人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2016年4月20日水曜日

ミニ総説: 短命 「老化」 酵素 (PAK) を抑制すれば、長寿を実現できる!


下等動物については、厳しいカロリー制限により老化が抑制されて寿命が伸びることが実験で明らかにされていたが、マサチューセッツ工科大学 (MIT の研究者たちは、そうした動物で老化に関与する酵素が人間でも同じ働きをすることを発見した。 これらの酵素を操作すれば、厳しいダイエットに耐えるのと同じ効果をもたらし、人間の寿命を大幅に伸ばすことも可能かもしれないという。

 
バイオ評論家 “Kristen Philipkoski” 著 WIRED NEWS (English) から

[共訳:天野美保/多々良和臣] (20040210日)の添削・編集・抜粋:

 
人間の寿命を最大限に延ばす最善の方法は、厳しいカロリー制限を行なうことらしい。平均的な男性の場合、1日当たり約1800カロリーで生活するのが望ましい。

 
たいていの人は、より健康で、より長生きしたいと思っていることだろう。ただし、食べるのを徹底的に我慢しようという仙人のごとき人物は、極めて少数派であることは、『ウォルマート』 などのスーパーマーケットの中を歩けば、一目瞭然である。 しかし、ここで朗報! カロリー制限と同じ効果を得られる方法が見つかりつつある。

 
MITの研究者たちが、人間の老化に関与する主要な酵素の特定に成功した。 この発見――論文は科学誌『セル』のオンライン版に掲載――は、老化について研究している研究者たちだけではなく、150歳まで生きることを望む人々にとって素晴らしい知らせであるに違いない。 これらの酵素を操作したところ、線虫の場合、寿命が2倍になったが、これまでは、同じ酵素が人間における老化にも関与しているのかどうか定かではなかった。 ところが、これらがカロリー制限の結果として老化作用を抑制すると研究者たちが考えている酵素と同一であることが判明。

 
「だからこそ、これらの酵素は非常に重要なのだ」と、この論文の筆頭執筆者であるMITの生物学者、レオナルド・ギャレント教授 は述べた。 厳しく食事を制限しなくても「老化に関わる酵素に作用する薬剤を開発すれば、カロリーを制限するのと同じメリットが得られる――労せずして益あり!」。 ギャレント教授は国 “エリクサー・ファーマスーティカルズ社”の創立者であり、『不老への探究』 (Ageless Quest) の著者でもある。

 
ギャラント教授は、培養皿で人間とマウスの細胞を調べた結果、より下等な動物 (例えば、線虫など)でも、相互に作用する2つの酵素が人間でも同じ働きをすることを発見した。教授によると、これで、人間の老化が管理されている事実、そして同時に、管理する酵素を操作できる可能性が示されたという。

 
老化研究のための同盟』の責任者、ダニエル・ペリー氏は次のように述べている。「この研究が重要なのは、カロリー摂取を極端に制限した際の、人間の体内で生じる化学反応を理解することに一歩近づいた点にある。 カロリー制限は、50年にわたる研究から、老化とその悪影響を抑制して遅らせることができる唯一の方法として知られていた」

 
問題となる2つの酵素は、寿命に重要な要素と考えられている 「SIRT1」 蛋白 と 長寿蛋白FOXO」 である。 基本的にSIRT1は、生物の摂取カロリーが少ない場合に、FOXOの活動を増強する。 SIRT1FOXOを介して、熱ショックなどの物理的なストレスに対する人間の細胞の抵抗力を増す。

 
「そのためSIRT1は、哺乳類の寿命に関与するとされ、将来的に人間の治療にも応用できるとみられている」。 カリフォルニア大学サンフランシスコ校でシンシア・ケニオン教授の研究室に所属するポスドク、マレーネ・ハンセン(現在、スクリップ研究所の主任研究員)はこのように述べる。 ハンセン氏は、ごく最近、短命[老化]酵素PAKのすぐ下流にあるLIMキナーゼ (LIMK を抑制しても、線虫の寿命が延びることを発見した。我々は、その2,3年前に、PAKを遮断すると、線虫の寿命が "6割" ほど延びることを発見していている。 従って、PAK-LIMKは、典型的な “短命・老化キナーゼ(酵素)群“ なのである。

 
ケニオン教授をリーダーとする研究グループは、線虫 「エレガンス」 を飢餓状態にし、長寿蛋白 "FOXO" を活性化することにより、線虫の寿命を6倍に延ばすことに成功した。ブライアン・アレキサンダー氏は自著 『歓喜:バイオテクノロジーはいかにして新しい宗教になったか(Rapture: How Biotech Became the New Religion) の中で、この研究について記している。

 
科学者たちは、この現象を、飢餓に直面する中で生命を維持するという、進化上の目的によるものだと考えている。 食物が乏しければ、このメカニズムが働いて生体の全ての機能は低下し、よって生物は若さを保てることになる。 再び食物が取り込まれた際に、生物は遺伝子を再生して伝達するだけの若さを保っていればいいわけだ。

 
カロリー制限を実践している人は、これを事実だと考えているわけだが、人間については、まだ実証はされていない。 一方で線虫、マウス、霊長類については、厳しい食餌制限により、実際の年齢より若く見えることが明らかになっている。 つまり、カロリー制限を行なった生物は、"美しく" 死ぬことができる。

 
カロリー制限の効果は注目に値すると、研究者たちは述べている。その過程において、身体のすべての細胞が保護されるのだ。

「カロリー制限の最大のポイントは、長生きを可能にするというだけではなく、加齢に伴って発症する多くの疾病への防御手段とも考えられることにある」と、ギャレント教授は話す。老化に関連する病気には、アルツハイマーや糖尿病、癌、心疾患、骨粗鬆 (そしょう) 症などがある。

 
カロリー制限が全身に及ぼす効果を知るため、MITのギャレント研究室は、主に食餌療法、脂肪、そして老化の関係について研究する予定だ。 カロリー制限による一番の影響は、脂肪の消失だからである。 

 
追記: 他方、2005年ごろ、ハーバード大学のデビッド・シンクレア教授のグループは、“レスベラトロール”と呼ばれるポリフェノールが、「SIRT1」 蛋白を直接活性化して、FOXOを介して、寿命を延ばしているという、仮説を提唱した。 しかしながら、その後の研究結果から、“レスベラトロール” の直接の標的は、どうやら「SIRT1」 蛋白ではなさそうであることが判明した。 ごく最近、我々(沖縄PAK Research Center は、短命酵素 “PAK” が “レスベラトロール” によって直接阻害されることを見つけた。 さらに、我々は、“レスベラトロール”より1000倍も強力な新しい “PAK” 遮断物質を合成するのに成功し、特許を出願した。 この新薬が、市場に出れば、沖縄を今日むさぼる “肥満症” の解消に貢献するばかりではなく、再び、沖縄を、“健康長寿県” の王座に君臨させることができるだろう。


節食(腹八分目)や適度な運動により、カロリー制限ができる。すると、もう一つの酵素(LKB1 キナーゼ)が活性化される。 この酵素は、その下流にある2つの酵素の機能を左右する。“AMPK” と呼ばれる長命酵素を活性化する。同時に、短命酵素(PAK を抑制する。 PAKは本来、長寿蛋白 “FOXO を抑制している。 こうして、カロリー制限でも、PAKを抑えながら、FOXOを活性化して、健康長寿に貢献する。 従って、プロポリスやレスベラトロールなどのPAK遮断剤は、カロリー制限のできない肥満症患者の健康長寿に役立つわけである。
 

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