人々の “健康促進” のために!

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2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2011年1月8日土曜日

罪と罰: 「死刑」か「家宅侵入」罪か

(2009年6月18日の夜に発生した)鹿児島の老夫婦殺人事件で、「死刑」
を求刑されていた白浜被告が「無罪」の判決を受けたのは、一応妥当(いわゆる
「大岡裁判」)である、と私は考えている。ただし、このケースの実体はかなり
複雑だという印象も受ける。つまり、殺人を実際に犯した真犯人(殺人犯)と、
(無罪になった)白浜被告との間に、一種の「すれ違い」が、事件当時、殺人現
場近くであった可能性があるからだ。

被告(大工)は盗み(あるいは未遂)の前科(つまり、「盗癖」)がある。従っ
て、たまたま盗み(コソ泥)に入った現場(異様に静まりかえった家)で、老夫
婦が惨殺されているのを発見して、びっくり仰天して、何も盗まずに逃走したと
いう可能性は、まだ完全に否定できない。被告本人は事件現場に一度も来たこと
がないと言い張っているが、(不思議にも)現場に被告の指紋やDNAが残って
いると、警察側が主張しているからである。もし、後者の証拠が(6月29日に
被告を逮捕後に「でっち上げ」た物でなく)事実ならば、白浜被告に対する罪状
は、「家宅侵入」罪が妥当だろう。しかし、「死刑」は明らかに重過ぎる! 被
告がこの殺人に直接関与したという証拠が全くないからだ。さらに、被告がこの
老人夫婦を殺害する動機もない。。。 被告は逮捕されて以来、既に一年半近く
留置されている。「家宅侵入」罪で一年半の刑期は、常識的に長過ぎる。(「濡
れ衣」を着せられた)被告は「名誉毀損」と「精神的打撃」を理由に、警察側に
対して「損害賠償」を請求する権利が当然ある。しかしながら、考え方によって
は、この事件は被告に、貴重な「教訓」を与えたとも言える。逮捕前まで、姉夫
婦の家に居候しながら、年金を全部、パチンコや酒で3日以内に使い果たす「退
廃的な」生活から脱却しうる機会を得たからだ。

さて、この殺人事件の「真犯人」は一体誰か? この事件が「迷宮入り」する前
に、ぜひ名探偵「シャーロック・ホームズ」のお出ましが必要だ。。。 事件は
(短絡気味の)地元の警察の手には負えそうもないからだ。

この殺人事件を考える時、ロシアの文豪ドストエフスキーが書いた名作「罪と罰」
を思い出す人々は多いだろう。金貸しばばあ(老婆)が、ある貧乏学生「ラスコ
ルニコフ」(小説の「主人公」)に殺される事件である。この青年には、強い
「殺人の動機」があった。自分の「貧乏」(貧困)を何とか克服せねばならない、
という動機である。青年は、老婆の存在価値と自分のそれとを比較して、自身の
存在価値を優先した。「高利貸し」で老婆が貯め込んだ金を、自分がもっと有効
に使うことによって、(貧困に苦しむ自分の母や妹を含め)社会に益しうると結
論した。こうして、青年は老婆を斧で殺害し、金を奪う。ところが、逃走中、あ
る若い女性に出会う。この女性と話し合っているうちに、次第に「自責の念」
(罪の意識)が芽生える。結局、青年は自首をして、然るべき罰(死刑)を受け
る覚悟を決める。

しかし、逮捕される前に自首すると、減刑される場合がある。小説の舞台は、ロ
シア革命前の帝政時代であり、多くの人々が貧困に苦しんでいた。そういう「虐
げられた人々」に温情を感じるインテリゲンチアの一人である作者は、この殺人
犯に死刑の代わりに、「シベリア流刑」で、再生の(生まれ変わる)チャンスを
与える。 作家自身、「政治犯」として、シベリアに4年間も抑留されていた
(零下40度の極寒で毎日、重労働に耐え抜く)苦い体験を持つからだ。

鹿児島の(殺された)老夫婦は、生前「金貸し」をしていたそうである。「真犯
人」は、この金貸し夫婦を殺害したが、金は奪っていないようだ。何故だろう?
 借金の返済を「無慈悲」に強要されたので、かっとなって、夫婦をスコップで
乱打して、殺したのだろうか? 真犯人は、この殺害を今「後悔」しているだろ
うか?  「ラスコルニコフ」のごとく、(死刑を覚悟で)警察へ自首する気に
なるだろうか? それとも、白浜被告に「濡れ衣」を着せたまま、一生ぬくぬく
と生き残る積りだろうか。。。 

英国や豪州では、「死刑」がずっと昔に廃止された。「無期懲役」が一番重い刑
罰である。従って、被告が生きているうちに、「濡れ衣」を晴らすチャンスが、
まだ残されている。。。日本、米国、中国、ロシアなどの大国(人口の多い国々)
では、人々の「命」が粗末にされがちで、(短絡な)警察が「無実」の被告を、
「でっち上げ」の証拠で起訴すれば、あっと言う間に死刑になってしまう。。。
 こういう野蛮な(裁判)制度は、できるだけ早く、改正(改善)すべきである。
2010年12月の「大岡裁判」は、その第一歩といえるかもしれない。。。

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