人々の “健康促進” のために!

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2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2010年3月30日火曜日

小説「ホシ(犯人)の指紋を洗い出せ!」
(Looking for the Finger Print)
ヴィクトル・ドイル (Victor Doyle)著

前書き

名作「レ・ミゼラブル」(ああ、無情)で世界的に知られているフランスの文豪
ヴィクトル・ユーゴー(1802ー1885)と「シャーロック・ホームズの冒
険」で有名な英国の探偵小説家コナン・ドイル(1859ー1930)が、もし
仮に、21世紀の今日、もう一度どこかで再会できるというチャンスがあったと
すれば、1831年出版の名作「ノートルダムのせむし男」(The Hunchback of
Notre Dame =Notre-Dame de Paris)の筋は、恐らく随分違ったものになったろう。

この小説は1923年以来、何度も映画化されたが、まだ観たり読んだりしたこ
とのない方々のために、この原作の筋書きを、まず簡単に紹介しよう。

ノートルダム大聖堂の前に、一人の醜い赤ん坊が捨てられていた。彼は大聖堂の
副司教、フロロ(Frollo)に拾われ、カジモド(Quasimodo)という名をもらう。
彼は成長し、ノートルダムの鐘つきとなる。

パリにやって来た美しいジプシーの踊り子エスメラルダ(Esmeralda)に、聖職者
であるフロロは心を奪われる。欲情に悩み、ついにはカジモドを使ってエスメラ
ルダを誘拐しようとする。

しかしカジモドは捕らえられ、エスメラルダは衛兵フェビュス(Phoebus)に恋す
るようになる。フェビュスとエスメラルダの仲は深まるが、実はフェビュスは婚
約者がいる不実な男だった。

捕らえられたカジモドは広場でさらし者になるが、ただ一人エスメラルダだけは
彼をかばう。カジモドは人間の優しさを生まれて初めて知り、彼女に恋をする。
フロロも彼女に想いを募らせるが、エスメラルダの心はフェビュスにある。フロ
ロは逢引をするふたりをつけて行き、フェビュスを刺して逃げる。エスメラルダ
は犯人にされ、魔女裁判の元に死刑が言い渡される。

カジモドはエスメラルダを救いノートルダム大聖堂にかくまう。しかし、エスメ
ラルダはカジモドのあまりの醜さにまともに顔を見ることすらできなかった。

フロロはパリの暴動の矛先をノートルダム大聖堂に向けさせ、混乱の中エスメラ
ルダを連れ出す。しかし彼女はフェビュスを刺したフロロを拒む。フロロは彼女
を衛兵に引き渡し、エスメラルダは兵士達に捕まり、処刑される。

大聖堂の塔の上からそれを見届けるフロロを、カジモドは塔から突き落として殺
す。

数年後、処刑場を掘り起こすと、白い服装をしていた女性エスメラルダと思われ
る白骨に、異様な骨格の男の白骨が寄り添っており、それらを引き離そうとする
と、砕けて粉になってしまった。


実は、主人公「カジモド」は乳児の時分から一生、稀少難病「NF」(神経線維腫症タイプ1、
NF1) の重症患者として苦しんだ。NF1患者 (特に、子供) の骨はビタミンD3欠乏の
ため、非常にもろく、乱暴に扱うと、砕けて粉になってしまう。観察力の鋭い
若き文豪ユーゴーは、この難病がNFであることが、ドイツの医師(病理学者)
フリードリッヒ・フォン・レックリングハウゼン博士(1833ー1910)によって
1882年に初めて発見されるずっと数十年前に、NF患者を小説の主人公にした
最初の作家である。彼の深い洞察と先見の明に痛く感服する。

http://www.bmj.com/cgi/pdf_extract/291/6511/1801

更に興味深いことに、一説には文豪(ユーゴー)自身が軽症ながらNF1患者であっ
た可能性があるそうである。ともあれ、貧民「ジャン・バルジャン」(「ああ、無情」の
主人公)の味方だったユーゴーが、稀少難病「NF」の患者の味方でもあったことは、
確かである。

さて、今世紀の初頭、NFという腫瘍を伴う遺伝子病の病因が解明されている。
ある発癌性のキナーゼ ( 酵素の一種) が異常に活性化することが病因である。
更に、そのキナーゼを特異的に遮断しうる作用を持つ天然産物が幾つか、最近
知られている。その内の一つは、ボヘミア地方など中欧からやってきたジプシーなら
誰でも良く知っている古来の秘薬である。不思議にも、ジプシーを含めて養蜂に
たずさわる人々の間には、NF患者や癌患者がほとんどいない。従って、もし、
この物語 (事件) が中世時代ではなく、21世紀を舞台に展開したならば、
エスメラルダは恩人であるせむし男「カジモド」の醜い顔や背中のこぶ(良性腫瘍)
を、この秘薬の力で癒してやることができたに違いない。。。

以下の小説は、ユーゴー家とドイル家の子孫の一人、ヴィクトル・ドイル、が
21世紀になって書き直した、せむし男とジプシーの踊り子のロマンスである。
この小説の圧巻(見どころ)は、名探偵ホームズの助手だった「ワトソン医師」の
孫に当たる人物が大いに活躍するところにある。 まず、犯人(病因)の正体を
特定する捜査に焦点を合わせた。。。

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