人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
For detail, click the above image.

2010年3月3日水曜日

南米原産の「コショウボク」(胡椒木) は薬用植物:
抗菌、制癌、抗炎症、利尿、駆虫作用などがある。

メルボルン郊外にある私の引っ越し先のすぐ近くに、長いクリーク(小川より大
きく渓流より小さい)が流れている。クリークに沿って続く曲がりくねった静か
な土手道が、私の毎朝一時間の散歩道になっている。自転車(サイクリスト)や
歩行者専用の道で、自動車が全く通らないから、空気がすこぶる澄んでいる。こ
のクリーク沿いに、「垂れ柳」に似た大木が延々と並木道を作っている。葉は複
葉で典型的な柳の葉とは違うようだが、遠方からみると、丸で柳の並木のようで
ある。白い小さな花が咲き、それが赤く色づいて、小さな実になる。晩夏にそれ
が地面に落ちて、赤いじゅうたんを敷き詰めたようになる。小枝を折ってみると、
真っ白い粘性の樹脂が出てきて、松脂を思わせる新鮮な香りがする。曲がりくねっ
た幹や枝ぶりなどから、私はてっきり、この木を「柳の木」の一種だとばかり思
い込んでいた。この小枝を、自宅の庭に插し木を試みたが、なかなか成功しなかっ
た。どうやら根がないと、うまく生き残れないようだ。

そこで、ある日、この小枝をサンプルに持参して、郊外にある大きな苗木屋を訪
れ、「こんな葉をした柳の苗木はないか」と尋ねてみた。店員は、顔にニッコリ微笑
を浮かべながら、「これは柳ではなく、ウルシ科のペルー原産「peppercorn tree」
(コショウボク) と呼ばれる木ですよ」と教えてくれた。そこで、私の身長ほどあ
る苗木を2千円弱で購入して、自宅の門のすぐ後ろに、早速植え込んだ。ユーカ
リのように成長が速いそうなので、私がまだ生きているうちに、この苗木が高さ
15メートル(巾10メートル)近くの大木になる日がやって来るのを、今から大変
楽しみにしている。。。

まず、インターネットで「コショウボク」なるものの正体を少し調べてみた。学
名は「Schinus molle」だそうだ。松脂を思わせるあの芳香の精油は、どうやら
「ピネン」と呼ばれるテルペン類を含んでいるようだ。さらに、もっと面白いこ
とがわかった。この木は、中南米地方で古来(インカ時代)から「薬用植物」と
して、珍重されてきたということだ。抗菌作用、抗炎症作用などがあることから、
傷口やリュウマチの治療に使われてきたそうだ。芳香の粘液は、飲料に加えたり、
チュウインガムの材料にも使われている。更に驚くなかれ、ごく最近(数年前)
には、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスの研究グループなどにより、その抗
癌作用も見つけられている。PAK依存性の乳癌や肝癌細胞の成長を抑えるそう
だ。

さて、喘息やリュウマチなどの炎症もPAK依存性の病気である。従って、「コ
ショウボク」には、発癌性キナーゼ「PAK」を遮断する作用を持つ抗生物質が
含れている可能性が大いにある。数年前に、我々は四川省原産の花椒 (山椒の親
戚) の真っ赤な実 (peppercorn) に、「PAK」を選択的に遮断することによっ
て、抗癌作用を発揮する物質が含まれていることを発見した。「花椒」はミカン
科の潅木であるが、その赤い実は、ウルシ科の「コショウボク」の赤い実に、そ
の色や形がそっくりである。私の好きな「ダーウイン的な平行思考」からすれば、
「コショウボク」には、ある種の「PAK遮断剤」が存在するに違いない。。。

近い将来、自宅の裏庭で養蜂を始めようと計画しているが、ひょっとすると、この
木も新規な「プロポリス」の生産原料の1つになるかもしれない。何度か前述したように、
「プロポリス」とは、ミツバチが一億年の英知を絞って、木々の樹脂から作り出す天然の
PAK遮断剤 (抗生物質)である。ミツバチの幼虫を種々の感染から守るばかりではなく、
我々人類の癌や糖尿病(type 2)やリュウマチなどの難病の治療に役立つ安価かつ
安全な特効薬でもある。

もう1つ(養蜂家にとって)特記すべき薬理作用がコショウボクにあることが、数
年前にアルゼンチンのグループによって、発見されている。現在、(豪州を除く)
世界中のミツバチが「Varroa destructor 」と呼ばれるダニによって、感染をう
けて存命が危ぶまれていることを前述したが、コショウボクの精油には、このダニを
駆除する強い作用があるそうである。 従って、コショウボクを庭に植えることには、
自身プロポリスの原料木として役立つばかりではなく、ミツバチをダニ害から
救うという、一石二鳥の利点がありそうだ!

0 件のコメント: