで、はじめて
AMPKという酵素があることを知りました。
こちらの情報から糖尿病だけでなく抗癌の働きもある長寿の酵素と知り、あらためて感動を覚えました。
ところで、こちらでご紹介の食品を積極的に
とることでAMPKが活性化しやすいと了解いたしましたが、AMPK酵素そのものを増やす方法も
あるのでしょうか
ご教示いただければ幸いです
ごめんくださいませ