人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2011年3月10日木曜日

「良薬、口に苦し」: 「苦木」(ニガキ)の薬効/薬理作用? 

パナマなど中南米の熱帯密林に棲息する「苦木」(ニガキ)の樹皮は、世界で
「最も苦い」生薬と言われている。原名は「Simarouba amara」。この苦い樹皮の
エキスは、トリテルペン類を含み、マラリアの民間薬として、昔から使用されて
いる。1947年に、薬剤(クロロキン)耐性のマラリア原虫が、このエキスで
退治されることが、ニワトリを実験材料に使って実証された。それだけではない。
抗癌作用もある。更に、線虫の寿命を延長する働きもあることが、今年になって
わかった。従って、沖縄特産の「苦瓜」(ゴーヤ) と同様、「メタボ解消」や「健康長寿」
にも寄与するようだ。さて、最近になって、このエキスの有効成分「glaucarubinone」
の薬理作用が分子レベルで解明され始めた。

まず、マラリア原虫の増殖には、エイズウイルスと同様、発癌キナーゼ「PAK」
が必須であることが、今年になって、スイスのローザンヌにあるドーリッグ研究
室によって実証された。もっとも、数年前に「PAK」遮断剤であるクルクミン
やFK228に抗マラリア作用があることが発見され、マラリア感染にも
「PAK」が関与していることが示唆されてはいたが。。。 さらに、昔から
抗マラリア剤として知られているキニーネの誘導体「キニディン」が実際に
PAKを遮断し、NF2腫瘍細胞の増殖を特異的に抑えることを、我々は
2004年に偶然発見している。 ただし、IC50が比較的高い (25 
micro M)ので、抗癌剤としては魅力に欠ける。

「glaucarubinone」の抗癌作用には、NFkappaBを遮断する機能が関与し
ていることが2010年になって判明した。NFkappaBの活性化には「PAK」が
必須である。更に、この物質が線虫の脂肪分の減少(「痩せ」現象) や寿命の
延長に寄与することが、ドイツのイエナ大学のマイケル・リストウ教授らによって、
明らかにされた。 この2つの薬理作用と抗マラリア作用に共通するものは一体
何かと言えば、他でもない「PAK」遮断作用である。

クルクミンやFK228ばかりではなく、プロポリスやゴーヤの苦味成分(トリテルペン
の一種)、ベルベリン、レスベラトロール、エモディンなど10種以上の抗癌性生薬成分が
「PAK」遮断作用を共有している。従って、まだ直接の証明はないが、「苦木」の
トリテルペン「glaucarubinone」が「PAK」を遮断していることが (9割以上)
確実である。

さらに今夏になって、このトリテルペンがPAK依存性のNF2腫瘍細胞の増殖を強く阻害することも、
我々の手で確認された(IC50 は50nM)。 従って、この苦木エキスが将来,NF腫瘍や
すい臓がんの特効薬として普及する可能性が高まりつつある。

面白いことには、「苦木」エキスはプロポリスよりも、「苦味」が強いばかりではなく、
薬理作用がずっと強いようである。かと言って、その苦味にじっと耐え (苦行し) ながら、
経口する必要は、幸い、全くなくなった! というのは、プロポリスや花椒エキスの
ような苦い生薬は、前述のごとく「ガンマーCD」という天然の環状糖で包接することによって、
苦味を消すばかりではなく、腸管からの吸収を高めることができるからである。従って、
「苦木」エキスをCDでうまく包接すれば「苦くない良薬」を創り出すことが期待できる。。。

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