人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2008年5月30日金曜日

「PAK遮断剤」による(癌などの) 難病治療への展望

発癌のメカニズムが分子レベルでわかり始めたのは、今から30年ほど昔、SRCという発癌遺伝子がある発癌ウイルス中に発見されて以来のことである。SRC遺伝子の産物 (蛋白) は、酵素の一種 (キナーゼ) であり、蛋白のチロシン残基を燐酸化する機能を持つ。しかしながら、通常SRCのみではなかなか発癌しにくい。やがて、第2の発癌遺伝子が別の発癌ウイルス中に発見された。RASという遺伝子である。その産物RAS蛋白は、キナーゼではなく、一種のGTPase (あるいは「G蛋白」) である。この蛋白はGTPに結合している場合にだけ活性である。SRCとRASを組み合わせると、発癌しやすくなる。やがて、この2種の発癌蛋白に共通な標的蛋白が発見された。RAFという発癌キナーゼである。このキナーゼは通常、細胞質に存在するがRASに結合すると、細胞膜に移行する。そこで、SRCによって燐酸化される。しかしながら、それだけでは、正常なRAFは活性化されない。第3の蛋白が必要であることがわかった。その蛋白はPAKと呼ばれるキナーゼである。RASは細胞内でPAKを活性化する機能を持つ。さて、PAKがRAF分子のセリン338を燐酸化すると初めて、RAFが発癌性を発揮する。従って、PAKあるいはRAFを特異的に阻害する薬剤は、種々の癌に有効であることが予想される。こうして、今世紀に入って、2、3のRAF阻害剤あるいは数種のPAK遮断剤が開発されつつある。

RAF阻害剤についてはまだ市販されているものはないが、PAK遮断剤については、2、3の天然産物が健康食品サプルメントとして既に市販されている。蜜蜂が木の若芽や樹脂から作り上げるプロポリス(蜜蝋)のエキスである。もともとプロポリスは蜂の巣箱に住む幼虫を外界の病原体(細菌やウイルス)から守るために、蜜蜂によって考案された一種の抗生物質である。従って、感染予防に有効であることが、古代エジプト時代から知られていた。伝染病や炎症の治療ばかりではなく、ミイラの保存にも広く使われた。この伝承薬は、古代ギリシャ・ローマ時代を経て、ヨーロッパの中世時代まで一般に使用されていたが、15世紀に始まるルネッサンス時代に近代医学が芽生え始めると共に、次第に廃れていった。さて、プロポリスが治療薬として再発見されたのは、1970年代になってからである。ドイツの生化学者たちによって、その抗感染作用が再認識されるようになった。さらに1980年代後半になって、東欧や米国の癌学者によって、その抗癌作用が発見された。以来我が日本でも、プロポリスの研究が進められ、今や世界最大の「プロポリス消費国(市場)」となった。

主に3種類のプロポリスが抗癌剤として、注目されている。その一つは、(ポプラの木が茂る) 欧州、極東、オセアニアで産出されるCAPEという抗癌性ポリフェノールを含むプロポリスである。最近、CAPEがPAKを遮断することが明らかにされた。ニュージーランド(NZ)産のプロポリスには、CAPEが最も多く含まれていることが知られている。我々は最近、NZ産のプロポリスの水溶性エキス(BIO 30)が、難病 NF(神経線維腫症)、乳癌、すいぞう癌などに効くことを、マウスを使った動物実験で確認している。

http://homepage2.nifty.com/daikon_tom/nfj/NFJ_200809.htm

もう1つはブラジル産のグリーン・プロポリスである。このプロポリスには、抗癌物質としてCAPEの代わりに、ARC (Artepillin C)というポリフェノールが主成分として含まれている。ARC もPAKを特異的に遮断し、NF腫瘍やメラノーマなどの癌の増殖を抑えることを、我々は最近確認している。第3のプロポリスは、ブラジル産の赤プロポリスである。このプロポリスでは、CAPEやARC の代わりに、全く別の抗癌物質が含まれていることが、最近わかった。面白いことに、赤プロポリス・エキスも培養系で(PAK依存性の)すいぞう癌細胞の増殖を阻害するので、恐らくPAKを遮断していることが予想されている。

さて、癌の大半(7割以上)がその増殖にPAKを必須とすることが、最近になって明らかになった。乳癌や前立腺癌ばかりではなく、大腸癌、すいぞう癌、子宮癌、メラノーマ、MM(多発性骨髄腫)、NF腫瘍などもPAK依存性の腫瘍である。 それ以外に数種の他の難病の進行にもPAKが必須であることがわかっている。エイズ、メタボ(肥満症)、アルツハイマー病、リューマチ、喘息、癲癇、自閉症などが、その典型的な例である。従って、これらの難病は原理的には、PAKを遮断する各種のプロポリスで治療が可能なはずである。

続く

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