人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2014年8月10日日曜日

「PAK-ILK-p65 ( NF-κB) 」 シグナル経路:
癌にも炎症にも流感にも必須!


「PAK」というキナーゼが発癌や老化に必須であることは前述した。更に、PAKに
よって活性化される「ILK」(integrin-linked kinase) も発癌や老化に必須であることも
最近判明した。従って、PAK-ILK シグナル経路は我々の健康長寿を脅やかす「悪
玉」の相棒関係にある。 さて、PAKが胃潰瘍、喘息、リューマチなどの炎症にも
必須であることが数年前から知られている。というのは、PAK遺伝子を欠損した
マウスでは、これらの炎症が発生しないからだ。だから、PAK遮断剤の一つである
「セルベックス」が胃潰瘍の特効薬であることに不思議はない。いいかえれば、
この薬剤は胃潰瘍ばかりではなく、喘息やリューマチなどの治療薬としても有効
なはずである。

さて、ごく最近、豪州のメルボルン郊外にあるモナッシュ大学の医学研究所にある
ブライアン=ウイリアムス教授の研究室が「ILK」に関して、面白い発見をした。
このキナーゼも (PAKと同様) 胃潰瘍などの炎症に必須であることをまず突き止め
た (1)。 更に、ILKによって燐酸化される転写蛋白をみつけた。 「p65」 と呼ばれる
転写蛋白 (=NF-κB の一員) は、ILKによって燐酸化されると、細胞質から核内に移行して、
活性化される。 さて、胃潰瘍の主原因は、ピロリ菌による感染であるが、ピロリ菌は
宿主のPAKを異常に活性化することによって、胃炎、胃潰瘍、胃癌など一連の病気を
発生させる。 その結果、ILKが異常活性化し、燐酸化された転写蛋白p65 が核内に入り、
炎症をもたらすTNF-アルファなど一連のいわゆる「炎症蛋白」(ホルモン) の産生を
促すわけである。

流行性感冒(インフルエンザ=ウイルス感染) にもPAKが必須であることがわかって
いる。 PAK遮断剤であるプロポリスが流感の特効薬である理由はそこにある。
さて、ILK やp65 (NF-kB) はどうだろうか?  2年ほど前にドイツのミュンスター
大学ウイルス研のステファン=ルードビッヒ教授の研究室が、p65阻害剤であるSC75741
(15 mg/kg) によって、マウスへのインフルエンザ=ウイルスの感染を見事に予防/治療に
成功した (2)。 いいかえれば、「PAK-ILK-p65」 シグナル経路は流感などのウイルス感染
にも必須なのである。当然ながら、セルベックスは流感にも有効であるはず。

 けだし、p65の発見者はドイツ人のPatrick Baeuerle である。パトリックは1980年代前半に
私がミュンヘンのマックス=プランク研究所に勤務していた頃、隣の研究室にいた
ずば抜けて優秀な院生だった。 1989年に米国MITのDavid Baltimore 教授
 (逆転写酵素の発見でノーベル賞を受賞) の研究室でポスドクをしていた頃、p65が
NFkB 複合体の一員であることを発見した。 その抗体を開発後、モノクローナル抗体の
開発研究に専念し、現在はミュンヘン大学の名誉教授であると共に、米国ベセスダ
(NIH のあるワシントン市郊外) で、抗体製剤を扱うベンチャー会社「Micromet」(最近、
Amgen が吸収合併) の社長をしていると聞いている。

参考文献:  
Integrin-Linked Kinase Modulates Lipopolysaccharide- and Helicobacter pylori-Induced Nuclear Factor κB-Activated Tumor Necrosis Factor-α Production via Regulation of p65 Serine 536 Phosphorylation. J. Biol Chem. 2014 Aug 6. 
2.  Ehrhardt C, Rückle A, Hrincius ER, et al. The NF-κB inhibitor SC75741 efficiently blocks influenza virus propagation and confers a high barrier for development of viral resistance. Cell Microbiol. 2013; 15: 1198-211.

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