人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2015年12月25日金曜日

日本生化学界の大御所、早石修さん (95歳) が 他界!

アミノ酸 (例えば、チロシン) などが生体内で酸化する反応について、酵素の働きで空気中の酸素が直接、物質に取り込まれる反応もあると考え、アメリカの国立衛生研究所(NIH)毒物学部長だった1955年、この考えを裏付ける「酸素添加酵素」(Oxygenase) の存在を実証した。例えば、メラニン色素合成に関与するチロシナーゼもOxygenase 群の一種である。 Oxygenase は 「ハヤイシ酵素」 とも呼ばれ、世界的に有名である。 1958年に米国から帰国し、38歳で京大医学部教授に就任。 1967年には、日本学士院賞を受けている。後年、大阪医科大学長、大阪バイオサイエンス研究所(今年3月解散)所長などを歴任。

早石教授は、睡眠の研究にも取り組み、炎症や痛みの原因物質 「プロスタグランジン」の研究など、後年まで精力的に活動を続けた。 数年前、ドイツのミュンヘン大学の研究者によれば、プロスタグランジンの合成に必須な酵素「COXー2」(Cyclo-oxygenase-2) を抑制すると、精神分裂症 (統合失調症) や鬱病が 軽減されることが判明した(1)。

 「COXー2」を抑制すると、鎮痛ばかりではなく、安眠を促進することもわかっている。前述したが、チロシナーゼ遺伝子の転写ばかりでがなく、「COXー2」遺伝子の転写にも、PAKが必須である。従って、プロポリスなどのPAK遮断剤を経口すると、多少眠気を催すのは、「COXー2」の機能が抑制され、催眠効果が発揮されるからであると解釈される。 従って、車の運転前には、経口を控えたほうが無難である。勿論、就寝前に飲むのがタイミングとしては理想的であろう。

私の恩師である水野伝一教授 (95) は未だ健在だが、かつて東大薬学部教授だった頃、早石教授と共に、我々 (若い生化学者) を新しい学問分野 「分子生物学」へ引っ張っていく原動力になった。 水野先生自身は「癌の免疫療法」に力を入れていたが、我々学生たちは、「生物学なら何を研究しても構わない」 と常に言われていた。 結局、私自身は "癌の化学療法" (特に、「PAK遮断剤による難病の療法」) に焦点を合わせることとなった。

私自身は早石教授と直接面識はなかったが、PAKとOxygenase 群との間の深い関係から、早石教授のお弟子さんたち (あるいは孫弟子の世代) と共同研究をする機会を得た。  早石教授もその弟子である西塚泰美教授 (キナーゼ「PKC」研究の専門家) もノーベル賞候補に挙げられていたが、結局、受賞を逃した。 その理由は幾つかあろうが、恐らく一つは、研究が余りにも基礎的で臨床への繋がりが少なかったからだろうと推察する。医学者や薬学者は、いわゆる「象牙の塔」の研究に甘んじず「患者の目線」で研究しないと、なかなか受賞に結びつかない。 「マンネリ」ではなく 「ギア=チェンジ」が必要である。

 面白い偶然だが、早石さんがNIHで悪玉「Oxygenase 」を発見したのは35歳、私自身がNIHで悪玉「PAK 」を発見したのも35歳だった。 違いは早石さんはその後間もなく日本に帰国し「教授職」を得たが、私は海外にずっと残って「研究の自由」(冒険) を選んだ。 学生たちをリモートコントロールするよりも、自ら好きな研究をした方がずっと楽しいからである。 もっとも、10年ほど前に (海外の) 癌研究所を退官して以後は、専ら "リモコン" (電子メール) で、(海外各地に散らばる) 後輩の指導をしながら研究成果を上げつつある。

1992年に 「COXー2」遺伝子 (cDNA) を最初にクローンしたグループがNIHの直ぐ隣りにあった「赤十字」研 (Holland Lab) 所属であることを、実は最近知った。この研究所は小さい割に研究成果を上げていた機関である。 私がNIH勤務だった頃 (1970年代後半)、私の大学 (教養学部) 時代の同級生 (諸井君) 夫婦が赤十字研で血小板の研究していたので、その存在を知った。 PDGF(血小板由来成長因子) はPAKを介してCOXー2を誘導する。 さて、彼と私は陸上部 (長距離) に属していたので、NIH構内で (研究室対抗の) 駅伝レースが初めて開催された時、(臨時に) 彼を我々の「PAK」研チームに スカウトして優勝を果たし、「文武両道」を誇った思い出がある。 我々の時代には (今と違って)、 東大陸上部は「箱根駅伝の予選」にも参加できなかった。弱体で、長距離を走れる部員が10名もいなかったからだ。そこで、NIHで気勢を上げた。。。

参考文献: 
1. Müller N, Schwarz MJ. COX-2 inhibition in schizophrenia and major depression. Curr Pharm Des. 2008;14(14):1452-65.

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