人々の “健康促進” のために!

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2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2017年11月10日金曜日

小説 「日の名残り」: 「大英帝国の名残り」(伝統) に触れる

この小説は映画化され、執事を演じるアンソニー=ホプキンス女中頭を演じるエマ=トンプスンとの共演で話題になった作品の原作であるが、映画も、ほんの一部 (恐らく、最後の場面) を観ただけの私には、小説 (話) の全体像や焦点が殆んどつかめていなかった。最近、作家である英国在住の石黒一雄さんがノーベル文学賞をもらったのを耳にして、"英語" (Queen's English) の勉強も兼ねて、原作を近所(メルボルン郊外) の図書館で借りて読んだ。私は米国に10年、豪州に30年近く住みついているので、"米語" や "豪語" には詳しいが (実は) "英語" にはやや疎い。

戦前、ある英国の金持ち (恐らく、貴族) の館に(親子代々) 長らく勤務していた独身の執事 「スチーブンス」 の戦前、戦後にわたる体験を、「追憶」という形で、作品は描かれている。 作品の焦点の一つは、この館で、戦前女中頭として勤務していたケントン嬢と執事との微妙な関係である。 やや保守的な執事と革新的なケントン嬢との間で、ユダヤ系女中の解雇問題を巡って、あつれきが発生する。

実は、館の主人は「黒シャツ」社交界に友人が多く、ある晩 (開戦直前、1938年)、歴史的な「独英不可侵同盟」(ミュンヘン会談における合意) を巡って、この館で、ナチスドイツの高官と英国政府の高官との間で、秘密会議が開かれるに先立って、食事の世話をするはずの女中2人を、(ユダヤ人だという理由で) 館の主人が突然解雇するという事件が発生する。執事はそれをすんなり容認したのに対して、自分の部下2人を突然解雇されたケントン嬢は、強く執事に不服の意を表した。 その事件がきっかけになってか、ケントン嬢は館を去り、間もなく他人 (ベル氏) と結婚してしまう。

この館は戦後、アメリカ人の手にわたるが、スチーブンスは同じ館で執事を続け、ある日、主人が米国本土にしばらく帰京する機会に、休暇をもらって、しばらく振りに英国を旅する途上で、ケントン嬢 (ベン夫人) に再会する機会を得る。。。 この作品の特徴は、丸で「奥歯に何かが挾まったような」極めて婉曲 な言い回しとユーモア (banter) を交えて、執事が追憶する「大英帝国の黄昏」を思わせるイメージ (ふんいき) である。 視点をかえれば、21世紀に入ってから生じた「EUからの離脱」を望む古い世代と「離脱」に反対するリベラルな新しい世代との間のあつれきを予言するかのような文章でもある。 

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